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2022年3月

2022年3月15日 (火)

●【詳細分析】韓国大統領選と私たち(byかもめ)

        韓国大統領選挙と私たち

                             かもめ

   最近は韓国の開票速報もリアルタイムでYouTube配信されているので、筆者も夜遅くまで見ていたが、なかなか結果が出ず、夜12時にはコンピューターのスイッチを切った。翌朝木曜日の韓国サンケン労組を支援する行動で4時20分に起床しなければならないからだ。結局、大接戦の末、ユン・ソギョル(尹錫悦、61歳)の当確が発表されたのは「遅くとも夜半には」という予想に反し、翌日未明になってからだった。
   韓国の中央選管が発表した尹の最終的な得票数は1,639万票(48.56%)で、1,614万票(47.83%)のイ・ジェミョン(李在明、57歳)との得票差は1%にも満たない0.73%の24万7千票。この得票差は、無効票30万7千票より少なかった。ちなみに無効票には、候補者一本化で途中降板した人の数も含まれている。

 今回の大統領選挙について、まず一般的なことをいくつか。
①候補者:最終的に12人がそれぞれの「政党」から立候補し、無所属はいなかった。10人が男性、2人が女性だった。女性はいずれも進歩系(革新系)の正義党シム・サンジョン(沈相奵)と議席のない進歩党キム・ジェヨン(金在妍)。
 職業別では国会議員1人、商業が1人、その他3人の5人を除く7人が政治家。
②投票率:投票率は全国平均77.1%で、前回の大統領選2017年当時の77.2%よりわずかに少ない。コロナ状況でもあることから、事前投票が史上最多の36.93%となった。ちなみに投票率最高は光州広域市の81.5%(前回82%)、最低は済州道の72.6%(前回72.3%)だった。

1. 尹が勝ったというより、「与党」が負けた
 「あれほど熱かったキャンドルの炎はどこに?」多くの人が怪訝に思うだろう。2016年から2017年にかけて韓国では全国各地でキャンドル集会が開かれ、街頭を埋め尽くした人々は当時の保守、朴槿恵政権を倒した。熱烈な支持と期待で生まれた与党「共に民主党」文在寅政権は2018年4月と9月、相次いで南北首脳会談を開催し、2018年米国トランプ政権の米朝首脳会談も行われて、朝鮮半島や東アジアの平和も希望に満ちたものになった。格差を解消するため労働尊重社会を高らかに掲げ、公共部門における非正規の正規化、最低賃金の1万ウォンへの引き上げ、若者や女性の雇用創出など胸弾むスローガンが並んだ。
 期待が大きいほど落胆は大きい。落胆は失望となり、怒りを生む。
 「文在寅メーター」というのをご存じだろうか。これは韓国市民団体の参与連帯や情報公開センター、環境運動連合、毎日労働ニュース、言論改革市民連帯、貧困社会研究所、正義記憶連帯など28団体(3周年)が連帯して運営し、政権の公約をチェックするプロジェクトだ。ここでは文在寅政権が公約とした887の政策について、毎年その公約推進度をチェックしている。モデルは米国の「ポリティ・ファクトのトランプ・メーター」で①評価されない、②遅滞、③進行中、④変更、⑤完了、公約破棄などに分けてチェックするものだ。ここで2021年5月に発表された資料によると、「政権4年の公約完了は17%に過ぎない」ことが明らかになった。一方で遅滞が約20%、進行中が50%、破棄は2.82%だった。2020年の3年目評価では、公約完了は経済分野25%、地方分権・農漁村17%、統一・国防16%、労働13%だった反面、教育5%、ジェンダー平等5.7%、民生福祉6.5%などは平均にも満たないとしている。
   歴代政権の公約履行率でみると、2021年3月発表の市民団体「経済正義実践市民連合」は廬武鉉43%、李明博39.5%、朴槿恵42%とは比べ物にならないほどだと手厳しい。
 このようなもとで庶民の暮らしと直結する雇用、住居、少子高齢化問題は深刻だ。最低賃金1万ウォンの公約は守られず、非正規雇用で格差が拡がる中、コロナの追い打ちもあって雇用は大変な状況だ。不動産価格は政権発足4年で2倍に跳ね上がり、2020年出生率は「5年連続低下の1.34だと嘆く日本」よりもさらに低い0.84となった。
   開票結果が出た3月10日の朝7時25分、民主労総副委員長のキム・ウニョンさん(韓国サンケン労組)はサンケン電気本社前のオンライン発言で、「公約を守らない大統領は誰であれ、労働者、民衆の審判を受ける」と語った。

