【ソウルシンポ発題】ハン・チュンモク韓国進歩連帯常任代表

朝鮮半島の恒久的平和体制に移行する激変期の情勢と闘争課題
ハン・チュンモク
韓国進歩連帯常任代表
□ 朝鮮半島情勢の特徴 : 朝鮮半島の軍事的対立が構造的に激化しつつ、決定的な分岐点に差しかかっている。
○北の核、ミサイル能力が高度化し、これまでの軍事オプションが事実上失われ、対北政策の転 換を迫られる米国 トランプ政権が登場し、対北政策の新たな基調を発表
― オバマ政権が「戦略的忍耐」で滞っていた間に、北の米本土に向けた核攻撃能力は格段に向上した。北は5回の核実験を経て、核弾頭の小型化、多種化、標準化の段階に入ったことを明らかにし、固体燃料、移動式発射台、大気圏突入技術など、ミサイル攻撃能力も向上し続けている。
―朝鮮半島の軍事的対立は構造的に激化し、相手への先制攻撃、報復能力が向上する中で、米国の対北軍事オプションが失われ、米朝間の激突は決定的な分岐点に差しかかっている。
―これまでの制裁や体制崩壊政策の失敗が明確になる中、政策転換に迫られた米国トランプ政権は原子力空母などを朝鮮半島の東海に展開させることを発表、4月には先制打撃論までちらつかせながら、朝鮮半島の戦争危機説をあおり、軍事的対決を激化させた。
―4月26日、米国上院議員の全員をホワイトハウスに招き、新たな対北政策の合同ブリーフィングを行った。また、この会合後にはティラーソン国務長官、マティス国防長官、コーツ国家情報長官が共同声明を発表し、「北朝鮮の核、ミサイル発射実験を断念させるためのこれまでの努力は失敗に終わった」として「戦略的忍耐」政策破棄を宣言し、北朝鮮は「国家の安全保障にとって差し迫った脅威」と見なし、外交上の最優先課題とした。
―さらに、経済制裁を強化、同盟国など域内パートナーの外交的手段で圧力をかける方針を示し、中国が役割を果たすことを強く求めた。また、「米国は朝鮮半島の安定と平和な非核化を追求する。われわれはその目標のために、交渉のドアはオープンになっている」と強調した。
―5月3日、ティラーソン国務長官は「北朝鮮の政権交代や体制の崩壊、朝鮮半島の統一を加速化させようとするものではない」と言及。
―トランプ政権は現段階において、北への経済制裁による「最大の圧迫」を行いつつも、これまでのオバマ政権とは異なり政権交代や体制崩壊の意思はないことを明らかにし、交渉もオープンにしていくものと思われる。
○米朝間で半官半民の接触が始まる
― 5月8日日、オランダで米朝の1.5トラック[半官半民]の接触があった。北朝鮮外務省のチェ・ソンヒ北米局長と「ニュー・アメリカ財団」のスザンヌ・デマジオ上級研究員が会合した。
― 会合のあった5月9日、日本のマスコミは一斉に、トランプ大統領が北の核放棄を条件に米朝首脳会談を提案したと報道した。日本のマスコミでは、トランプ政権が首脳会談を提案しながら、△国家体制の転換は求めない、△金正恩政権の崩壊は追求しない、△南北統一を加速化させない、△米軍は38度線を越えて北上しない、などの原則を伝えたと報道され、一連の変化がみてとれる。
―トランプ大統領は最近金正恩委員長について、「権力を良く掌握している」としながら「適切な環境で会えるなら光栄だ」とも述べている。
○ 米朝対決の臨界点に達しつつあり、朝鮮半島の冷戦、戦争構造の解体を早め、拡げていく作 業が必要だ。
―北側の核、ミサイル能力は高度化を続けている。昨年4,000km級中距離ミサイル発射実験に成功し、最近では6,000~8,000km級ミサイル発射実験、大気圏突入に成功している。移動式発射技術、固体燃料技術などの機動性、安定性も高度化していると評価されている。米本土に向けた攻撃 能力の現実化が超スピードで進んでいる。
