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2018年8月18日 (土)

 韓国側基調報告 ソン・ジョンモク

非同盟中立の連合連邦制統一へと進む道

                 ソン・ジョンモク(孫政睦)

4.27時代研究院」国際分科長

現場言論『民プラス』企画委員

 

 

1. 不可逆的な南北、米朝首脳会談

 

 「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言(以下、板門店宣言)」は、“朝鮮半島にもうこれ以上の戦争はあり得ず平和の新時代が開けたことを知らせる終戦宣言であり、南北が力を合わせて自主統一の新たな歴史を拓くことを民族と世界に知らしめた布告である。板門店宣言は2回の南北首脳会談の成果を継承しつつ、時代と民族の切迫した要求である朝鮮半島の平和体制と統一を成し遂げる具体的経路と方案を提示したという点で、歴史上で最高水準の合意だと言えよう。

 

 板門店宣言がこれまでの共同宣言よりも確固たる理由は、その合意事項が米朝首脳会談により下支えされたためである。歴史上、初の米朝首脳によるシンガポール共同声明は、これまで行われた米朝会談の性格とは根本的に異なる核保有国同士の会談であり、首脳同士の合意を先行させることにより不可逆的意味をもたせている。シンガポール共同声明は、新たな米朝関係樹立はもとより、朝鮮半島の平和体制と朝鮮半島における完全な非核化のための共同の努力を世界に明らかにすることにより、朝鮮半島の平和と統一の実現を担保し、新しいアジアの秩序を立てて進むべき道を開けた転換の契機になるだろう。

 

 

2. 自主統一原則と統一方案の合意

 

1) 南北首脳同士の随時交流と南北共同連絡事務所

 板門店宣言の最も大きな意義は「自主統一」という朝鮮半島統一の性格を明確にし、その実現のための具体的措置を打ち出したということである。自主統一とは、宣言文の通り、「わが民族の運命はわれわれ自身が決めるという民族自主の原則」に基づき、外国勢力の干渉を排除し、わが民族自らが成し遂げる統一である。宣言文では、この実現のために首脳同士の定期的会談とホットラインの設置、高位級会談をはじめ分野別対話、南北当局者が常駐する南北共同連絡事務所の設置、各界各層の多様な協力と交流、接触の活性化を明示した。中でも注目すべきは、連絡事務所を南北双方ではなく、ケソン(開城)一か所のみに設置することである。これは一部で主張されているような南北関係正常化のための前段階的措置ではなく、予想される全方位的交流協力を南北が共同で管理していこうとする機構である。板門店宣言が6.15共同宣言を継承する際、共同連絡事務所は連合連邦制(連邦連合制)統一方案で提示された「民族統一機構」へと進む前段階の措置だとみるべきだろう。

 

2) 南北が合意した唯一の統一方案~連合連邦制

 周知のように6.15共同宣言の第2項は、南北が合意した唯一の統一方案である。「南側の連合制と北側の低い段階の連邦制に共通性があることを認め、その方向で統一を推進」することとした統一方案の合意は、歴代どの政府も否定することは出来なかった。北側は20147月共和国政府声明において、これを「連邦連合制」統一方案として正式化した。南側政府ではこれを公式に命名した訳ではないが、市民社会団体、進歩的な政党や学会では、これを「連合連邦制」または、「連邦型連合制」としている。

 

 連合連邦制とは、南北の地域政府が軍事権と外交権など主権をそれぞれ保有し、中央では統一志向の南北共同機構(民族統一機構)を設置し、漸次的、段階的に統一を完成していく独創的な統一方案である。連合連邦制は91南北基本合意書において、南北は「国と国との関係ではない統一を志向する過程で暫定的に形成される特殊関係」という合意に基づく。そのため、南側の「連合制」は統一志向を前提とした南北連合という点で、一般的な国家連合とは異なる。南側は統一実現のための機構として南北首脳会議、南北閣僚会議、南北評議会など、共同機構の設立を提示した。北側の「低い段階の連邦制」では、主権を中央政府がもつという一般的な連邦国家でなく、中核的な主権は各地域政府がもつものの、統一実現のための民族共同事業には地域政府でなく民族統一機構が推進するという、よりゆるやかな連邦制である。

