
日朝ピョンヤン宣言15周年 朝鮮半島と東アジアの平和を求める9・16集会
南北朝鮮の和解と統一を阻むもの
~アメリカの覇権主義と追随者たち~
Rep.纐纈厚
Ⅰ.朝鮮分断の歴史過程~日本の朝鮮植民地支配を出発点として
1)歴史の事実から
〇日本敗戦過程のなかで:
⇒「ポツダム宣言」(1945.7.26.)⇒連合国側、特にアメリカの思惑と違い日本受諾拒否(1945.7.27.)を躊躇⇒連合国の日本降伏計画に齟齬。アメリカ、原爆によりソ連を牽制(1945.8.6)⇒ソ連対日宣戦布告(1945.8.8.)アメリカ、二度目原爆投下(1945.8.9.)
⇒日本、「国体護持」を条件に降伏受諾(1945.8.10.)。日本国内で降伏条件をめぐりクーデタ発生。「聖断」により決着(1945.8.14.)、玉音放送(1945.8.15.)。この一連の流れのなかで朝鮮分断方針は明示されず
〇アメリカによる日本占領計画作成(1945.8.10.-11):
⇒占領計画の完成(1945.8.16.)、アメリカの三省委員会(アメリカ陸軍はソ連による朝鮮全土の単独占領の可能性を阻止し、38度線での分断方針を構想
⇒何故、38度線なのかに就いては諸説あり
① 日清戦争後、朝鮮半島をめぐり緊張関係を高めていた日本とロシアが1896年に、38度線を境界線に朝鮮分断を画策。同様に1903年にも朝鮮分断交渉を水面下で進め、交渉妥結に至らなかったことも含め、日露戦争が開始(1904)
② 日本の大本営が本土決戦に備えて38度線以北を関東軍の管轄とし38度線以南の朝鮮軍を大本営の直轄とした
〇朝鮮植民地化政策のなかで:
⇒1910年8月22日、違法性の高い「朝鮮併合条約」により朝鮮の植民地化⇒日本、朝鮮半島を大陸侵攻の橋頭保に
⇒第二次世界大戦終結後:フランスのように占領後、直ぐに独立が不可能であった背景があった。朝鮮臨時政府「大韓民国臨時政府」(中国上海で設立)の動向との関連、日本降伏に伴い機能不全に。日本敗戦(ポツダム宣言受諾)以後朝鮮戦争(1950.6.25.-1953.7.27.休戦協定成立)
2)戦後史研究から
〇分断を志向する米ソの角逐のなかで:
⇒8月6日の広島、9日の長崎への原爆投下により、日本敗北が時間の問題となって以後、占領計画書作成過程の最終段階で米国の戦争指導者たちは、ソ連軍がこのまま進撃すれば朝鮮全土、北海道まで解放占領する勢いに危機感を強め、急遽、国務-陸軍-海軍3省委員会(SWNCC)のジョン・マックロイが2人の若い将校に隣室で朝鮮を分割する地点を見つけるようにと指示
⇒8月10日から11日にかけての深夜のことで、作業に与えられた時間は30分、2人は地図を見ながら、「アメリカ側に首都を含めることができる」という理由から、北緯38度線を選択、これが朝鮮において米ソ両軍によって占領されるべき地域として確定され一般命令第1号に含まれた
*この2人が30分の間に選んだ線が、36度線あるいは39度線ではなくて38度線だったのかについては以下の事実が参考されたのであろう。①日露両国が、1896年(日清戦争終結の翌年),38度線を境界線として朝鮮を分断する交渉した経緯があり、同様の交渉が再度、1903年(日露戦争の前年)にも行われた。
〇朝鮮植民地支配との関連性:
⇒日本の大本営が本土決戦に備えて38度線以北を関東軍の管轄とし、38度線以南の朝鮮軍を大本営の直轄としたことから、日本敗北後、関東軍がソ連に、朝鮮軍がアメリカにより武装解除された経緯から、38度線以北を事実上ソ連に、以南を事実上アメリカの支配権下にすえおくことになった。
