【書庫】日韓ネットの声明・見解および関連資料(~2006年)
資料① 北朝鮮の核実験に対する日韓ネットの声明(2006.10.10)
資料② 北朝鮮の核実験に対する韓国社会・市民団体の共同記者会見文(2006.10.10)
資料③ 北朝鮮ミサイル問題に対する日韓ネット声明(2006.7.9)
資料④ 6カ国共同声明全文(2005.9.19)
資料⑤ 6カ国共同声明に対する日韓ネット声明(2005.9.25)
資料⑥ 「竹島の日」条例に反対する日韓ネット声明(2005.4.1)
資料⑦ 日朝ピョンヤン宣言全文(2002.9.17)
資料⑧ 日朝首脳会談・ピョンヤン宣言に対する日韓ネット声明(2002.9.20)
資料⑨ 米朝ジュネーブ枠組み合意全文(1994.10.21)
資料⑩ 南北共同宣言全文(2000.6.15)
資料① 声明 北朝鮮の核実験をめぐって
制裁ではなく、今こそ米朝交渉実現の国際世論を
2006年10月10日 日韓民衆連帯全国ネットワーク
(一)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府は、10月9日、地下核実験を「成功裏に行った」と発表した。核保有を宣言し、「強硬には超強硬で」と言明していたことからすれば、ミサイル発射実験に続く、予想された事態である。
私たちは、これまで反戦・反核・平和を求め、また韓国・朝鮮の人々との真の和解と平和、友好連帯を求める中で、米国を筆頭とする核大国はもとより、北朝鮮を含むすべての国の核開発・核保有・核実験に反対の立場を繰り返し明らかにしてきた。私たちは、あらためて今回の北朝鮮の核実験に反対の立場を表明する。
しかし、今回の北朝鮮の核実験が、米軍の先制攻撃態勢の強化と日米軍事同盟の再編・強化、とりわけミサイル防衛(MD)がすすめられ、さらにリムパックなどの大規模軍事演習が繰り返し行われていることが背景にあることは明らかである。こうした動きに北朝鮮側が脅威を感じても不思議ではない。
今回の核実験は、こうした動きに対して軍事力を示し、核保有国として交渉力を強め、米朝直接交渉へのアピールの意図が込められている。
(二)
私たちは、何よりも朝鮮半島の平和と非核化の実現のためには、制裁ではなく、朝鮮半島をめぐる歴史的構造的な問題解決に向かうことこそが求められていることを繰り返し訴えてきた。
問題の根源は、南北が分断され、米朝が半世紀以上にもわたり準戦時状態のまま放置され続けていることにある。このことが、朝鮮半島の南北の人々にどれだけ苦痛を与えてきたか。
こうした中で、1994年に米朝は、核問題の解決と関係正常化にまで至る包括的な合意に至り、2000年には南北首脳会談で南北の和解と平和・統一の方向も合意された。しかし、新たに成立したブッシュ政権は「悪の枢軸」規定を打ち出し、2002年、日朝ピョンヤン宣言が出された直後には新たな「ウラン濃縮疑惑」を持ち出し、米朝包括合意を一方的に反故(ほご)にした。
その後、米国は直接対話を拒否し続け、北朝鮮側は核保有を宣言、核実験実施にまで至ったのである。しかし、北朝鮮側は、米国の敵視政策が変わりさえすれば、検証可能な形で核を放棄すると繰り返し明確にしている。
朝鮮半島の平和と非核化の鍵は、形式はどうであれ、実質的な米朝交渉により、準戦時状態から恒久的平和体制へ移行し、朝鮮半島の非核化、米朝関係の正常化など、朝鮮半島問題の包括的な解決を実現することにある。
この点で、直接交渉を拒み続け、問題解決を先送りし、事態の深刻化を招いてきた米ブッシュ政権の責任はきわめて重大である。
(三)
現在、米国は国連安保理に武力行使も可能とする国連憲章第7章を盛り込んだ制裁決議案を提出した。北朝鮮船舶への臨検なども含んでいるとされている。安倍政権もこれに同調し、独自の追加制裁も実施の構えをとっている。
私たちは、北朝鮮への一切の制裁に反対する。このような制裁決議や、あるいは有志連合による臨検・海上封鎖などを許せば、ますます容易ならぬ事態を招くことになる。
東アジア情勢は、戦争か平和の道かを鋭く問う、まさに重大な岐路に立っている。
制裁ではなく、今こそ米朝交渉の実現を求める国際的世論を巻き起こすことが強く求められている。
資料② 【韓国運動体の記者会見文】
~平和と共存共栄の未来のため前向きの決断を促す~
米国は北に対する制裁を中断し、直ちに米朝対話を行え
9日、北の核実験を成功裏に行ったとの発表は、内外に大きな衝撃を与えた。
私たちは朝鮮半島、ひいては全世界で核兵器が廃絶され、互恵平等、平和共存の原則のもとで国際関係が発展することを心から願っている。また、その方法は明確に平和的で合理的でなければならないと考える。そのように見たとき、米朝間の葛藤と対決がついに核実験にまで激化してしまったということは、非常に遺憾なことだ。
米朝の葛藤と対決を解決する基本方向は、 94年のジュネーブ合意と2000年の米朝共同コミュニケ、9.19の六か国共同声明で合意された朝鮮半島の非核化実現と関係正常化、平和保障体制の構築によって問題を根本的に解決しようとするものだった。これらの合意が忠実に履行されていれば、平和は実現していただろう。
しかし、これら合意は履行されず、朝鮮半島は一触即発の緊張状態に包まれている。
このように合意が無力になったのは、米ブッシュ政権の敵対政策にその原因がある。北に対する敵視政策は、関係改善と矛盾する。