―トランプ政権は、これまでの「戦略的忍耐」政策の失敗をハッキリ知っている。
―長期にわたる消耗する政権崩壊策や体制転換の意思はないということを明らかにし、「核、ミサイルの放棄」という目標に集中する模様。最近は、「開発中断」による「対話再開」まで述べられている。
― 交渉による平和的解決 vs 軍事的方法による戦争の現実化という鋭い対立点から、対話か戦争かという対決の最終段階に入っている。交渉が本格化する時まで、北のミサイル発射は続くだろうし、米国もまた対北制裁の強化、軍事的デモンストレーションなど、強硬策に注力するだろう。
― もし、交渉が始まれば、過去の「段階的合意」よりも「包括的で戦略的合意」に達する蓋然性が高く、そうなれば、長期間の米国の朝鮮半島への介入や支配政策に決定的打撃になるだろう。この過程で、米軍の駐留問題、韓米同盟の性格などをめぐり、韓国社会の内部で保守勢力との厳しい対決局面も予想される。
○ トランプ対北政策の限界と朝鮮半島平和体制の樹立
― トランプの対北政策は、非軍事的圧迫による北の核問題解決であり、オバマの「戦略的忍耐」と本質的にはそれほど変わらない。ただ、違いがあるとすれば、中国を巻き込んで圧迫のレベルを最大限高めているということ、またオバマ政権に比べ、米国にはそれほど時間的余裕がないということだ。
― 中国も北朝鮮の非核化に共通の利害関係があるので一定程度、対北圧力に協調しているが、北との関係を破局に持ち込むほど圧力レベルを高めることは出来ないだろう。したがって、中国による圧力や米国の様々な圧迫により、北の核ミサイル能力強化を阻止することは出来ないだろう。
― 北は核強国の地位を固め、その力を基礎に米国との平和体制を樹立させようとしているのが明確なので、スピーディーに核ミサイル能力の強化を図るだろう。
― このようなところから短期的にみると、朝鮮半島の軍事的危機は極度に高まる可能性が高いが、北の米国本土に向けた攻撃能力が完成され確認されれば、米国は否応なしに戦争か平和か、二者択一を迫られるだろう。また、このような状況になれば、核凍結と平和協定の締結は現実の問題となるに違いない。
○ 今は韓国社会の矛盾の根源が崩壊しつつある歴史的転換であり激変期である。
― 今は韓国社会の漆黒の根源である分断停戦体制が崩壊していく転換期であり、分断と外国勢力に寄生し、韓国社会を支配してきた親米保守勢力の支配基盤が倒れていく激変期だ。
― 北の核ミサイル能力が急速に強化されるにつれ、分断停戦体制の解体と平和体制の樹立をめぐる米朝対決は終着点に向かって進んでいる。また、朴槿恵の国政私有化に怒り立ちあがったキャンドル抗争は、積もり積もった過去の弊害と社会の大改革闘争へ進み、数十年間韓国を支配してきた親米保守勢力の権力基盤を弱体化させながら民主的変革を進めている。
― 今はこのような二つの変化が交差しながら発展し、韓国社会の矛盾の根本的解決に向かう激変期であり転換期である。
○ キャンドル抗争の意義とムン・ジェイン(文在寅)政権のスタート
― キャンドル抗争は、保守独裁政権による反民主的、反民衆的弊害を清算し、実質的に国民主権を実現するための民主的変革運動だ。これは、朴槿恵退陣と逮捕により第1段階を勝利で結び、大統領選挙で文在寅政権を打ち立てることにより第2段階を越えた。そして、実質的な積弊清算と社会の大改革完成という第3段階に差しかかっている。
― 文在寅政権は、金大中、盧武鉉政権と登場とはその性格が異なる。金大中、盧武鉉政権が保守の強い政治的基盤のもとで発足したとすれば、文在寅政権はキャンドル抗争により保守の政治的基盤が急速に瓦解している状況で作られ、積弊清算と社会の大改革という国民的要求と支持を基に打ち立てられた。したがって、文在寅政権をキャンドルの力と切り離してみることは出来ない。