 

 このようにみたとき、南側の「連合制」と北側の「低い段階の連邦制」の共通性は次の通りである。南北は相互に現行の理念と体制、制度と政府を尊重する。南北政府はそれぞれ、政治、 軍事、外交権をもつ2体制2政府を維持しつつ、統一を実現するための共同機構をもつ。南側は共同機構として南北首脳会議、南北閣僚会議、南北評議会などを、北側は民族統一機構を提案した。南北は漸進的、段階的に統一を完成していく。連合連邦制(連邦連合制)は初期には全民族が同意できる低いレベルから統一を実現していくという点で、現段階の実現可能な唯一の統一形態である。さらに、完成された形態の統一ではなく、漸進的、段階的に高い段階の統一へと完成させていくという点で、過渡的な性格をもつ統一方案である。

 

 南側の学者の一部にはその過渡的性格を理由に、これは統一方案ではないと主張し、6.15共同宣言の第2項は方向性を合意したのみで統一について合意した訳ではないとして、その合意精神を歪曲しようとしている。しかし、過渡的性格とは、統一か否かという問題ではなく、統一を完成するための水準と段階の問題である。即ち、国号は1つにして、少しずつ中央政府の地位と役割を高めて行こうとするものである。これは南北が長期間の分断により生まれた体制と文化、生活方式などの差異を少しずつ克服していこうとする過程でもある。この[過渡的]期間は南北間で共存共栄の和解協力の過程で、長くかかることも比較的短くて済むこともあり得るだろう。南北が合意した連合連邦制以外に、平和的に統一する方案はない。

 

このように板門店宣言の「定期的な南北首脳会談」と「南北共同連絡事務所」は、連合連邦制の統一実現のための前段階措置として決定的な意義をもつ。

 

 

3. 朝鮮半島平和体制の実現

 

1) 自主統一と朝鮮半島の平和体制

 朝鮮半島の自主統一は、朝鮮半島平和体制によって担保される。広義の意味において朝鮮半島平和体制は、朝鮮半島自主統一の実現と東北アジアの確固とした平和を担保する共同安保機構の設立などで完成されると言えようが、当面は狭義の意味で朝鮮半島平和体制は、米朝間の長い敵対関係の清算を中心とする終戦宣言と、朝鮮半島の平和協定により実現される。この過程において朝鮮半島の核戦争危険の解消を意味する朝鮮半島の非核化は平和体制実現の基盤となるだろう。

 

 朝鮮半島の平和体制は、板門店宣言第3項にある朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築と、シンガポール宣言第2項にある朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築、第3項にある朝鮮半島の完全な非核化がほとんど同時に、密接に結合しながら展開されて実現される。これは朝鮮半島平和体制が南北、米朝間の共同努力によってのみ成し遂げられることを意味している。

 

 板門店宣言第3項の朝鮮半島平和体制構築のための相互不可侵合意の再確認、段階的軍縮、▲3者または4者間での終戦宣言と平和協定、朝鮮半島の完全な非核化は、米朝間の合意にもそのまま適用される。即ち、米朝間の不可侵合意と段階的軍縮、終戦宣言と平和協定、朝鮮半島の完全な非核化実現がシンガポール共同声明にも、そのまま溶け込んでいるということである。これは、今後展開される朝鮮半島平和体制の実現が板門店宣言とシンガポール共同声明の合意事項が鋸の歯のように噛み合わさって展開することを予告するものである。

 