ブッシュ政権はこれまで一貫して北への敵対政策を強化し、特に 9.19六か国共同声明の発表直後には未確認のいわゆる「偽装紙幤」問題まで持ち出して、制裁を全面化しつつ軍事的脅威も強化させ、9.19共同声明を無力化させてしまった。
このような圧迫政策は必ず強い抵抗を呼び起こすように、合意を反故にし、力で北を屈服させようとした米国の強硬政策こそ、北の核保有という強硬な対応をもたらしたその基本要因となった。
今回の核実験後、米国と日本は安保理の追加制裁を扇動し、南側政府も対北政策の転換を示唆している。甚だしくは「軍事的制圧」のような極端な主張まで垣間見える。
しかし、このような強硬姿勢がむしろ北の強い抵抗を招くだけだというのは、すでに核実験という結果で確認されている。
米国は状況をさらに悪化させる一切の制裁を中断し、米朝の直接対話に積極的に乗り出すべきである。米国は対話で解決するとしながら、決して安保理の追加制裁や対北封鎖を行ってはならない。特に、船舶拿捕と強制臨検などの措置は、物理的衝突を招く深刻な挑発行為という点で、絶対あってはならない。
米国が真に非核化と平和を願うなら、北への圧迫政策を中断し、平和共存の政策に転換する決断を下すべきだ。
対北制裁のお先棒を担ぐと自認している日本は、状況悪化をけしかける行動を直ちに中断しなければならない。日本は北への強硬制裁を煽りながら状況をさらに激化させており、これを元に軍国主義的な右傾化を合理化している。
日本は自国の軍国主義的目的のために、東北アジア一帯の緊張を高める恥ずべき行動を直ちに中断しなければならない。
南側政府が対北政策の根本的変化を示唆したことは、状況への介入力を自ら放棄することのみならず、6.15南北共同宣言を全面破棄する立場となる。政府は米国の圧迫政策がもたらしたこの局面を冷静に見るべきであろう。
最近になって核実験を行った国の中で、唯一北のみを制裁の対象と規定する状況は決して合理的だとはいえない。朝鮮半島の平和と統一は、どちらか一方を武力と圧力で屈服させ実現されるものではなく、米日の覇権政策に追従することは大変愚かで危険千万なことだといわざるを得ない。
南側政府は開城工団の経済協力事業と金鋼山観光事業など、平和志向的で建設的な南北協力事業をも中断させようとする内外の好戦勢力の煽動に決して乗せられてはならない。
今こそ南北の和解協力政策を積極的に推進し、平和と統一という確固たる志向を内外に示すことこそ必要なときだ。
私たちは、朝鮮半島の平和を守る力は、わが民族にあることを信じて疑わない。
もしも米国が対北敵視政策や戦争脅威をあおり、状況をさらに悪化させるようならば、これを阻止粉砕するための炎は大きく燃え上がり、東北アジアにおいて何とか保っているその影響力さえも深刻な打撃を受けるだろう。
平和と共存共栄の未来のために、再度各国の賢明で前向きな決断を促すものだ。
2006年 10月 10日
<6.15南北共同宣言の実現と朝鮮半島の平和のための統一連帯>
苦難を受ける人々と共にする会/キリスト教市民社会連帯/南北共同宣言実践連帯/大韓民国臨時政府記念事業会/文学芸術青年共同体/民族問題研究所/民族民主烈士・犠牲者追悼連帯会議/民族自主平和統一中央会議/民族和合運動連合/民主労働党/民主社会のための弁護士委員会(民弁)・統一委員会/民主主義民族統一全国連合/民主化実践家族運動協議会(民家協)/反米女性会/(社)金九精神実践同胞連合/仏教平和連帯/非転向長期囚送還推進委員会/四月革命会/実践仏教全国僧家会/民家協良心囚後援会/自主女性会(準)/全国農民会総連盟(全農=農民連)/全国大学新聞記者連合(全大記連)/全国牧会者正義と平和実践協議会/全国民族民主遺家族協議会(遺家協)/全国民主労働組合総連盟(民主労総)/全国貧民連合(貧民連)/全国女性農民会総連合/祖国統一汎民族連合南側本部(汎民連)/祖国平和統一仏教協議会/カトリック統一後援会/青年統一のひろば/統一広場/統一を迎える文益煥牧師記念事業会/統一を迎えるハンシン連帯/韓国カトリック農民会/韓国労働社会研究所/韓国労働組合総連盟(韓国労総)/韓国大学総学生会連合(韓総連)/韓国青年団体協議会/韓民族生活文化研究所/21世紀コリア研究所/COREA平和連帯
資料③ 声明 北朝鮮のミサイル発射問題に寄せて
北朝鮮への一切の制裁に反対する
-誰が東アジアの平和の脅威なのか
2006.7.9日韓民衆連帯全国ネットワーク
(1)軍事行動にお墨付きを与える日米などの「国連制裁決議案」
7月5日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は7発のミサイル発射実験をおこなった。ミサイルは、いずれも日本海(東海)のロシア側公海に落下した。
これに対して日本政府は、直ちに万景峰号の6ヶ月間の入港禁止、北朝鮮当局の職員の入国禁止、日本の国家公務員の渡航自粛と民間に渡航の自粛を求めることなど9項目の「制裁」措置を発動した。さらに追加措置の構えを取るとともに、国連安全保障理事会に米英などと共同して「制裁決議案」を提出した。これに対しては中ロが反対姿勢を示している。
私たちは、この「制裁決議案」に強く反対するとともに、一切の「制裁措置」に反対する。
とりわけ、日本政府が作成したとされる国連「決議案」は、経済制裁や武力行使さえも可能とする国連憲章第7章に基づいて行動することを掲げた、とんでもない代物だ。