― キャンドル抗争は韓国社会を支配してきた保守の政治的権力基盤を弱体化させ、反民主的な積弊清算を行い実質的民主化により韓国の民主的発展を成し遂げるという意味では大きな歴史的意義があるが、変革の根本課題である自主的変革へと発展できていないという限界がある。
― したがって、文在寅政権が積弊の中の積弊である分断による積弊を清算し、朝鮮半島の恒久的平和体制を構築する道に進むよう国民的抵抗と闘いを続けて行かなければならない。南北関係を改善、発展させ続けることこそ、朝鮮半島平和構築の重要な要素となる。
□自主統一運動の全盛期を開き、反戦平和運動と反米自主化運動を高めて、朝鮮半島の 平和体制を打ち立てよう
― 米朝対決が最終段階に差しかかると危機が高まり、危機が高まるほど平和を守るための反戦平和闘争と南北関係の改善、自主統一闘争はさらに重要となる。朝鮮半島の平和を守り、自主化を成し遂げ、韓国社会の民主的変革を完成させるための中心的課題は、平和体制を打ち立てることだ。このためにも反戦平和運動を強化し、自主統一運動の新たな全盛期を切り開くことが求められている。
― 自主統一運動の核心は、こう着状態にある南北関係を改善し、対話と交流を通じて和解協力の時代を切り開くものになるべきだ。そして、キャンドル抗争で文在寅政権が誕生した有利な状況に合わせ、祖国統一闘争は大胆に進めなければならない。
― 反戦平和運動は、根本的に停戦体制を終息させ、恒久的平和体制を樹立することを目標に進めるべきだ。このようなところから、軍事訓練の中断とサード配備撤回を求める闘いを進めつつ、それが平和体制樹立の闘いに結びつけ、平和体制樹立運動を反戦平和運動の中心に据えなければならない。
― そして、南北関係の改善(ケソン/開城工業団地の再稼働、金剛山観光の再開、全民族大会、交流協力の活性化、6.15、10.4宣言の履行)、平和協定締結、軍事訓練の中止、サード配備の撤回、敵対政策の撤回と対話再開のための闘いを適切に配置して進めるべきだろう。特に、新政権のもとで南北関係改善の活動を強めることが必要だ。
□ 朝鮮半島の恒久的平和体制実現のために、強力な国際連帯、平和闘争を進めよう
―朝鮮半島の平和は東アジアの平和、世界平和を実現するためにも重要だ。したがって朝鮮半島の 平和は南と北、米朝間の対決と交渉のみで解決するのではなく、国際的な反戦平和連帯を通じて、各国政府に圧力をかけ牽引するとき実現可能なものとなっていく。
―国際的な反戦平和運動を通じてサード配備の撤回、韓米合同軍事訓練の中断と米国の対北敵視 政策の破棄が行われなければならない。また、北の核凍結、非拡散に応じた形で、対話と交渉による平和協定の締結が実現されなければならない。
<本日の「コリア国際平和フォーラム」を機に、朝鮮半島の恒久的平和実現のために国際共同行動をご提案します。具体的には今年8月15日、ソウルで行われる南と北、海外同胞が共に集う民族共同行事に合わせ、東アジアと世界平和の実現を願う心を込めて、世界中で ‘2017.8.15. One Korea Peace Day’‘
とコリア平和実現のための国際宣言と共同キャンペーンを行おうということを提案したいと思います。>
―朝鮮半島の恒久的平和を実現しようとするわれわれの闘いは、東アジアの平和、世界の平和と繁栄の礎になるという確信と共に、各国の現場で孤軍奮闘される参加者皆様に改めて敬意と感謝を表する次第です。
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