 米朝間でのシンガポール共同声明が板門店宣言と異なり、原則的、包括的合意のみで具体的実行策が含まれていないのは、全ての過程が朝鮮半島をはじめとする東北アジア、米国、全てに全面的で破格の影響を与えうるためである。また、依然として強固に存在する国内外の北への敵対勢力が反トランプ陣営に結集し、ことごとくイチャモンを付け妨害しようとしているためでもある。首脳同士で大きな構図とその方向性を合意し、段階的実践により信頼を形成しながら合意を実現する有利な政治環境を作ろうとする意図が、シンガポール共同宣言に含まれている。

 

2) 朝鮮半島平和体制の初期の措置―終戦宣言 

 現在、米朝首脳会談履行の最大の争点は終戦宣言である。先月、共同声明履行のため開催された米朝高位級会談の決裂の背景は、米国が一方的に北の非核化と遺骨返還問題のみを取り上げ、終戦宣言など平和体制の問題は話合いそのものを忌避したためである。これに対し北のリ・ヨンホ外相は、今回のアセアン地域フォーラム(ARF)で、「信頼造成を先行させつつ、共同声明の全ての条項を均衡に、同時に、段階的に履行していく新たな方法のみが成功させる唯一現実的な方法」だとして、米国の一方的に非核化のみを先行させる要求を批判した。

 

 実際、米国がこれを知らないはずはない。それにも関わらず、このように自分たちが先に提起した終戦宣言を送らせようとする理由は、米国の広く蔓延している北への敵対勢力の反発と反対のためでもあるが、何よりもその発表がもたらす朝鮮半島の政治軍事的地殻変動に対する憂慮と準備不足のためのようである。

 

 最近、米国の反トランプ勢力は、ロシアとの和解をはじめ中東情勢の解決を図ったプーチン大統領との首脳会談について、トランプ大統領を「反逆者」とまで激しく非難し、ロシアとの関係改善と米朝共同声明履行をいちいち妨害している。実際にトランプ政府の北韓(朝鮮)とロシアとの関係転換は2か国のみの問題ではなく、これまでの米国中心の覇権秩序における転換と直接関連している。

 

彼らは先月のポンペイオ長官の訪朝を前に「濃縮ウランの生産」を報道したのに続き、先月末のワシントンポスト(WP)は、米軍の遺骨55体が返還された後にもその善意を知らせるのはおろか、北の「ICBM追加生産」情報を報道し、まるで北が非核化をしないと言わんばかりにちらつかせている。一言で北韓(朝鮮)が共同宣言を違反し、米国を騙しているということである。ひいては北に対し、非核化を先行させた後に安全保障を行うというような主張を行いつつ、シンガポール合意を正面から否定している。それでも不安だったのか[米国]上下院の反トランプ、北への敵対議員らは、はなからトランプ政府の足を引っ張るため駐韓米軍の兵力を22千人以下に減らせないように制限し、相当規模の撤退は北韓(朝鮮)非核化関連の交渉が不可能な対象とした「2019会計年度国防権限法案(NDAA)」を通過させた。このように彼らは絶え間なく、あらゆる虚偽の情報と法的装置を動員して、朝鮮半島平和体制の実現を妨害しようとしている。

 

彼らのこのような妨害は北との和解を送らせようとする意図もあるが、まずはトランプを退陣させようとするのにその目的がある。トランプ政権の外交的成果を妨害し、当面11月の中間選挙で勝利しようとするものである。しかし、大勢となった朝鮮半島平和体制の流れは、たとえ彼らが今後政権を取ったにせよ妨害出来ないだろう。それは何よりもシンガポール共同声明がこれまでの米朝間合意と質的に異なる核保有国同士の合意のためである。トランプ大統領が米朝首脳会談を終え帰国した第一声が「これ以上北韓(朝鮮)から核の脅威はない」「今晩はぐっすり寝よう!」としたことからも知られる。このようにシンガポール合意は核保有国同士の互いの核攻撃の脅威を除去するための対話と談判の性格をもつ。だからこそ北が戦略国家として核武力の完成を宣言し、米国本土の攻撃能力を立証した条件で進められた米朝首脳会談の合意は決して一方的に破棄することは出来ない。それは、直ちに直接米本土が深刻な危険にさらされることを意味するためである。