⇒38度線提案が出され、38度線条項を含む一般命令が討議されている間にソ連軍は1945年8月12日朝鮮北部に入り進撃、8月15日には千島攻撃を開始する予定だったが、米軍はまだ沖縄に留まっていた(九州上陸作戦の予定は1945年11月1日であった)
⇒一般命令第1号は、1945年8月15日マッカーサ元帥に打電され、ソ連にも打電されたが、スターリンは、翌日ソ連軍による北海道北半部占領を提案し米国から拒否されたが、ヤルタ秘密協約遵守の言質を与えられたこととの引き換えに38度線分断を黙認
⇒8月15日に日本政府は、天皇の権威でやっと軍部の抵抗を抑え込み、天皇が戦争終結の放送をし、全日本軍に戦闘停止命令を発した。38度線条項を含む一般命令第1号は1945年9月2日、マッカーサ元帥によって発せられた。
Ⅱ.今 韓国で何が起きているのか~韓米同盟への見直し求める動き
1)韓国国内での新たな動き
〇アメリカのためだけの同盟:
⇒「Is this an
alliance? Get lost with your THAAD!」(これが同盟なのか。サードを持って消えろ!)=韓国の人々がアメリカ政府やアメリカ軍基地に向け、口々に叫んでいるスローガン=不平等な韓米関係と従属的な韓米同盟の見直しを希求する切実な声
⇒韓国国内では、文在寅大統領の下、「6・15南北共同宣言」への見直しの機運が高まる
〇韓米同盟の見直しを迫る:
⇒2000年6月13日から金大中大統領と金正日国防委員長との首脳会談が行われ、「六・一五南北共同宣言」を発表=「自主的解決」による統一及び韓国の「連合制案」と北朝鮮の「連邦制案」の共通性を相互に認め合うこと等を骨子とし、南北朝鮮が自主的平和的統一への方向で共同歩調を採ることを合意
⇒2007年10月2日から開始された盧武鉉大統領と金正日国防委員長との首脳会談後に発表された「10・4宣言」も含め、韓国では所謂「6・15時代」を取り戻そうとする運動が活発化=韓国が対米従属路線から脱し、主権を回復する運動とも位置付けられる
⇒韓国の主権を回復することが切望され、韓国政府とこれを支える韓国国民が団結して、「6・15南北共同宣言」以来、両国間で検討されていた統一方式の共通性を土台とする統一国家構想の具体化に向けて歩みだす機会との位置づけ
2)「戦闘なき停戦」の時代をどう捉えるのか
〇米朝間の歩み寄りの時代から相互批判・対立の時代へ:
⇒北朝鮮の核開発プログラムの凍結を取り決めた「米朝枠組み合意」(1994年10月21日)が成立。2003年に決裂するまで10年近く継続。アメリカ・韓国・北朝鮮・中国・ロシア・日本の六ヵ国から構成された北朝鮮の核開発問題に関し、解決のため関係各国外交当局の局長級担当者が直接協議を行う「六者協議」が、2003年8月から2007年3月まで北京を協議場に、合計6回(合計9次)開催
〇合意や協議が破綻した理由は何か:
⇒六か国間の軋轢の深刻化=日本と韓国及び中国とは、領土問題や歴史問題で相互不信に陥り、アメリカとロシアとはシリア問題等で険悪化し、日本と北朝鮮はミサイル発射実験などで冷却化
⇒アメリカの北朝鮮政策の硬直化:である。これに日本も韓国も追随し、加えて中国の北朝鮮への影響力も薄らぎ、ロシアも具体的な手を打てず、傍観者的な立場に
〇「戦闘無き停戦」の本質としての〝戦闘なき戦闘〟状態の恒常化:
⇒アメリカは休戦協定(第13条d項)違反を侵しているだけでなく、北朝鮮侵攻計画「5015計画」を決定(2016.6.)
