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2018年8月18日 (土)

 日本側発題① 渡辺健樹

板門店宣言・朝米共同声明と日本の課題

           渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)

 

 南北首脳による427板門店宣言と、史上初となる612朝米首脳会談・朝米共同声明は、朝鮮半島の恒久的平和体制構築と非核化への歴史的転機をもたらした。

何よりも、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)建国から70年にわたり、砲火を交え銃口を向けあってきた朝米首脳が歴史上初めて対面し、両首脳の名により包括的な目標が示されたことは画期的である。

 朝米首脳会談が成立した最大の理由は、朝鮮側が「制裁圧力」に屈したということではなく、米国側が朝鮮のICBM完成(あるいはその目前)を無視できなくなったからである。

 しかし、目標を実現していくためにはいくつもの紆余曲折が存在している。

朝米首脳会談後では初となる76日のポンペオ米国務長官の訪朝・後続交渉で、さっそく米国側は「朝鮮半島危機」の根源である朝鮮戦争の終戦宣言の問題は後回しにし、一方的に朝鮮側に非核化要求を迫った。またポンペオ長官は、共同声明にCVIDが明記されなかったことで、こんどはFFVD(最終的[Final]で最大限[Fully]の検証可能な[Verifiable]非核化[Denuclearization])なる新用語を持ち出しているが本質は変わらないだろう。さらにこの間、米政権側からは「完全な非核化まで制裁を維持する」ことが繰り返し語られている。

これらは612朝米共同声明に背く姿勢である。

612朝米共同声明は、「新たな朝米関係の確立が朝鮮半島および世界の平和と繁栄に貢献すると確信するとともに、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進できる」との認識の上に、①朝米は新たな関係の確立に全力を挙げる、②朝米は朝鮮半島の平和体制構築に向けともに努力する、③朝鮮は427板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の非核化に全力で取り組む、④朝米は戦争捕虜・行方不明米兵の遺骨収集と返還を進める-の4項目を宣言した。

この4項目は、同時的かつ段階的に進められることが必要であり、それによる信頼醸成があって初めて「朝鮮半島の完全な非核化」も可能となる。

朝鮮側は、ポンペオ長官との会談において、「朝米関係改善のための多面的な交流を実現する問題と朝鮮半島での平和体制構築のためにまず朝鮮停戦協定締結65周年を契機に終戦宣言を発表する問題、非核化措置の一環としてICBMの生産中断を物理的に実証するために大出力エンジン試験場を廃棄する問題、米軍遺骨発掘のための実務協商を早急に始める問題など、広範囲な行動措置を各々同時に取る問題を討議することを提起した」という(7/8朝鮮外務省報道官談話)

そして、現在すでに東倉里のミサイル関連施設の解体、米兵の遺骨送還などを実施している。一刻も早く朝鮮戦争の終戦宣言を行うことは急務である。この点では、ボールは米国側に投げられている。

ここで重要なことは、南北首脳による427板門店宣言で、「停戦協定から65年にあたる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換」するため南北と米国の3者または南北と米中の4者会談の開催を積極的に推進することが明記されていることである。

これを履行することは、南北が主導し米国にそれを求めて行くかつてない構図となっている。そして、これを着実に推し進めていく力は朝鮮半島の主人である南・北・海外の民衆、とりわけキャンドル革命により政権交代を実現した韓国民衆の平和と統一への闘いにある。

後続交渉では、国連軍司令部の解体や在韓米軍の撤収または何らかの地位変更問題などもまな板の上にのらざるを得ないと思われるが、私たち日本の民衆は、そのことが日米安保体制に与える影響をはじめ、日本と東アジアの平和にとってきわめて大きな意味を持つものであることを確認しつつ、皆さんの闘いを支持し、連帯していくものである。

 

朝鮮半島の歴史的転換と安倍政権

 

 南北首脳会談と朝米首脳会談、さらに朝中首脳会談など今年に入って以降の朝鮮半島問題をめぐる対話局面の中で一人蚊帳の外に置かれてきたのが日本の安倍政権である。

安倍政権は、昨年までの朝鮮半島をめぐる「戦争危機」の高まりの中で、トランプ米政権が唱えていた軍事力行使を含む「すべての選択肢」をいち早く支持し、朝鮮に対する「最大限の圧力」を一つ覚えのように繰り返しながら、朝鮮半島の緊張を煽り、それを最大限に利用して「戦争のできる国」作りを推し進めてきた。