2. 結集した保守派、分散したリベラル勢力
   キャンドル直後の保守派は責任のなすり合いと内部分裂に明け暮れた。反共よりも「滅共」を叫び、朴正熙軍事政権をよりどころにして朴槿恵復権を望む勢力、いわゆる守旧派は結集軸を失っていた。すでに多くの人たちが「古臭い韓国保守」を嫌い、ゆすり・たかりまがいの政治風土に嫌気がさしていた。韓国の社会全体が「国の成り立ち」を掘り下げ、不正や腐敗を一層しようとする雰囲気で、文在寅政権は「積弊清算」を叫んでいた。このままでいくと「根絶やしにされる」という保守派の危機感は並々ならぬものだったろう。保守の一部若者に人気が「あった」韓国のビル・ゲイツとも呼ばれたアン・チョルス(安哲秀)も影が薄く、保守勢力は大統領候補になる人物探しをも含めて「新たな保守の道」を模索していた。そこで白羽の矢が立ったのが尹錫悦だった。
   検事総長の尹は朴槿恵を追い落とす直接的原因となった「崔順実ゲート」の特別捜査チーム長で、当時キャンドル市民から熱烈な支持を受けヒーローとなった人物だ。2019年に文在寅政権によって検事総長になったが、チョ・グク(曺国)前法相の起訴をきっかけに政権と対立し、2020年には法務省が尹の史上初の職務停止を命じ、裁判になったことから文政権との軋轢は後戻りできなくなった。尹は裁判所で言い分を認められて復帰し、2021年3月に検察を辞任、大統領選挙への出馬公開はその6月で、当時野党の「国民の力」に入党したのは2021年7月30日だった。
   1999年からずっと検察官だった尹は政治の経験はゼロで、候補者になった後も失言や暴言を繰り返し、テレビ討論では李に差をつけられもしたが、検事総長就任時の挨拶で「自由民主主義と市場経済秩序の本質を守らなければならない。自由市場経済と自由な企業活動が人類の繁栄と幸福を増進してきた」と、その信条を明らかにしている。最終的にアン・チョルスが巷の言説通りチョルス(哲秀=撤収)し、保守一本化が成功、保守勝利への道が開かれた。

3.社会的排外主義をあおり集票へ
   「嫌悪が勝った」と見出しをつけたのは『オーマイニュース』だ。尹は大統領選の中で労働組合を「略奪勢力」、市民団体は「権力を支える腐敗集団」だと決めつけ、移住労働者が「横取りしている」として外国人健康保険制度の要件強化を打ち出した。
中でも尹が標的にしたのは女性だった。民主化運動でも先頭に立って道を切り拓いてきた韓国女性運動の成果でもある「女性家族省」を廃止し、性犯罪が歪められているとして「性犯罪誣告罪」強化を打ち出した。
   女性の社会的進出と活躍、#Mee Too運動で象徴される女性たちによる運動、日本軍「慰安婦」問題と真正面から向き合ってきた正義連をはじめとする女性たちの闘い、これらを否定して、男性中心のインターネットサイトで支持を集めた。特に20代、10代の男性有権者は兵役問題もあって「男は不利」だとの考えもあって、雇用や結婚などで不安を抱える若者の「気分」を巧みにすくいとっていった。
   この大統領選では「イデナム(20代の男性)」や「イデニョ(20代女性)」という新語が生まれるほどホットな話題となった。選挙終盤では危機感をもった女性たちが李在明への投票に駆け込んだ。(表は3月9日、テレビ局3社による出口調査、オーマイニュースから作成。)

