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2022年3月 1日 (火)

●佐渡金山問題 日韓プラットフォームが緊急声明

日韓の市民運動と宗教者でつくる日韓和解と平和プラットフォーム(日本側運営委員会)は、3.1朝鮮独立運動103周年にあたり日本政府による朝鮮人強制動員・強制労働を無視した佐渡金山の世界遺産登録の推薦決定について下記の緊急声明を出しましたのでご紹介します。
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<緊急声明>佐渡鉱山の強制連行・強制労働の歴史を否定してはならない
      ―「全体の歴史」を記録し登録することを求める―

●「全体の歴史」なしの世界遺産登録の申請

 わたしたち日本の市民・宗教者は、1919 年2・8独立宣言につづく3・1朝鮮独立運動の 103 周年を迎えるにあたり、東北アジアの和解と平和の課題という地平からその歴史的意義をかみしめます。そして同時にわたしたちは、3・1独立運動を“不逞鮮人による暴動”とする事実の隠蔽と歪曲がマスメディアを通して流布され、それがやがて人びとの間に朝鮮人に対する恐怖と差別の心理を生み出すようになり、1923 年関東大震災の朝鮮人虐殺という惨劇を招いたことも、記憶したいと思います。
 この過ちを二度と繰り返さないように、人間の良心と理性に従って、わたしたちは歴史の中で犠牲を強いられ闇の中に封じられてきた事実を徹底して解明し、歴史の教訓として記憶する責任を自覚します。
 岸田首相は今年1月 28 日、「佐渡島の金山」遺跡を、アジア太平洋戦争期の朝鮮人強制連行・強制労働を含む「全体の歴史」ではなく、江戸期に限定して、ユネスコ世界遺産登録に推薦する方針を表明し、続いて2月1日、閣議決定しました。しかしわたしたちは、そのことに対し、自らの良心にかけて断固として抗議します。

●7年前の国際約束を反故にしている日本政府

 2015 年7月5日、ユネスコ世界遺産委員会が長崎県の端島(別名「軍艦島」)を含む「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議するにあたり、日本の佐藤地ユネスコ代表部大使は、「日本は 1940 年代のいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である」と表明しました。世界遺産委員会は、その約束を条件に「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議したのです。
 そして日本政府は、2020 年3月に産業遺産情報センターを東京に設立しました。ところがそこに展示された説明においては、日本ユネスコ大使が世界遺産登録にあたって約束したことを反故にし、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史事実が伏せられたものとなっていました。
 このことを確認した世界遺産委員会は昨年7月 21 日、「強い遺憾を示す(stronglyegrets)」決議を全会一致で採択し、2022 年 12 月 1 日までに負の歴史を含む「歴史全体(full history)」を示すよう日本政府に勧告しました。にもかかわらず、日本政府は、この勧告後も改善にまったく取り組まずに放置しています。

●佐渡鉱山における強制連行・強制労働の歴史事実

   日本の朝鮮植民地統治時代、佐渡鉱山に朝鮮人が強制連行され過酷な労働を強いられたことは、『新潟県史 通史編8近代3』(1988 年)など、戦後の歴史研究によって明らかです。佐渡鉱山へ 1,519 人が強制動員されたこと、さらに未経験の過酷な坑内労働に従事させられていたこと、そして日本敗戦時には 1,140 人分の未払い金が残されていたこと。また、佐渡鉱山の 1943 年3月の報告書には、「移入者総計」1,005 人のうち、「死者」10 人、「公私傷/不良送還」61 人、「逃走」148 人、「現在員数」584人と記されています。逃走者が 14.7%にも上り、現在員数がほぼ半減していること自体、強制労働であったことを物語っています。
 このような歴史事実を隠蔽し否定することによって、世界遺産として登録しようとする日本政府の姿勢を、果たして世界の人びとは尊敬のまなざしをもって肯定し受け入れるでしょうか。
 二度にわたる悲惨な世界大戦の経験を通して、新たな戦争を抑止するために国際連合が発足し、そこで「世界人権宣言」が採択されました。そして、個人の人権の尊重なしには平和は作れないという精神に基づき、教育や文化、科学を通じて人びとの「心の中の平和のとりで」を築くためにユネスコが設立され、その憲章では「平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と謳われました。しかし、日本政府のこれまでの行為は、ユネスコ憲章をことごとく踏みにじるものです。

●“歴史戦”ではなく「歴史対話」を

 2020 年 1 月、新潟県選出の国会議員のブログに掲げられた「歴史戦を闘い抜く」という掛け声によって、過去を美化する政治家たちは佐渡鉱山の世界遺産登録問題を“歴史戦”と喧伝し、人びとを嫌韓ナショナリズムに扇動し、問題の本質と、ユネスコ世界遺産委員会からの批判的勧告から目をそらさせようとしています。わたしたちは、彼らの言う“歴史戦”という虚妄を断固として退けます。この問題の核心は、日本と韓国の“歴史戦”などではなく、日本という国および社会が歴史と真摯に向き合い、その上で、韓国およびアジアの人びとと対話することです。そのことは、かつて植民地支配という「悪事」をなした諸外国が今なお取り組んでいる課題なのです。
 たとえばドイツでは 2004 年6月、連邦議会は次のように決議しました。「ドイツはその植民地主義の過去について、一点の曇りもない明確な態度を示さなくてはならない」「ナミビアに対するドイツの特別の政治的・道義的責任を認める」「我々はここに、幾万もの犠牲者たちの尊厳と名誉を回復することに寄与したい。我々は、起こったことを、なかったものとすることはできない」と。
 わたしたちは、近現代の歴史に刻まれた「負の歴史」とは、人間にとって崇高なゆるしと和解、そして平和の精神に互いがたどり着くための試金石だと確信します。私たちは真実と和解への希望を見失わず、日韓における互いの記憶の共有によって修復される信頼の関係をめざす「歴史対話」の道を、韓国の宗教者と市民社会とともに貫きつづけ
ます。

2022 年3月1日

日韓和解と平和プラットフォーム 日本運営委員会
【共同代表】 小野文珖(宗教者九条の和)/髙田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動)/野平晋作(ピースボート)/光延一郎(日本カトリック正義と平和協議会)
【運営委員】 飯塚拓也(日本キリスト教協議会東アジアの和解と平和委員会)/石川勇吉(愛知宗教者平和の会)/小田川興(在韓被爆者問題市民会議)/北村恵子(日本キリスト教協議会女性委員会)/金性済(日本キリスト教協議会)/白石孝(日韓市民交流を進める希望連帯)/平良愛香(平和を実現するキリスト者ネット)/武田隆雄(平和をつくり出す宗教者ネット)/中井淳(日本カトリック正義と平和協議会)/比企敦子(日本キリスト教協議会教育部)/飛田雄一( 神戸青年学生センター)/渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク)/渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館(wam)」)
【事務局】 くじゅうのりこ(東アジアの和解と平和ネットワーク)/佐藤信行(外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会)/潮江亜紀子(外国人住民基本法の制定を求める神奈川キリスト者連絡会)/藤守義光(日本キリスト教協議会)/昼間範子(日本カトリック正義と平和協議会)/柳時京(日本聖公会大阪川口基督教会)/渡辺多嘉子(平和を実現するキリスト者ネット)

◆連絡先◆〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 2-3-18 日本キリスト教会館 24 号 NCC気付
   電話(03)6302-1919 FAX(03)6302-1920 Email <jk.peaceplatform@gmail.com

 

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