⇒繰り返される米韓軍事合同演習の実態=「戦争のように演習し、演習のように戦争する」事実上の戦争⇒北朝鮮の経済・工業・教育など全ての分野に消耗を強いる目的(今回の演習も北朝鮮で始まった稲の収穫期と合わせた農業・食料生産の削減を意図)
⇒「アメリカ軍が韓国軍を巻き込んで実施する米韓合同軍事演習は、軍事演習の範疇では捉えきれないもので、事実上〝演習〟という名の戦争である。」(ジョン フェッファー〈栗原泉他訳〉『アメリカの対北朝鮮・韓国戦略』明石書店、2004年)
⇒米軍関係者による恫喝の繰り返し=cf.「金正恩がソウルを砲撃すれば、米空軍の核爆撃機による〈クローム・ドーム〉作戦で北朝鮮は地球上から消えてしまうだろう」(前米空軍合同参謀本部次長トーマス・マッカーニ予備役中将の発言)
Ⅲ.アメリカの北朝鮮恫喝政策が「脅威」の根源
1)アメリカによる「二重の恫喝」
〇アメリカによる南北朝鮮同時的恫喝:
⇒北朝鮮には米韓合同軍事演習と核戦略で、韓国には韓米同盟の履行を迫る意味で、アメリカは南北朝鮮を同じ「鳥の籠」に押し込めている
⇒韓国の政府も国民も実は強く認識しているが、南北朝鮮分断の固定化が、アメリカの利益に叶うと考えている
〇歴史を跨いでの〝植民地支配〟の継続:
⇒戦前期朝鮮は日本による35年間に及ぶ植民地支配を受け、戦後は1951年以降、アメリカによる、事実上の〝植民地支配〟(新植民地)を受け、それを担保するものとして米韓安保・米韓地位協定を締結(日本も同質)
⇒「国際内戦」と称される朝鮮戦争は、脱植民地の戦争ではなかったのか、という問いが発せられていることの意味(米ソ冷戦体制は、アジアにおける植民地支配の継続を担保)=朝鮮戦争(1950-53)を〝脱植民地戦争〟と把握する視点が意味するもの
〇自主的平和的統一とは、〈復元〉ではなく〈創造〉であること:
⇒休戦協定締結以後、南北朝鮮は1972年の「7・4南北共同声明」で祖国統一の三大原則に合意し、1991年には「南北基本合意書」を取り交わし、南北関係を国家と国家の関係でない統一を志向する関係と規定
⇒分断の歴史的性格からして、朝鮮統一とは分断以前の状態へ単に復元することではなく、統一とは朝鮮民族固有の歴史と文化とを踏まえ、新たな国家を創造すること
2)休戦協定を潰したアメリカ
〇最初に休戦協定を潰したのはアメリカ:
⇒休戦協定第13節d項=南北朝鮮が損傷を受けたり、使い古した装備の再配備以外には朝鮮に新しい武器を持ち込むべきではないと規定。事実上、核兵器とミサイルの持ち込みを禁じていた
⇒1956年9月、アメリカのアーサー・W・ラドフォード統合参謀本部議長は、アメリカ政府内部でアメリカの軍備増強として朝鮮に核兵器を持ち込むことになると主張、アイゼンハワー大統領の承認を得た。
⇒1957年6月21日、在朝鮮国連司令部軍事休戦委員会の会合でアメリカは北朝鮮代表団に国連軍(UNC)は最早休戦協定第13節d項に対する義務を負わないと表明
⇒1958年1月、W7などの核砲弾が発射可能のMGRI(オネスト・ジョン)、W9/W31、核砲弾発射可能のM65
280mmカノン砲が韓国に配備
〇北朝鮮からは平和協定締結への繰り返しの提案:
⇒1970年代:朝米間平和協定締結案、1980年代=韓国を含めた米朝韓間三国による平和協定案、1990年代:新しい平和保障体系樹立提案、2007年10月4日、停戦協定関係国が集い、戦争終結を宣言する問題を推進することについての提案、2010年11月11日:朝鮮戦争勃発60年になる年に停戦協定を平和協定に変更するための会談を速やかに開始することについての提案
⇒2013年3月6日、朝鮮人民軍最高司令部スポークスマン声明=「停戦協定の効力を全面的に白紙化する」と宣言
⇒最近における弾道弾迎撃ミサイル・システムであるTHAADミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile)の配備に至るまで、アメリカは核兵器やロシア・中国・北朝鮮を対象とした攻撃・迎撃兵器を朝鮮半島および日本を含め地域周辺に大量に持ち込み続ける。
〇繰り返される南北朝鮮間の軍事衝突:
⇒真相は定かではないものの、韓国海軍の大型哨戒艦「天安」沈没事件(2010年3月26日)、北朝鮮人民軍の多連装ロケット(BM21、北朝鮮名BM11)によると思われる砲撃が、韓国領土内の延坪島に向けて発射され、韓国軍も応戦した事件が発生した。こうした南北間の緊張関係が増幅する傾向