*表の上から順に20代以下男性、20代以下女性、30代男性、30代女性、40代男性、

          40代女性、50代男性、50代女性、60代男性、60代女性

   李在明                   尹錫悦

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4.リベラル・進歩の一本化は無理だったのか
 僅差0.73%をどう見るか。先に述べたように、12人の大統領候補は各政党から出馬したので、12の政党が候補者を出したことになる。中央選管の内訳をみると、保守系8政党、革新・進歩系が4政党だ。
   筆者が中央選管の内訳から作表し、集計した数は下記の通りだ(無効票0.05%)。本来、大統領選は個人名で選挙戦が行われるが、あえて政党別にまとめたものだ。

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   これを見て分かるように革新・進歩系が保守系をわずかではあるが上回っている。その差0.81%。韓国は真っ二つに断絶されていることが分かる。
   韓国内でも「正義党が譲れば47.83+2.37=50.2%となるので保守に勝てはずだ、なぜ一本化しなかったのか」と正義党に非難の書き込みも相次いだ。でも、ことはそれほど単純ではない。
   先の1で述べたように、「落胆から失望、失望から怒り」に変わったように、格差が拡がり、コロナで困窮する人々は、よりマシな政治を求めて政権交代に票を投じた。また、民主労総をはじめとする社会変革を闘う勢力も文在寅政権を見限り、背を向けた。決定的になったのは2021年9月の韓国最大のナショナルセンター、民主労総のヤン委員長を逮捕したことだった。就業前の明け方6時過ぎに警察官4,000人で事務所を取り囲み逮捕したのは怒りの炎に油をさしたようなものだった。サッカー場や野球場での観客が入っているのに、コロナ規制を口実とした集会禁止と逮捕は「弾圧」としかとらえられなかった。
   今年2022年1月11日、光州市の高層アパートマンション建設で34階から23階までの現場が崩落し、労働者8人が行方不明になるというショッキングなニュースは、日本でもテレビで放映された。全国建設労組によると、大統領選が始まった3月だけでも既に13人が労災で亡くなり、うち9人は建設現場の作業員だったとのことだ。労働界では労災の根絶を求めて法の強化を要求しているところだが、このような状況を差し置いて単純で形式的な「一本化」はあり得るだろうか。

5.断絶、分裂が続く韓国社会

今回の主な候補者3人の地域別得票率は下記の通り(黄:最多、緑:最少)。

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 上記の表で分かるように、地域別の偏差は現在もなお続いている。尹は一本化した安哲秀を「政権引継ぎ委員会」の委員長に指名し、次期政権に向けて動き出した。
 真っ先に行うとしているのが「官民合同委員会」の設置と大統領府の「改革」だ。要は公務員だけでなく、財閥など民間人の意見も積極的に取り入れて、国政運営に当たるとしている。尹は選挙戦の最中、企業家との懇談会で「(労災などを取り締まる)重大災害法で海外資本の韓国投資が困難になる、労災ばかりに気を取られていては経営者の意欲をそぐものになるので、施行令などで合理的に運営する」と述べている。このような姿勢は大きな反発を生むだろう。
 さらに外交安保分野においても「官民合同委員会」には外国人の登用もあるとしており、文在寅政権での南北共同宣言などが無効化されるとすれば、大きな抵抗もあるだろう。サードミサイル追加配備を述べている尹が実行すれば、中国からのしっぺ返しも予想されるし、現在の世界情勢のもとで尹の言っている「敵基地への先制攻撃」などは、もってのほかだ。日本の岸田政権もしかりだ。
 3月末には韓米合同軍事演習も予定されているという。この演習には嘉手納から、岩国から米軍の戦闘機が飛び立ち、韓国で「戦争の訓練」を行う。韓国のメディアによると、昨年11月から12月にかけて駐韓米軍の特殊戦司令部が「ネイビー室」を運営し、朝鮮半島の酷寒期訓練を行い、これを公開したと報じている。この「ネイビー室」はオサマ・ビンラディンの「斬首作戦」を行った部隊だ。米韓の特殊部隊は、朝鮮半島北部の奥に入り込む戦争訓練を繰り返しているのだ。私たちは東アジアにおける日米韓のきな臭い戦争協力に反対し、地域の平和に向けて尽力しなければならない。
 私たちは今後も韓国の労働者、民衆の側に立って、しっかり状況を見つめ、日韓民衆の連帯を強めていきたい。(2022年3月15日記)
 