 さらに、北の国家宣言は中国やロシアとの関係を再定立させた。何よりもこれまで米朝の間で慌てていた中国がしっかり北と手を握り、「1つの参謀部で緊密に連携して協力する」とまでに合意したのは、米国の立場をさらに苦しくさせた。中ロはすぐに独自の範囲で制裁を事実上解除し、国連安保理にも制裁解除を要求している。中ロが対北制裁で実際に手を引けば、米国主導の制裁は時が過ぎるにつれ無力化するだろう。また、中国は終戦宣言と平和協定にも積極的に乗り出してきている。米国は中国との貿易戦争をより強め、ロシア銀行に対する制裁まで発表したが、3つの核保有国同士の協力はより強まることだろう。これは朝中ロの3か国が朝鮮半島問題の解決は当然のこと、予見される新たな世界秩序の形成に緊密に協力していくことを意味するものである。

 

 何よりも朝鮮半島の終戦宣言は、これまでの朝鮮半島秩序に巨大な地殻変動を呼び起こすだろう。終戦宣言の発表は直ちに、朝鮮戦争に国連軍の参戦を決議した国連安保理第83号、第84号の終了につながるためである。国連安保理決議の第83号は、北韓軍(人民軍)撃退に必要な援助を国連の会員国が国に提供せよという勧告であり、第84号は北韓軍(人民軍)撃退作戦を行う統合部隊が国連旗を使い、米国がその司令部を構成するという決議となっている。終戦宣言が発表されれば、南北どちらであっても朝鮮戦争で国連軍の参戦を決めた「安保理決議第83、第84号」の終了決議を国連安保理に提起するだろう。米国を含め国連安保理は拒否権を行使出来ない。このように「安保理決議第83号、第84号」の終了が決議されれば、朝鮮半島に存在する国連軍司令部と国連軍の解体と撤収は避けられない。当然、駐韓米軍は韓米相互防衛条約に基づき、国連軍とは別途に政府の要請により駐留していると主張するだろうが、北との対関係を清算し、国連軍の活動が終了を宣言する以上、駐留し続ける名分はなくなる。残るのは時間の問題だけだ。

 

 朝鮮半島の終戦宣言はまた、駐日米軍の地位にも重大な影響を与えることになる。米国は19507安保理決議第84号により日本の東京に国連司令部を設置し、国連司令部の名で「日本国内の国連軍基地については、日本政府の事前許可なく使える駐留軍地位協定(SOFA)を締結」した。国連軍司令部がソウルに移転した後、米国は日本に国連軍後方司令部を設置し、地位協定により日本各地に7か所の大規模な軍事基地を設置、運営してきたばかりか、今でも国連軍の名で英国、オーストラリア、フランスなど9か国の多国籍軍を参加させている。もはや、安保理決議の終了が宣言されれば、駐日米軍の地位もまた地殻変動を起こし、これ以上多国籍軍は動員できなくなる。

 

このように終戦宣言は、駐韓米軍のみならず駐日米軍の運命に大きな影響を与える。これこそ、米国が国連司令部の解体問題とつながる終戦宣言の発表を遅らせている最も大きな理由である。そうなれば米国内の反トランプ陣営は蜂の巣をつついたように騒ぎ立てるのは目に見えている。これを阻止し、終戦宣言とその後の政治的過程を円滑に進めるためには、米朝首脳同士の協力と決断が必須となろう。

 

 

4. 先行的非核化措置と親書外交

 