3)アメリカがアジアでの軍事プレゼンスに執着する理由は何か
〇親米国家の再生産による世界覇権主義の貫徹:
⇒アジア(韓国・フィリピン・インドネシア等)、ラテンアメリカ(アルゼンチン・チリ・ブラジル等)、中東(イラク・リビア等)の親米軍事独裁政権を支援し、その限界性が露呈されると見るや、表向きには「親米民主政府」、実際上には「民主的独裁」とも呼称し得る政権形成に奔走
⇒アメリカからの自立志向を仄めかす親米国家指導者への干渉と恫喝=cf.田中角栄(中国への自立的接近)、小沢一郎・鳩山由紀夫(在日米軍有事駐留論)らへの干渉と失脚を誘導
〇アメリカの本音は何処にあるのか:
⇒アメリカ外交の常套手段は分断政策=かつてユーゴスラビアを解体し、続けてチェコスロバキア・中央アフリカ・イラク・シリア・スーダンと事実上の分断による内紛の常態化政策を直接間接に実行
⇒1997年成立の「アメリカ新世紀プロジェクト」(Project for the
New American Century, PNAC)は、アメリカ第一主義を掲げるアメリカの権力集団が、アメリカ主導の朝鮮統一を目途とし、朝鮮半島全域にアメリカの軍事力プレゼンスを展開。アメリカの意向を汲んだ統一朝鮮が、新たな経済収奪対象地域と算定
⇒韓米同盟も日米同盟も、南北朝鮮の自主的平和統一の阻害要因。段階的であれ同盟関係の緩和から、さらには解消のプログラムの構築が大胆に検討されるべき
4)作為された〝脅威論〟の果てに
〇〝脅威論〟の実際は、「作為された脅威」であること:
⇒〝脅威〟がアメリカの朝鮮半島における軍事プレゼンスを正当化するために利用されていること、そして、日本では安倍首相の言う「東アジアの安全保障環境が変わった」という言辞によって、集団的自衛権から安保関連法、さらには共謀罪まで次々に法制化されていく外交軍事政策の口実にされていることが、実は平和を希求する人々にとって、本当の脅威であること
⇒防禦的抑止力の向上を目的に、北朝鮮は今後もミサイル発射実験を繰り返すことは充分に予測されるが、それはアメリカの具体的な侵攻作戦が発動されない限り、先んじて動くことはあり得ない。
⇒日本本土に落下した場合に備える訓練が各地で企画実践されているが、それはある種の政治プロパガンダの一環として地方自治体や住民を巻き込んで、所謂脅威の実態化に懸命。極めて悪質なプロパガンダである。
⇒作為された「脅威」が日本や韓国を含め、アジア全域の人々にとっては実際の脅威
Ⅳ.分断状態の清算と南北統一に向けて~平和実現を阻むものは誰か
1)繰り返される戦争挑発の背景
〇分断固定化の利益構造:
⇒分断の固定化を意図するアメリカの思惑⇒朝鮮半島を不安定化することにより、アジアにおけるアメリカのプレゼンスを堅持し、常時介入路線を正当化する⇒今回のカールビンソンを旗艦とする機動部隊による恫喝行為もその象徴的事例
〇米韓合同軍事演習の意図:
⇒米韓両軍は2017年3月1日、北朝鮮の脅威に備えた定例の合同野外機動訓練「フォールイーグル」を開始、昨年の訓練には、米軍約1万7000人、韓国軍30万人以上が参加したが、今回も同程度かそれ以上の規模で実施⇒共和国は臨戦体制化を強いられ、軍事領域以外にも防衛体制が敷かれる(経済・教育などの諸領域に影響)
〇日本自衛隊も合同軍事演習に参加:
⇒朝鮮半島の緊張が高まる東アジアで日米韓が合同演習。日本はヘリ空母型護衛艦「いずも」(満載時2万4000トン、長さ248m)、アメリカは空母カールビンソン(10万トン、長さ333m)(日本は今までより大きな役割を果たす。南シナ海にも、海上自衛隊が最大級の護衛艦「いずも」などを派遣

いずも
カールビンソン
⇒日本とアメリカ、韓国の3カ国は14日から2日間の予定で日韓両国の近海で弾道ミサイル防衛の合同訓練を開始⇒日本もより大きな役割を担う
2)米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」
〇演習の実態:
⇒8月21日~31日まで実施:演習には米軍1万7500人、韓国軍5万人が参加、以前は乙支フォーカスレンズ(을지 포커스 렌즈、Ulchi-Focus Lens)と呼ばれていたが、当時2012年に予定されていた戦時作戦統制権の韓国軍への転換に備えるために2007年に改称、韓国軍が主導しそれをアメリカ軍が支援する形で実施