国連憲章第7章は、その第42条〔軍事的措置〕で、「安全保障理事会は、第41条(注・非軍事的措置)に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる」と規定している。
まして朝鮮半島では、先制攻撃戦略をとる米軍が「国連軍司令部」のシャッポを被り居座り続けており、依然として「撃ち方やめ」に過ぎない停戦状態のまま今日に至っているのである。
私たちは、このような「制裁決議案」を含む一切の制裁措置に反対する。
(2)誰が「緊張の原因」を作り出しているのか
私たちは、北朝鮮の核開発やミサイル発射実験にも強い憂慮を表明する。
だが、何よりも私たちは、朝鮮半島における南北分断と戦争の脅威の根源である米国の責任をあらためて強調し、強く非難するものである。
日本ではほとんど報道されていないが、この間にも、6月下旬からグァム近海で横須賀を母港とするキティホークをはじめ、ロナルド・レーガン、エイブラハム・リンカーンの3隻の空母機動部隊とB-2戦略爆撃機をはじめとする航空機280機などが参加した大規模軍事演習が行われ、すぐ続いて、6月末から7月末までハワイ沖で、米・日・韓・豪・加・ペルー・チリなどによる環太平洋合同軍事演習「リムパック」が大規模に行われている。「6カ国協議」の枠組みができている今なお、米韓合同軍事演習も繰り返し行われている。
在日米軍の再編、駐韓米軍の再編が、「不安定の弧」と米国が規定した広い範囲をターゲットにした機動性の確保を意図するものであると同時に、依然として対北朝鮮先制攻撃態勢の強化をも含んでいる。横須賀を母港とする米トマホーク艦が、常時ピョンヤンを射程に入れていることなども忘れてはならないだろう。これらが、北朝鮮側にとって大きな脅威として写っているとしても不思議ではない。
この間、米朝ジュネーブ包括合意を一方的に反故(ほご)にし、米朝二国間協議を拒否し続けて問題解決を先送りし、朝鮮半島の核問題の解決をめざす「6カ国協議」で時間稼ぎをして、北朝鮮体制の自動崩壊を目論んできたのが米・ブッシュ政権である。
昨年9月の「6カ国共同声明」は、検証可能な形で朝鮮半島の非核化を目指すことを確認し、同時に、米朝が「相互の主権を尊重し、平和裏に共存すること、二国関係に関するそれぞれの政策に従って関係正常化の措置を取る」ことや「直接の当事者は、適当な話し合いの場で、朝鮮半島における恒久的平和体制について協議する」等でも合意した。そして、これらを「公約対公約、行動対行動」の原則のもと双方が段階的に進めることを確認した。
しかし、この米朝ジュネーブ包括合意の6カ国版ともいうべき内容に内心不満な米・ブッシュ政権が、これを事実上反故にしようとして持ち出してきたのが「偽ドル疑惑」を口実とした金融制裁であった。こうしておきながら米当局は、「これは6カ国協議とは別問題であり、北朝鮮は無条件で6カ国協議に復帰すべき」などと主張している。だが、これ自体が「6カ国共同声明」に反する行為である。
問題は、「6カ国共同声明」を履行するか否かである。これなしには、6カ国協議も有名無実の場となる。そして、その履行の鍵は、まさに対立する当事者である米朝の交渉にある。
現在、米国内ですらブッシュ政権の「米朝直接交渉拒否」という名の無策が、事態をより深刻化させているとしてこれに対する批判が強まっている。
私たちは、何よりも米国が「6カ国共同声明」を履行し、速やかに米朝交渉を行うよう強く要求する。
(3)北朝鮮の「脅威」煽る政府・マスコミ-和解と平和の道をとれ
私たちは、今回日本政府が先頭に立って北朝鮮「脅威」論を煽り、ネオコンの一人である米国連大使・ボルトンらと手を組み、軍事行動まで選択肢とする「国連制裁決議案」を提出したことを強く非難し、その撤回を要求する。
日米軍事同盟の再編強化、日米軍事一体化を推し進め、いまや公然と現職閣僚が「ミサイル発射基地を事前に叩くことも自衛の範囲内」と言い放つまでに至っている。
米軍と一体となり戦争国家の道をひた走り、憲法9条改悪にまで至るプロセスを加速しているこうした日本の姿が、ひとり北朝鮮だけではなくアジアの人々に大きな憂慮を与えている。
私たちは日米軍事同盟の再編強化、日米軍事一体化と、そのための新たな治安維持法である共謀罪をはじめとする国内の戦争体制作りのための一切の法律・法案、憲法9条改悪の動きに引き続き強く反対する。
私たちは、日本のマスメディアの多くが、日本と朝鮮半島の歴史や朝鮮半島問題の本質は一切抜きにして、北朝鮮に対する一方的なバッシングを繰り返していることを厳しく批判する。
拉致問題を通じてあたかも日本人が一方的な「被害者」であるようにすり替え、ブッシュと同様「ならず者国家」としてのイメージを振りまくことで、「北朝鮮なら叩いて当然」といった雰囲気すら醸成してきた。7月5日、新潟西港に入港した万景峰号から下船した修学旅行生に心無い罵声が浴びせられ、東京・北区の朝鮮高校の塀に誹謗中傷のビラが貼られたとの情報も私たちのもとに寄せられている。
未だ日本が過去の加害の責任すら何らの清算もせず、国交正常化すらしてこなかったことこそが異常なことなのである。拉致問題もまた、日本の侵略・植民地支配と戦後の南北分断という朝鮮半島の不幸な歴史を背景として生み出された。朝鮮半島においては、戦前の日帝時代はもとより、戦後も「守る」べき平和な状態などなかったといっても過言ではない。日本は戦後、朝鮮半島の分断に加担することで、過去の清算を行ってこなかった。