 北韓(朝鮮)が米国と終戦宣言の日程に対する合意もなく先行的にICBM出力発動機(エンジン)実験場の閉鎖と西海岸の衛星発射場の解体、そして米軍遺骨の一部返還を行ったのは、終戦宣言を実行するための事前措置とみられる。特に、西海岸の衛星発射場の解体は公開されていない約束の履行で、米国を驚かせた。西海岸の衛星発射場は北の立場からすると、この20年間で最も重要な国策事業として推進されてきた国家宇宙開発事業の象徴のような場所である。これを解体するというのは北韓(朝鮮)略的に強力に推進してきた宇宙開発事業を中断することである。また、北に批判的な38ノース(north)がやむなく認めた通り、液体燃料のICBM開発中断の意義もある。実際において、このような措置はキムジョンウン(金正恩)委員長の朝鮮半島平和体制実現のための決断がなければ不可能なことである。

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 現在まで北が取った非核化措置は、核とミサイル実験の中止、核実験場の閉鎖、ICBMエンジン発射の実験場の閉鎖、西海岸の衛星発射場の解体などである。反面、これに応じた米国が取った措置としては、韓米合同軍事演習の中断しかない。誰が見ても北の取った措置は非核化の実質的措置であり、もしも復旧させるとすれば多額の費用と時間がかかるのだが、米国はいつでも合同軍事演習を再開できる程度の措置しか取っていない。もはや、米国が答える番である。

 

 北韓(朝鮮)はトランプ大統領の決断を引き出すために、反トランプの北対陣営さえも認めるほどの破格の措置を取ると同時に、3回目の親書を送った。米国のハイテン略司令官でさえも北の潜在的非核化が「肯定的な方向」に動くのは「何者にも否定できない」と述べたように、北の先行的で果敢な非核化措置は、米国議会内外の懐疑的世論を静めている。さらに、普通であれば終戦後に実現されるような遺骨返還を一部行い、親書まで送っている。北は実務レベルで解決出来ない問題を首脳が直接動いて解決しようとする親書外交を効果的に行い、米国を宣言履行に引っ張り出している。

 

トランプ大統領が金正恩委員長の親書に対し、「あなたの“良い書簡(nice letter)”に感謝する」「再開を楽しみにしている」と北に返事を送ることにより、2回目の米朝首脳会談が日程にのぼっているようである。終戦宣言は板門店宣言で発表したように、南北と米国、または南北と米中の34か国の首脳が集まって発表されることだろう。元々、米朝間では北の外務省発表のように、終戦宣言を先月727日の停戦協定の日に発表する話合いが行われていたようである。既に北が米国の憂慮事項を減らした条件で、近い時期に34か国の首脳が一同に介する契機は、北の9.9節[建国記念日]70周年行事と国連総会である。

 

 

5. 非同盟中立化の統一

 

 朝鮮半島の平和体制が米朝間の係正常化と平和共存を実現する政治的条件をつくるものであるならば、朝鮮半島の非核化は米朝間の相互核攻撃の脅威を除去する軍事的条件をつくるものである。両者は互いに密接に関連しつつも区別されるものである。北の先行的非核化措置が終戦宣言という平和体制の初期措置の実行条件を作るように、朝鮮半島非核化の過程は朝鮮半島の平和体制実現の条件となる。逆に言えば、平和協定など朝鮮半島平和体制の実現は朝鮮半島非核化を妥結させる政治的基盤となろう。

 