⇒アメリカ軍は北朝鮮が米韓合同軍事演習にあわせて挑発してくる可能性が高いと判断して、今月21日から24日にかけて行われる米韓合同軍事演習の「乙支フリーダムガーディアン」の際に空母2隻を展開
⇒空母2隻に随伴する、イージス巡洋・駆逐艦10隻以上、原子力潜水艦3隻以上、戦闘機160機以上とトマホーク巡航ミサイル100発以上の戦力を保有
<カールビンソン(左)とロナルド・レーガン>

Ⅴ.繰り返される共和国への戦争挑発~事実上の戦争の常態化
1) 北朝鮮侵攻作戦計画の変容
〇在韓米連合軍に何が起きているのか:「5027」から「5015」へ:
⇒作戦計画「5015」(2016.6.韓米連合司令官兼在韓米軍司令官署名)、韓米安保協議会(SCM)が朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国と略す)の戦略転換に対応して作成した作戦計画で当初は戦時作戦統制権(戦作権)の転換予定に伴う措置、結局は戦作権の転換は2020年代まで延長となったが「5015」はそのまま履行

図をクリックすると拡大します
〇)作戦計画「5027」と「5015」の違い:
⇒朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国と略す)の侵攻阻止に集中するのではなく、全面戦争開始前に迅速かつ積極的に北上侵攻作戦を進め、北朝鮮の壊滅を意図する作戦計画⇒北朝鮮は、これに共和国は「7日戦争計画」で対応戦略を準備⇒「5015」は、「5027」と共和国国内の急変事態に対応する「5029」などの総合作戦計画と捉えておくのが合理的
⇒韓国国防省は計画で、共和国の核・ミサイル施設に先制攻撃を加える防衛システム「キルチェーン」と、独自の韓国型ミサイル防衛(KAMD)の構築に向けた予算を優先的に配分
⇒韓国国防軍は日本自衛隊と同様に日米韓三国軍事同盟の強化路線を敷く
2)朝鮮半島の平和構築の方途は
〇自主的平和的統一のための戦略:
⇒朝鮮民族の主体性を尊重し、外圧・恫喝など軍事的かつ非平和的手段を拒否するなかで、南北朝鮮の融和と友好関係の阻害要因を段階的に除去すること。その意味で以下の金正恩氏の発言の意味を確りと受け止めるべきであろう
「5000年の悠久の歴史と燦然たる文化を誇る朝鮮民族が、70余年の長きにわたり外部勢力によって分断の苦痛と辛酸をなめているのは、これ以上たえることのできず容認できない民族の恥です。国の分断が持続すればするほどわが同胞がこうむる被害と災難は重なり、朝鮮半島における戦争の危険は増大し、しまいには民族的惨禍をまぬかれないでしよう。国と民族がそれぞれ自己の利益を前面におしだし、きそって発展を指向しているとき、朝鮮民族が北と南にわかれていまなおおたがいに反目し対決しているのは、みずから民族の統一的発展をはばみ、外部勢力に漁夫の利をあたえる自殺行為です。これ以上民族の分断を持続させてはならず、われわれの世代にかならず祖国を統一しなければなりません。」*傍線引用者
「北と南が統一の同伴者としてたがいに尊重し、協力していくためには、相手方を刺激する敵対行為をとりやめなければなりません。相手側にたいする敵対行為は不信と対決を助長し、関係の改善をさまたげる主な障害です。」
〇南北和解の第一歩を築くために:
⇒大韓民国(韓国)の対米従属政治から脱却し、在韓米軍の撤退を求め、米韓安保廃棄への方途を示すことが不可欠
⇒そのためは日本も対米従属・日米同盟強化論・日米安保を段階的解消に向けて取り組む必要性⇒韓米安保・日米安保の段階的解消を通して、南北朝鮮及び日朝関係の戦略的和解の方向性を希求していくことが重要
⇒日本の姿勢として、徒にアメリカに追随する姿勢から、主体性を取り戻すことが肝要、日韓・日朝関係改善のためには、朝鮮支配の歴史を見据えなおし、あるべき歴史認識を深めていくことが急務
大森実『戦後秘史』第8巻、講談社、1981年、48頁。
『労働新聞』2013年3月6日付。以下、北朝鮮の停戦協定への構えについては、高一「朝鮮戦争とその後:北朝鮮からみた停戦協定体制」((成蹊大学アジア太平洋研究センター編刊『アジア太平洋研究』No.39,2014)を参照。