いま何よりも、100年に及ぶ日本と朝鮮半島の不幸な歴史を直視し、その清算を速やかに行うことが必要である。拉致問題の解決も、その100年の歴史の清算の一環として速やかになされるべきだ。こうした立場からの日朝の対話・交渉がなされなければならない。マスメディアもこうした真の和解と平和に資することが求められているのではないだろうか。
私たちは、引き続き朝鮮半島の和解と平和、統一に寄与し、平和を求める韓国民衆、東アジアと世界の民衆と連帯して闘うものである。
資料④ 第4回六者会合に関する共同声明(仮訳) 外務省HPより
2005年9月19日 於:北京
第4回六者会合は、北京において、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、日本国、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国の間で、2005年7月26日から8月7日まで及び9月13日から19日まで開催された。
武大偉中華人民共和国外交部副部長、金桂冠朝鮮民主主義人民共和国外務副相、佐々江賢一郎日本国外務省アジア大洋州局長、宋旻淳大韓民国外交通商部次官補、アレクサンドル・アレクセーエフ・ロシア連邦外務次官及びクリストファー・ヒル・アメリカ合衆国東アジア太平洋問題担当国務次官補が、それぞれの代表団の団長として会合に参加した。
武大偉外交部副部長が会合の議長を務めた。
朝鮮半島及び北東アジア地域全体の平和と安定のため、六者は、相互尊重及び平等の精神の下、過去三回の会合における共通の理解に基づいて、朝鮮半島の非核化に関する真剣かつ実務的な協議を行い、この文脈において、以下のとおり意見の一致をみた。
1.六者は、六者会合の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した。
アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した。
大韓民国は、その領域内において核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの約束を再確認した。
1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。
朝鮮民主主義人民共和国は、原子力の平和的利用の権利を有する旨発言した。他の参加者は、この発言を尊重する旨述べるとともに、適当な時期に、朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した。
2.六者は、その関係において、国連憲章の目的及び原則並びに国際関係について認められた規範を遵守することを約束した。
朝鮮民主主義人民共和国及びアメリカ合衆国は、相互の主権を尊重すること、平和的に共存すること、及び二国間関係に関するそれぞれの政策に従って国交を正常化するための措置をとることを約束した。
朝鮮民主主義人民共和国及び日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることを約束した
。
3.六者は、エネルギー、貿易及び投資の分野における経済面の協力を、二国間又は多数国間で推進することを約束した。
中華人民共和国、日本国、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国に対するエネルギー支援の意向につき述べた。
大韓民国は、朝鮮民主主義人民共和国に対する200万キロワットの電力供給に関する2005年7月12日の提案を再確認した。
4.六者は、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を約束した。
直接の当事者は、適当な話合いの場で、朝鮮半島における恒久的な平和体制について協議する。
六者は、北東アジア地域における安全保障面の協力を促進するための方策について探求していくことに合意した。
5.六者は、「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していくために、調整された措置をとることに合意した。
6.六者は、第五回六者会合を、北京において、2005年11月初旬の今後の協議を通じて決定される日に開催することに合意した。
資料⑤ 声明 朝鮮半島の核問題に関する
6カ国共同声明と私たちの立場
2005年9月25日 日韓民衆連帯全国ネットワーク
9月19日、朝鮮半島の核問題に関する6カ国協議において初の共同声明が発表された。
私たちは、今回の6カ国共同声明が朝鮮半島の非核化および冷戦体制の最終的解体にとっての包括的な解決の一歩前進であると評価し、「『公約対公約、行動対行動』の原則に従い」、具体化プロセスを明確化して「これらを段階的に実施」するよう求めるものである。
(一)
共同声明は、第一項で6カ国協議の目標が、「平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化であることで一致」した。そして、この目標のため-