 

2022年3月13日 (日)

●【ミニ解説】韓国大統領選結果を見る一視角、私たちの教訓

                                        渡辺健樹

先の韓国大統領選は、周知のように「対北先制攻撃」「在韓米軍のTHAADミサイル追加配備」「韓米日同盟優先」などを唱える保守野党の尹錫悦(ユン・ソギョル)が接戦を制して当選しました。与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)との得票率は、尹錫悦48.56%、李在明47.83%でその差はわずかに0.73%でした。

日本のマスメディアでは殆どこの二人しか取り上げられていませんが、進歩系の諸政党からの大統領候補も奮戦していました。そのなかで前回総選挙(2020年)で6議席を獲得していた正義党・沈相ジョン(シム・サンジョン)は2.37%を獲得しています(議席のある政党のため候補者のTV討論にも参加)。

仮に李・沈両候補が一本化していれば、李の47.83%+沈の2.37%で単純合算はできないものの李の勝利の可能性もあったと言えます。

ただ、これも結果として僅差勝負になったがゆえに言えることで、保守野党はもとより失政続きの共に民主党に対しても批判的な正義党や進歩党(前回総選挙で2議席を失い0議席となった民衆党が改称した)などの少数派の進歩政党が、当初から独自の旗印で独自の闘いを進める方針をとったこと自体は非難されるべきではないでしょう。歴史性や国情の違いもありますし。

とはいえ、この点からも、あらためて日本では自公に対抗する野党共闘・一本化が必要との教訓が導き出せそうです。

 *近々、かもめさんによる韓国大統領選の本格分析も掲載予定です。乞うご期待!


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韓国聯合ニュースより

 

2022年3月 2日 (水)

●3・1朝鮮独立運動103周年・新宿キャンドルアクション報告

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なりぞうさんが熱唱

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3月1日18時から3・1朝鮮独立運動103周年・新宿キャンドルアクションが取り組まれ、約120人の人々が集まった。

3・1独立運動に起ちあがった人々に思いを馳せ、103年目の日本市民の良心を朝鮮半島や世界の人々に届けようと宣伝カーの上からリレートークが行われ、集まった参加者はそれぞれの発言に合わせてキャンドルを振って呼応した。通行途中で足を止めチラシをもらいに来る若者たちもいた。

右翼・レイシスト集団がマイクでトンチンカンなヘイトスピーチで妨害を繰り返してきたが、それも途切れ途切れで、こちらの仲間のスピーチに圧倒されて聞き入っているようだった。これらの妨害を跳ね除け断固として最後まで貫徹した。

2・27東京集会に続いてU-PLANさんが動画をアップしてくれていますのでご覧ください。

 https://www.youtube.com/watch?v=h8dE23VxF2M  

3・1新宿キャンドルアクションでリレートークされた皆さんは以下の方々です。

開始前 なりぞうさんの歌 ♪イムジン河 ♪岩のように

司会  菱山南帆子(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)  
主催者挨拶  野平晋作(「3.1朝鮮独立運動」日本ネットワーク)
発言  徴用工問題 (山本直好・日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)
     「慰安婦」問題 (梁澄子[ヤン・チンジャ]・日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)
     朝鮮学校問題 (長谷川和男・朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会共同代表)
     沖縄米軍基地問題 (青木初子・沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)
     改憲問題 (山口菊子・戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)  
     関東大震災朝鮮人虐殺追悼問題 (宮川泰彦・日朝協会会長)、
     韓国大統領選 (孫亨根[ソン・ヒョングン]・在日韓国民主統一連合議長) 
     フィナーレ2曲 なりぞう ♪朝露 ♪光は闇に負けない