安保法制(戦争法)に基づき自衛隊の米軍への戦争協力拡大、韓米-日米がリンクした事実上の日韓米合同軍事演習の推進、ミサイル発射装置と用地取得費別で2基で4,600億余円もの陸上配備型イージスミサイルシステム(イージスアショア)の導入推進、先制攻撃のための「敵基地攻撃能力(長距離巡航ミサイルなど)」の導入など米国からの高額兵器購入をはじめとした大軍拡政策、さらに「共謀罪」の強行成立などによる治安管理体制の強化を推し進め、憲法9条の改悪にまで手を付けようとしている。さらに「北朝鮮の脅威」を煽りながら、全国の自治体を巻き込み戦時動員さながらのミサイル防空演習に人びとを動員するなどしてきた。

また「北朝鮮制裁」の名のもとに、高校無償化から唯一朝鮮学校を排除するなどの差別排外主義政策を推し進め、そのことがヘイトスピーチなどを拡散する温床となっている。

 今年に入り平昌冬季オリンピックを契機とした対話局面に入っても、「微笑外交に騙されるな」「最大限の圧力を」と唱え続け、韓米合同軍事演習が延期となるや「これまで通りの規模で再開すべき」などと内政干渉発言すら行い、対話局面に冷水を浴びせることに躍起となってきた。

 427南北首脳会談、612朝米首脳会談が実現の見通しとなると、日本人拉致問題を政治利用し、文在寅大統領、トランプ大統領に「口利き」を依頼して回った。だが、それは自ら何らの方策も持たず、他国頼みの姿勢が明らかになっただけである。

いよいよ朝米首脳会談が実現すると、こんどは一転して日朝首脳会談を模索するポーズをとりはじめたが、依然として朝鮮敵視政策に変わりはない。

それを端的に示しているのが、朝米首脳会談が行われている最中の612日午後120分に種子島宇宙センターから対朝鮮を主目的とした軍事偵察衛星を打ち上げていることである。またイージスアショアの配備予定地とされる秋田・山口への説明も6月に入って行ない、朝米首脳会談後の6月末、小野寺防衛相が現地に出向く熱心さである。また平和の流れに逆行し、沖縄辺野古への米軍新基地建設で8月には埋立てのための土砂投入を予定し、さらにオスプレイの全国的配備まで行おうとしている。どこまでも軍拡と「戦争のできる国」をめざしているのである。

628日には、関西空港税関支署が修学旅行で祖国・朝鮮訪問を行った神戸朝鮮学校生徒のお土産品のほとんどを没収するという暴挙も行っている(これに抗議する緊急抗議署名は約1週間で7,600余の団体・個人に及んだ)

 

朝鮮半島の平和への動きと日朝国交正常化問題

 

安倍政権は、これまで拉致問題を日朝交渉の入口としてすべての上に置き、①拉致問題は日本の最重要課題、②拉致問題の解決なくして国交正常化なし、③拉致被害者全員が生きて帰ってくること-などを掲げてきた。そして、これが朝鮮敵視政策を包み込む世論の厚い壁を生み出してきたことも事実である。今回、安倍政権が「日朝首脳会談」を模索するポーズ取り始めているものの、「拉致問題解決に資する」のが前提だとしている。

しかし、そのこと自体が日朝ピョンヤン宣言の歪曲であり、拉致問題を含め日朝関係が一歩も進んでこなかった要因である。

日朝国交正常化の基本は、いうまでもなくかつて日本が朝鮮侵略・植民地支配をおこなった加害の歴史に対する反省の上に、これを誠意をもって清算することである。そもそも朝鮮半島の南北分断にかこつけて朝鮮への過去清算を避け、国交すら持ってこなかったこと自体が異常なことである。

拉致問題について言うなら、朝鮮側は、20029月の小泉首相の訪朝時に金正日国防委員長が謝罪し、当時日本政府が認定していた拉致被害者13名のうち4人生存、8人死亡、1人未入国と回答、認定外の1人の生存を通知し、生存者5人の帰国が実現した経過がある。その後、2014年の日朝ストックホルム合意を受け、朝鮮側が拉致を含む包括的な在留日本人の調査を実施、拉致関連ではほぼ2002年時点と変わらない調査結果から、日本側が報告の受取りを事実上拒否しているという(朝日国交正常化交渉担当大使・宋日昊氏)。 

「死亡」とされた人の家族が「生きて返せ」という感情を持つことは分からないではないが、政府が家族感情に乗っかり繰り返すのは外交ではなく、家族を利用したパフォーマンス、政権浮揚のための政治利用以外の何ものでもない。日朝国交正常化を進める中でこそ拉致問題の解決も見出せるのであり、拉致被害者家族に応えることでもあるのだ。

私たちは、427板門店宣言と612朝米共同声明で確認された朝鮮半島の平和体制構築と完全な非核化の道を支持し、日本政府が、「北朝鮮の脅威」を口実に進めてきた軍拡政策を直ちに中止すること。今こそ日朝ピョンヤン宣言を基礎として、不幸な過去の清算を基礎とした日朝国交正常化交渉を速やかに再開することを強く要求して闘っていくものである。

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