① 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、すべての核兵器および既存の核計画を放棄すること、核不拡散条約(NPT)及び国際原子力機関(IAEA)の保証措置に早期に復帰することを約束。
② 米国は、朝鮮半島において核兵器を有さず、北朝鮮に核兵器・通常兵器による攻撃、侵略の意図を有しないことを確認。
③ 韓国は、領域内に核兵器が存在しないことを確認し、92年(発効)の南北非核化共同宣言に従い核兵器の受領、配備を行わないことを再確認。同宣言は順守され、実施すべき。
④ 北朝鮮は、原子力の平和利用の権利を有する旨発言し、各国はこれを尊重するとともに適当な時期に軽水炉提供問題について議論をおこなう-ことで合意した。
私たちは、北朝鮮の非核化への決断と米国が攻撃・侵略の意図を有しないことを確認したことも同時に歓迎する。ここでは北朝鮮の非核化のみが一方的に確認されたのではない。米国および韓国が朝鮮半島において核兵器を持たないことも確認され、92年の南北非核化共同宣言の実施が確認された。
その92年の南北非核化共同宣言は、以下の規定をしている。
すなわち「朝鮮半島の非核化を検証」するため、南北のそれぞれが、「相手方が選定し双方が合意する対象に対して南北核統制共同委員会」が「査察」を実施することも含まれているのである。ところで、米軍は50年代以降、朝鮮半島に膨大な核兵器を持ちこんできた。南北間の非核化共同宣言の直前に、当時の米ブッシュ(父)政権が地上配備核の撤去を打ち出し、盧泰愚大統領(当時)が核兵器不存在を宣言するという経過があった。しかし、このことは検証を伴うものではなかった。論理的にいえば、これらの「検証(査察)」も必要ということになる。実際に、米軍基地の査察が可能かどうかは分からないが、何らかの形で担保される必要があるのではないか。
今回の6カ国共同声明が、マスコミ等で報じられる単なる「北朝鮮の非核化」のみではなく、南北および駐韓米軍をも対象とした「朝鮮半島の非核化」を目指していることに注意を喚起したい。
もう一つの重要な点は、この第1項目に北朝鮮の原子力平和利用の権利の尊重と軽水炉提供問題が明記されたことである。「発言」を「尊重する」とか、「適当な時期」に「議論をおこなう」等の表現で合意にこぎつけたわけだが、北朝鮮側に「既存の核計画の放棄」を求める以上、黒鉛減速炉に替わるエネルギー提供問題は不可欠である。NPTも南北非核化共同宣言も、原子力の平和利用を非核兵器保有国の権利として認めている。これに対して、米日両国は“北朝鮮が先に核放棄し、その後に軽水炉提供について議論する”と主張し、北朝鮮側は“米国が軽水炉を提供すれば、すぐにNPTに復帰し、IAEAとの保障措置協定を締結して履行する”と主張している。
この点でも「公約対公約」「行動対行動」の原則に基づき双方が段階的に同時行動をとる必要がある。かつての94年米朝ジュネーブ合意では、北朝鮮の黒鉛減速炉の凍結から解体へのプロセスと、米国による重油提供、KEDOによる軽水炉建設プロセス、米朝関係正常化がリンクされ、その段階的な実施が確認されていた。そして最終的に、「軽水炉対象の相当部分(注・主要核関連部分以外)が実現された後、そして主要核関連部品などが納入される前」に北朝鮮は「国際原子力機関と自己の核物質冒頭報告書の正確性および完全性の検証と関連する協議をおこない、それに従い機関が必要と認めるすべての措置を取ることを含む機関との保障措置協定(通報/403)を完全に履行する」と規定されていた。
6カ国共同声明は、11月初旬に第5回6カ国協議の開催で合意しているが、この第5回以降、「行動対行動」原則に基づく具体化が図られなければならい。
(二)
第二項では、6カ国が「国連憲章の目的および原則、並びに国際関係について認められた規範を順守」すること、すなわち国家関係において平和的共存等を順守することを確認するとともに、
① 朝米は相互の主権を尊重し、平和裏に共存すること、二国関係に関するそれぞれの政策に従って関係正常化の措置を取る。
② 日朝は、ピョンヤン宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交正常化のための措置を取る―ことが確認された。
いうまでもなく、東北アジアの冷戦体制を解体する上で、朝米・日朝の関係正常化は不可欠
である。
とくに日朝国交正常化に向けて、日本政府を含む6カ国であらためて原則が確認されたことの意義は大きい。この間、日本では政府・マスコミをはじめとして、日朝関係といえばあたかも「日本人拉致問題」の解決のみがすべてであるかのように喧伝されてきた。しかし、共同声明では何よりも日本の侵略・植民地支配の「不幸な過去の清算」を始めとして、「懸案事項を解決」することが確認されたのである。ときに「『日本の常識』は世界の非常識」と言われることがあるが、6カ国協議の過程における日本の孤立ぶりは、そのことを如実に示すものであった。もちろん、「懸案事項」の中には「日本人拉致事件」の解決も含まれるが、日朝間の100年に及ぶ不幸な過去の清算のなかでこの問題も解決すべきであり、「不幸な過去の清算」の一つとして速やかな解決が可能となるだろう。
共同声明発表後、日朝間の政府間協議の再開も合意されたが、私たちは、あらためてこれらの諸原則のもと速やかに日朝国交正常化を実現することを強く求めるものである。
(三)