 共同声明は北による朝鮮半島の完全な非核化と、米国による安全保障を明記している。しかし、安全保障はリビアの事例にあるように、平和協定や国交正常化のような政治的書簡で担保し得ないものである。必ず、それ相応の軍事的、物理的担保となる措置が追加されねばならない。言い換えれば、北の非核化が米国に対する核攻撃能力の除去だとすれば、これに相応した米国の北に対する核攻撃能力の除去もまた実行されねばならない。しかし、米国の北に対する核攻撃は、南側だけで可能なのではなく日本やグアム、米国本土からも可能になっている。現在のように核技術が極超音速[ハイパーソニック・hypersonic speed]と高度化した条件では、地理的条件は大きな問題ではない。実際北の立場からしてみれば、南側の駐韓米軍関連の非核化のみで、米国の日本やグアム、米国本土からの核攻撃能力はそのままにする状態で、自らの全ての核やミサイルを廃棄するということはあり得ないことである。だからと言って米国が北の非核化に応じて、日本や米国本土の核廃棄を行うことも、今すぐには不可能である。したがって米朝間では朝鮮半島の完全な非核化と安全保障の範ちゅうをどのように調整して妥結するのかということがキーポイントとなろう。

 

 これについてはトランプ大統領も理解しているようである。彼は米朝首脳会談後の単独記者会見の場で、北の20%非核化と駐韓米軍撤退の希望を表明した。トランプは北の20%非核化を「臨界点に達すれば逆戻りできない非核化措置」だと説明し、これに相応の米国の安全保障措置として、事実上の駐韓米軍撤退を示したのである。これは事実上、朝鮮半島の完全な非核化の意味を定義づけしたものである。即ち、米国が考える「合意可能な朝鮮半島の完全な非核化」とそれ相応の物理的安全保障の範ちゅうを提示した。北韓(朝鮮)もやはり“合意可能な非核化の範ちゅう”を提示するであろう。この合意の結果が主要な平和協定の内容となろう。

 

 このようにシンガポール共同声明の履行とは、米朝間の朝鮮半島領域で当面の核と軍事問題を平和体制実現と同時に、段階的に解決しつつ信頼を高め、係正常化を通じて平和共存を実現することである。

 

 予想される南北と米中の朝鮮半島平和協定は、駐韓米軍の撤退、駐日米軍の地位変更など、東アジアの秩序に大きな地殻変動を起こすものであろう。駐韓米軍の撤退は、ついに朝鮮半島が外国勢力の影響から脱して、自力で統一できる絶好のチャンスが開かれることである。一部には、もし駐韓米軍が撤退すれば朝鮮半島は過去のように中国の影響圏に属し、それを米国も憂慮していると主張する向きもある。しかし、多くの先覚者が示したように、統一された朝鮮半島は、いかなる大国、どんな同盟にも属さない非同盟中立国と位置付けられるだろう。米国もまた、統一した朝鮮半島が米国と対立する可能性を遮断させる中立化こそが利害に合致すると考えている。昨年3月に、米国反トランプ系列の政治専門雑誌フォーリンポリシー(FP)さえも、「米中は統一コリア政策を必要としている(China and America Need a One-Korea Policy)」というタイトルで、南北が米中と締結した同盟条約を破棄した前提で、朝鮮半島の非同盟中立化統一方案を示している。

 

 最近の2か月間、人類は世界秩序を揺るがす3つの事件を目撃した。米朝首脳会談とG7そしてNATO首脳会談、さらに米ロ首脳会談である。トランプ政府は戦後、世界秩序を主導してきたヨーロッパの同盟と激しく衝突し、長い対関係にあった北韓(朝鮮)やロシアとは和解を図っている。これは、戦後に大西洋同盟に代表された米国中心の覇権秩序がもはや限界に達したことを知らせる警鐘であり、新たな多極化秩序への移行を知らせる一大事件となる。米朝首脳会談は北の核武力完成による結果でもあるが、一方では米国衰退のやむなき選択でもある。したがって、板門店宣言も以前のように逆戻りはあり得ない。当然とも言えるが歴史はまっすぐ直線に進む訳ではない。常に反動は存在するし、紆余曲折は必然であるが、世界史的転換というこの大きな流れは、これ以上戻れない。もはや分裂と対立を乗り越え、予見される平和と繁栄、統一を迎える活動に邁進する時期に来ている。さらに、親善と互恵の新たなアジアの秩序を打ち立てていかなければならない。

 

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