韓国インターネットニュースサイト『統一ニュース』が報告記事を配信(韓国語)

  http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=204458

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梁澄子(ヤン・チンジャ)さん

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青木初子さん

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2022 3・1朝鮮独立運動103周年東京行動 賛同団体⇒個人一覧・50音順 (2/25現在)      
強制動員問題解決と過去清算のための共同行動、原水爆禁止日本協議会(原水協)、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす関東連絡会、憲法骨抜きNO!ねりま、在日韓国民主女性会、在日韓国民主統一連合、三多摩日朝女性のつどい、新社会党、新社会党東京都本部、スペース21、全水道東京水道労働組合、竹島の日を考え直す会、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会、日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓ネット)、日朝協会、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会、日本平和委員会、ピースボート、ぴ~す・め~る、東アジアの和解と平和ネットワーク、ふぇみん婦人民主クラブ、フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)、婦人民主クラブ、部落解放同盟東京都連合会、平和といのち・イグナチオ9条の会、本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)、許すな!憲法改悪・市民連絡会、青木初子(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)、秋山淳子、浅井健治、新里倫子、五十嵐政晴(日本共産党荻川支部)、池上仁、石井寛(韓国良心囚を支援する会全国会議事務局長)、石下直子、伊藤英一、伊藤美恵子、井上好子、岩崎富久男、岩村義雄(神戸国際キリスト教会牧師)、岩本乾治、内田雅敏(弁護士)、大下富佐枝、大谷猛夫、大畑龍次(日韓ネット)、奥村律子、尾澤邦子(日韓ネット・ノレの会)、尾澤孝司(日韓ネット)、小田川興、小野信也、笠原直子、片山光広、加藤正姫(日韓ネット)、北川広和(日韓ネット・「日韓分析」編集)、北原れい子、金性済(日本キリスト教協議会[NCC]総幹事)、くじゅうのりこ(東アジアの和解と平和ネットワーク)、久世裕子(病院清掃員)、黒田恵、鴻巣美知子(朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会)、東風徹(韓国良心囚を支援する会全国会議)、斎木登茂子(カトリック正義と平和協議会)、斎藤紀代美、斎藤義夫(元都立高校教員)、坂本史子(元目黒区議会議員)、桜井大子、佐藤邦也、佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン)、佐藤信行(外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会[外キ協])、白石孝(日韓市民交流を進める希望連帯代表)、鈴木敏夫(子どもと教科書全国ネット21事務局長)、須田稔(立命館大学名誉教授)、宋世一、高梨晃嘉(かながわアクション代表世話人)、高橋昭子、高橋年男、高橋華枝、田上中(税理士)、武田隆雄(日本山妙法寺僧侶)、竹腰英樹(中野協同プロジェクト)、橘優子、田中宏(一橋大学名誉教授)、田場祥子、寺尾光身(元理系教員)、土松克典(日韓ネット・HOWS)、中地弘志、中塚明(奈良女子大学名誉教授)、中村知明(郵政ユニオン本部顧問)、花村健一(樹花舎代表)、番場明子(ぴ~す・め~る)、飛田雄一(神戸学生青年センター)、平野晶男、平山良平、藤原輝子、布施由女(三多摩日朝女性のつどい世話人)、松浦賢治、松田照男、丸田潔、森内慎一郎、森川静子、森本孝子(朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会共同代表)、矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)、山口菊子(「憲法」を愛する女性ネット)、山下治子、山根敏英、吉田哲太郎(神奈川平和遺族会代表)、與芝豊、吉原信次、米川覚、梁大隆、渡辺一夫(韓国良心囚を支援する会全国会議代表)、渡辺健樹(日韓ネット共同代表)、渡辺真哉(選制改革・on署名)、渡辺多嘉子、渡辺吉男 (匿名希望4名)  

