【2013 3・1集会講演要旨 浅井基文前広島平和研究所所長】
安倍・右翼改憲政権の登場と私たち(文責・日韓ネット)
朝鮮に対する非常識な「常識」を問う
浅井さんはまず、この間緊張が再び高まっている朝鮮半島情勢をめぐり、朝鮮に対して世間的な「常識」とされていることが実は客観的事実に基づかない非常識である場合が多いとして、5点を挙げた。
「常識」とされている第一は、「朝鮮の核ミサイルは米日韓に対する脅威」という点。しかし、朝鮮から戦端を開くことはありえず、もっぱら米日韓が戦争を仕掛けることへの抑止力である、第二は、「朝鮮の核開発は朝鮮の安全保障にとって有害無益」という点。これは朝鮮戦争以来一貫して米国が核先制攻撃体制を取ってきたことが原因でありその逆ではない。朝鮮の核開発を中止させるにはまずは米国が核を含む対朝鮮敵視政策を改めなければならない。第三は、「朝鮮の核開発はNPT体制に対する挑戦」という点。この点もイスラエル・インド・パキスタンという前例がありNPT体制はこれらを事実上黙認している。しかも、米国など核兵器国は「全面的かつ完全な軍備縮小」を履行せず、対朝鮮核威嚇政策を手放さないもとで朝鮮にだけ「NPTへの挑戦」云々とするのはバランスを欠くこと著しい。第四は、「朝鮮の人工衛星打ち上げの本質は弾道ミサイル開発」とされる点。
しかし、これはすべての国のロケットに当てはまることであり国連安保理が朝鮮の人工衛星だけを制限することは二重基準以外の何ものでもない。第五は、「朝鮮のミサイル開発は安保理決議違反」という点。そもそも安保理は宇宙条約ですべての国に認められている宇宙の平和利用の権利を制限・禁止する権利があるのかという致命的な問題があり、国際条約ですべての国に認められた権利を制限する権利があるとすること自体に重大な問題がある。
このような考え方を認めてしまえば、安保理(つまり大国)はいかなる国際法の内容も勝手に変えられることになってしまう。こと朝鮮に対しては客観的基準にもとる非常識がまかり通っている。客観的基準を踏まえて私たちの対朝鮮認識を正すこと、それがます第一歩だと確信する。
また朝鮮の動向については、朝鮮の人工衛星打ち上げだけに制限を加える安保理決議は不当として打ち上げはあくまで続けることを表明する一方で、核実験については米国ないしは安保理の出方次第というメッセージを盛んに出している。米国が敵視政策の下で軍事的挑発を繰り返さないようとの牽制の意味合いが強くにじみ出ている。
米国については、イランと朝鮮に対するアプローチの差に注目する必要がある。イランは地域大国であり、米国は「テロリスト」への核の流出を何よりも恐れている。それに対して朝鮮は周辺諸大国に包囲された状況で核の流出の可能性は低いと見ている。安倍首相が、朝鮮の「テロ支援国家」再指定を持ちかけた際に米側が拒否しているのもこうした認識の差が背景にある。
肝心の日本だが、日本政府が朝鮮半島問題に関与する姿勢にはプラス要因が何もないばかりか、安倍政権の硬直した姿勢によりむしろマイナス要因と化している。事態を動かしうるような可変要因が他国と比べても際立って少ないのが日本外交の特徴である。幸い、日朝間にはすでに日朝平壌宣言という国交正常化の枠組みを定めた文書が存在する。日本の対朝鮮敵視世論・敵視政策さえ清算されれば、日朝国交正常化はすぐ間近にある。こうした展望に確信を持ち、非常識な「常識」に凝り固まった世論を正すことに力を入れよう。
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