共同声明の第三項では、6カ国は「エネルギー、貿易、投資の分野における経済協力を、二国間または多国間で推進」するとともに、米国を含む他の5カ国が北朝鮮へのエネルギー支援の意向を表明した。昨年の第3回6カ国協議の段階では、米国は「中国・ロシア・韓国・日本がエネルギー支援をおこなうことを容認」する(だが米国自身はおこなわない)―という虫のいい提案をおこなっていたが、今回は米国自身もエネルギー支援を表明する形になったことは、大きな変化である。
またこの項で、7月12日の韓国による北朝鮮への200万キロワットの電力供給提案が再確認された。しかし、“民族共助”としての韓国側提案は評価されるが、依然として米国の影響が色濃い韓国が電力供給をコントロール下に置くことになり、北朝鮮側にとっては主権に関わる問題として慎重な対応にならざるを得ないだろう。北朝鮮側が、軽水炉提供にこだわるのもまさにそれがエネルギー主権に関わっているからである。
いずれにせよ、北朝鮮の非核化と軽水炉提供までのつなぎとして、かつての米朝ジュネーブ合意に基づいておこなわれていた重油提供に替わる措置が速やかに履行される必要がある。
(四)
共同声明の第四項では、6カ国は「北東アジアの永続的な平和と安定のための共同の努力を約束」するとともに、「直接の当事者は、適当な話し合いの場で、朝鮮半島における恒久的平和体制について協議する」ことが確認された。いうまでもなく、朝鮮半島は未だ停戦協定のままの準戦時体制のもとに置かれている。停戦協定を恒久的な平和協定に転換することは急務の課題である。直接の当事者とはあくまで朝米両国である。場合によって停戦協定に調印した当事国である中国、停戦協定に調印しなかった韓国を含む協議形式が取られるかもしれないが、その場合でもあくまで朝米の恒久的平和協定締結問題が基本となるだろう。
また「6カ国は、北東アジアにおける安全保障面の協力を促進するための方策について探求」することが合意された。この中には、6カ国協議を将来においても東北アジア安保協議機構として存続させることなどが意図されているのかもしれないが、大国間のパワーポリティックスの場ではなく、日本を含む東北アジア非核地帯化の実現などが追求されなければならない。私たちは、そもそも非核を国是とする日本が、朝鮮半島の92年非核化共同宣言と同じ程度の水準を受け入れるべきだと考える。
(五)
共同声明の第五項では、6カ国が「『公約対公約、行動対行動』の原則に従い、前記の意見が一致した事項について、これらを段階的に実施していくために、調整された措置をとること」に合意した。あらためて、6カ国があくまでこの原則に立ち、共同声明の第六項で合意されている11月初旬の第5回協議以降、共同声明で合意された諸事項を具体化し、速やかな履行を求めるものである。
私たちは、平和を願う広範な日本の民衆とともに、韓国・朝鮮、アジアの人々と連帯し、日本の「戦争国家」化阻止、核も米軍基地もない平和な東北アジアの実現のために全力を挙げるものである。
資料⑥ 声明 「竹島の日」条例に反対する
「竹島(独島)」領有の侵略的歴史を直視して、
植民地支配の清算に踏み出せ
2005年4月1日 日韓民衆連帯全国ネットワーク
日韓両政府は日韓条約締結40周年を記念して、今年を「日韓友情年」と定めた。しかしそのさなか、韓国が実効支配している独島(日本名「竹島」)の領有をめぐる紛糾が広がった。私たちはこれを機会に、日本政府が「竹島」を領有するに至った歴史的背景を再確認し、日韓関係を根底から問い直し、過去の歴史清算に踏み出すよう要求する。
今回の紛糾の発端は、島根県議会が3月16日、「竹島の日」条例を制定し、「竹島の領有権の早期確立を目指した運動を推進する」としたことにある。なぜいま「竹島の日」なのか。ちょうど100年前の1905年2月22日、島根県が「竹島」の帰属を告示したからである。
島根県の告示は、同年1月28日の閣議決定に基づいている。その閣議決定で「竹島」と初めて命名し、それまでは「リヤンコ島」などと称していた。また、告示は県レベルにとどめ、これをただちに大韓帝国に通告せず、1906年4月になってわざわざ通告している。その間の1905年11月には、乙巳保護条約を強要して、日本は韓国の外交権を剥奪している。そのため、韓国は島根県告示の通告を受けても、何ら反論できなかった。こうした事実経過は、日本が「竹島」を日本領ではなく韓国領と認識していたことを示している。
閣議決定に至る経緯にも問題がある。1月の閣議決定は、前年の1904年9月に一事業者が明治政府に提出した「リヤンコ島領土編入並びに貸下願」に基づいている。『島根県誌』および『島根県竹島の新研究』(いずれも「竹島は日本領」と主張している)によると、事業者は「竹島」は韓国領と認識していたとされ、独占的利用のため、農商務省に帰属を確認したが、農商務省では分からず、海軍省に問い合わせたところ、水路部長が「帰属ははっきりしないが、日本の方が韓国より近いから、領土編入してしかるべきだ。領土編入願いをいっしょに出せば独占的に貸し下げてやる」と事業者を説得したとされている。海軍省の要請に従って、事業者が「願い」を出し、即日政府がこれを受理している。海軍省=軍部が、一事業者を利用して、韓国領土とみなしていた「竹島」の日本領有を確定してしまったことになる。