 

 

 

2022年3月 1日 (火)

●佐渡金山問題 日韓プラットフォームが緊急声明

日韓の市民運動と宗教者でつくる日韓和解と平和プラットフォーム(日本側運営委員会)は、3.1朝鮮独立運動103周年にあたり日本政府による朝鮮人強制動員・強制労働を無視した佐渡金山の世界遺産登録の推薦決定について下記の緊急声明を出しましたのでご紹介します。
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<緊急声明>佐渡鉱山の強制連行・強制労働の歴史を否定してはならない
      ―「全体の歴史」を記録し登録することを求める―

●「全体の歴史」なしの世界遺産登録の申請

 わたしたち日本の市民・宗教者は、1919 年2・8独立宣言につづく3・1朝鮮独立運動の 103 周年を迎えるにあたり、東北アジアの和解と平和の課題という地平からその歴史的意義をかみしめます。そして同時にわたしたちは、3・1独立運動を“不逞鮮人による暴動”とする事実の隠蔽と歪曲がマスメディアを通して流布され、それがやがて人びとの間に朝鮮人に対する恐怖と差別の心理を生み出すようになり、1923 年関東大震災の朝鮮人虐殺という惨劇を招いたことも、記憶したいと思います。
 この過ちを二度と繰り返さないように、人間の良心と理性に従って、わたしたちは歴史の中で犠牲を強いられ闇の中に封じられてきた事実を徹底して解明し、歴史の教訓として記憶する責任を自覚します。
 岸田首相は今年1月 28 日、「佐渡島の金山」遺跡を、アジア太平洋戦争期の朝鮮人強制連行・強制労働を含む「全体の歴史」ではなく、江戸期に限定して、ユネスコ世界遺産登録に推薦する方針を表明し、続いて2月1日、閣議決定しました。しかしわたしたちは、そのことに対し、自らの良心にかけて断固として抗議します。

●7年前の国際約束を反故にしている日本政府

 2015 年7月5日、ユネスコ世界遺産委員会が長崎県の端島(別名「軍艦島」)を含む「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議するにあたり、日本の佐藤地ユネスコ代表部大使は、「日本は 1940 年代のいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である」と表明しました。世界遺産委員会は、その約束を条件に「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議したのです。
 そして日本政府は、2020 年3月に産業遺産情報センターを東京に設立しました。ところがそこに展示された説明においては、日本ユネスコ大使が世界遺産登録にあたって約束したことを反故にし、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史事実が伏せられたものとなっていました。
 このことを確認した世界遺産委員会は昨年7月 21 日、「強い遺憾を示す(stronglyegrets)」決議を全会一致で採択し、2022 年 12 月 1 日までに負の歴史を含む「歴史全体(full history)」を示すよう日本政府に勧告しました。にもかかわらず、日本政府は、この勧告後も改善にまったく取り組まずに放置しています。