海軍省は1905年7月、「竹島」に望楼を建設している。折からの日露戦争の戦況を有利に進めるためである。日露戦争は朝鮮半島の領有権をめぐる戦争である。日本の「竹島」領有は、この事実からも朝鮮植民地支配に密接に関わっていることがうかがえる。1905年の「竹島」領有を肯定することは、日本軍国主義による朝鮮植民地支配を肯定するに等しい。
以上から、「竹島」=独島は植民地支配の過程で日本が韓国から奪ったことが明らかである。
こうした「竹島」領有の経緯を熟知する韓国民衆が、「竹島の日」条例の制定に対して、「日本による再侵略の始まりだ」との危機感を抱いたのも当然である。韓国内では、民衆レベルはもとより政府レベルでも、「竹島の日」制定に反発し、日本政府が朝鮮植民地支配を正当化しようとしていると警戒を強めている。3月24日には、盧武鉉大統領みずから、「竹島」問題と歴史教科書問題に対する日本政府の姿勢について、「侵略と支配の歴史を正当化する行為だ。再び覇権主義を貫徹しようとする意図を見過ごすわけにいかない」と厳しく批判している。
日本政府は韓国政府・民衆の声に真摯に耳を傾けなければならない。日本がいかに朝鮮半島を植民地支配していったのか、もう一度歴史を振り返るべきである。そして、植民地支配に対する謝罪と償いを、乙巳保護条約から100年を迎えたいまこそ、実行に移すべきである。謝罪と償いなくして、真の『日韓友情』が芽生えることも根付くこともありえない。
資料⑦ 日朝平壌宣言 2002年9月17日 平壌
小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。
両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。
1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。
2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。
3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。
4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。
双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。
資料⑧
声明 日朝首脳会談・ピョンヤン宣言に対する私たちの立場
真の和解と平和を基礎とした日朝国交正常化の実現をめざして
2002年9月20日 日韓民衆連帯全国ネットワーク
日朝国交正常化交渉の再開を歓迎する
9月17日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の首都・ピョンヤンで小泉首相と金正日国防委員長による初の日朝首脳会談が行われ、両首脳は日朝共同宣言(ピョンヤン宣言)に署名した。
宣言は、「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化関係を樹立することが、双方の基本的利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した」と高らかに謳い、第1項で、国交正常化を早期に実現するため、あらゆる努力を傾注することとし、10月中に日朝国交正常化交渉を再開することで合意した。
私たちは、まず両首脳が確認したこの方向と合意を支持し、歓迎する。
しかし同時に、共同宣言の各項の内容は、アジアの平和と朝鮮半島の統一に寄与し、朝鮮半島全体の人びととの真の和解を基礎とした日朝国交正常化の実現のためには、日本民衆のなお一層の努力が求められていること、新たな局面に立った闘いのスタートを要請している。
私たちは、この自覚の上に、さらに運動を前進させたいと考える。
日本政府に侵略・植民地支配への誠意ある謝罪と補償を求める
共同宣言は第2項で、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人びとに多大の損害と苦痛を与えたという事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びを表明」し、①財産および請求権を相互に放棄し、②国交正常化ののち日本側が経済協力を行うこと、③その規模と内容について正常化交渉で協議すること-が確認された。また在日朝鮮人の地位および文化財返還・補償についても正常化交渉で誠実に協議することが確認された。
私たちはこの間、村山談話の「反省とお詫び」があくまで韓国併合有効・合法論の立場に立つものであり、65年日韓経済協力協定方式の援用は、真の過去清算とはいえないことを繰り返し明らかにしてきた。今回、北朝鮮側が日本政府の固持し続けている立場に譲歩し、共同宣言の確認に至ったわけだが、問題は依然として残されたままであるといわなければならない。
私たちは、日本民衆の主体的責任において、日本政府に誠意ある謝罪と補償をおこなうよう要求するものである。とりわけ軍隊「慰安婦」、強制連行などによる被害当事者への国家の責任による謝罪と補償を強く要求する。
北朝鮮政府に拉致事件被害者への誠意ある対応を求める