●佐渡鉱山における強制連行・強制労働の歴史事実

   日本の朝鮮植民地統治時代、佐渡鉱山に朝鮮人が強制連行され過酷な労働を強いられたことは、『新潟県史 通史編8近代3』(1988 年)など、戦後の歴史研究によって明らかです。佐渡鉱山へ 1,519 人が強制動員されたこと、さらに未経験の過酷な坑内労働に従事させられていたこと、そして日本敗戦時には 1,140 人分の未払い金が残されていたこと。また、佐渡鉱山の 1943 年3月の報告書には、「移入者総計」1,005 人のうち、「死者」10 人、「公私傷/不良送還」61 人、「逃走」148 人、「現在員数」584人と記されています。逃走者が 14.7%にも上り、現在員数がほぼ半減していること自体、強制労働であったことを物語っています。
 このような歴史事実を隠蔽し否定することによって、世界遺産として登録しようとする日本政府の姿勢を、果たして世界の人びとは尊敬のまなざしをもって肯定し受け入れるでしょうか。
 二度にわたる悲惨な世界大戦の経験を通して、新たな戦争を抑止するために国際連合が発足し、そこで「世界人権宣言」が採択されました。そして、個人の人権の尊重なしには平和は作れないという精神に基づき、教育や文化、科学を通じて人びとの「心の中の平和のとりで」を築くためにユネスコが設立され、その憲章では「平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と謳われました。しかし、日本政府のこれまでの行為は、ユネスコ憲章をことごとく踏みにじるものです。

●“歴史戦”ではなく「歴史対話」を

 2020 年 1 月、新潟県選出の国会議員のブログに掲げられた「歴史戦を闘い抜く」という掛け声によって、過去を美化する政治家たちは佐渡鉱山の世界遺産登録問題を“歴史戦”と喧伝し、人びとを嫌韓ナショナリズムに扇動し、問題の本質と、ユネスコ世界遺産委員会からの批判的勧告から目をそらさせようとしています。わたしたちは、彼らの言う“歴史戦”という虚妄を断固として退けます。この問題の核心は、日本と韓国の“歴史戦”などではなく、日本という国および社会が歴史と真摯に向き合い、その上で、韓国およびアジアの人びとと対話することです。そのことは、かつて植民地支配という「悪事」をなした諸外国が今なお取り組んでいる課題なのです。
 たとえばドイツでは 2004 年6月、連邦議会は次のように決議しました。「ドイツはその植民地主義の過去について、一点の曇りもない明確な態度を示さなくてはならない」「ナミビアに対するドイツの特別の政治的・道義的責任を認める」「我々はここに、幾万もの犠牲者たちの尊厳と名誉を回復することに寄与したい。我々は、起こったことを、なかったものとすることはできない」と。
 わたしたちは、近現代の歴史に刻まれた「負の歴史」とは、人間にとって崇高なゆるしと和解、そして平和の精神に互いがたどり着くための試金石だと確信します。私たちは真実と和解への希望を見失わず、日韓における互いの記憶の共有によって修復される信頼の関係をめざす「歴史対話」の道を、韓国の宗教者と市民社会とともに貫きつづけ
ます。

2022 年3月1日

日韓和解と平和プラットフォーム 日本運営委員会
【共同代表】 小野文珖(宗教者九条の和)/髙田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動)/野平晋作(ピースボート)/光延一郎(日本カトリック正義と平和協議会)
【運営委員】 飯塚拓也(日本キリスト教協議会東アジアの和解と平和委員会)/石川勇吉(愛知宗教者平和の会)/小田川興(在韓被爆者問題市民会議)/北村恵子(日本キリスト教協議会女性委員会)/金性済(日本キリスト教協議会)/白石孝(日韓市民交流を進める希望連帯)/平良愛香(平和を実現するキリスト者ネット)/武田隆雄(平和をつくり出す宗教者ネット)/中井淳(日本カトリック正義と平和協議会)/比企敦子(日本キリスト教協議会教育部)/飛田雄一( 神戸青年学生センター)/渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク)/渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館(wam)」)
【事務局】 くじゅうのりこ(東アジアの和解と平和ネットワーク)/佐藤信行(外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会)/潮江亜紀子(外国人住民基本法の制定を求める神奈川キリスト者連絡会)/藤守義光(日本キリスト教協議会)/昼間範子(日本カトリック正義と平和協議会)/柳時京(日本聖公会大阪川口基督教会)/渡辺多嘉子(平和を実現するキリスト者ネット)

◆連絡先◆〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 2-3-18 日本キリスト教会館 24 号 NCC気付
   電話(03)6302-1919 FAX(03)6302-1920 Email <jk.peaceplatform@gmail.com

 

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