共同宣言の第3項で、双方は、国際法を遵守し互いの安全を脅かす行動をとらないこと、また日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題について北朝鮮側はこのような遺憾な問題が再び発生しないよう適切な措置をとること-を確認した。私たちは、これを歓迎し誠実な履行を求めるものである。
とりわけ今回、金正日国防委員長自身から、北朝鮮の国家機関の一部が関与した日本人拉致事件や工作船問題が明らかにされ、拉致被害者の8人もの人びとの死亡が明らかにされたことは、日本社会に大きなショックを与えた。
拉致事件について私たちは、政府が認定してきた「8件11人」について、これまで「肉親が行方不明になっているご家族の心中は察するに余りあるが、明確な証拠がなく疑惑に過ぎない」と主張してきた。私たちは、結果として拉致事件の事実認識が誤っていたことを率直に認める。私たちは、この自らの事実認識の誤りを踏まえつつ、これらの問題について国交正常化交渉の中で、真相の解明や生存者の帰還等、北朝鮮の誠意ある対応を求めるものである。
同時に私たちは、今回の拉致事件の被害者の悲しみや怒りが、過去の強制連行や軍隊「慰安婦」とされた被害者の悲しみや怒りと同じものであると考える。日本政府・小泉首相にも、金正日国防委員長自ら拉致事件の国家関与を認め謝罪したのと同様に、あらためて過去、日本がおこなった強制連行、軍隊「慰安婦」等への国家関与を認め、誠意ある謝罪と補償、実態の解明をおこなうよう強く主張する。
また、この事件を口実として各地に広がる在日朝鮮人への暴力や嫌がらせを許すことはできない。
朝米はジュネーブ合意の履行を、日本政府は有事法制の廃案を
共同宣言第4項は、双方が、a.北東アジア地域の平和と安定のための協力、b.信頼醸成のための枠組み整備の重要性を確認、c.朝鮮半島の核問題の包括的解決のため関連国際法を遵守、d.核・ミサイル問題を含む安全保障上の諸問題について関係諸国との対話を促進し、問題解決を図る、e.北朝鮮側はミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も延長、f.日朝間の安全保障問題について協議していく-ことを確認している。
私たちは、これを基本的に歓迎し、次のように具体化することを求める。
まず何より、両国に生起するあらゆる事態を、対話を通じた平和的手段で解決することである。
同時に、焦点になっている核・ミサイル問題の解決については、米国との関係を抜きに語ることはできない。
私たちは、朝米両国に、あらためて94年の朝米ジュネーブ枠組み合意、2000年朝米共同声明を誠実に履行することを強く要求し、朝米両国が速やかに交渉を再開することを求める。この点で、日本政府は何よりも米国政府に北朝鮮との交渉再開を促し、上記二合意の履行を求めるべきである。
この間、米ブッシュ政権は、北朝鮮を「大量破壊兵器開発疑惑」を理由として「悪の枢軸」と名指しし、緊張を高めてきた。ブッシュ政権は北朝鮮に即時の核査察を要求しているが、これは何の根拠もない。ジュネーブ合意では「(北朝鮮に転換支援する)軽水炉対象の相当な部分が実現された後、そして主要核関連部品などが納入される前」に、北朝鮮はIAEAとの保障措置協定を完全に履行することが明記されている。
むしろ今、ジュネーブ合意で確認されている軽水炉の供与(供与期限2003年)が大幅に遅れ、やっと8月に起工式がおこなわれたばかりで完工予定は2008年、5年も遅延する見通しとなっている。このペースでいくと主要関連部品等が納入されるのは2005年と見られており、ジュネーブ合意に基づけば、査察はこの段階(軽水炉対象の相当な部分が実現された後、主要核関連部品が納入される前)でなされることになる。そして、北朝鮮も、ジュネーブ合意を誠実に履行することを繰り返し表明している。
ここでは、ジュネーブ合意の約束の期限を守らず、難癖をつけているのが米ブッシュ政権の側であることは明らかである。ジュネーブ合意に基づき、軽水炉へ転換する間の代替として米国が重油を提供しているが、ブッシュ政権にはこの遅延期間も引き続き円滑に重油を提供する義務がある。
さらに、ジュネーブ合意では軽水炉転換問題とともに、対北朝鮮経済制裁の緩和、米国が核兵器を使用せず核威嚇もしないことを保障すること、相互の連絡事務所の設置、そして相互の関心事の解決に伴い大使級の関係樹立までが確認されているのである。
問われているのは、「北朝鮮が査察を受け入れるかどうか」よりも、むしろその反対に、ブッシュ政権がジュネーブ合意を遵守するのかどうかである。
ミサイル問題では、北朝鮮側と米クリントン前政権は朝米ミサイル交渉をおこない、2000年秋には趙明禄・国防委第一副委員長、オルブライト国務長官のワシントン、ピョンヤン相互訪問がなされ、「米国大統領の訪朝」まで明記した共同声明が出された。これらの状況は、朝米が関係正常化に接近しつつあったことを示している。
これらの国際約束を無視し、産軍複合体など特定の利害集団の利益を代弁して、緊張激化と戦争拡大政策を推し進めているのがブッシュ政権である。それはアジアの平和にとって最大の脅威である。
朝鮮半島における戦争の危険を押し止めるためには、北朝鮮にもジュネーブ合意・2000年朝米共同声明の誠実な履行を求めることが必要だが、何よりも米ブッシュ政権にこそ、これまでの朝米交渉の経過を尊重し、その誠実な履行を要求する必要がある。これはアジアの平和を求める各国・民衆の共同の課題であり、日朝共同宣言の核心問題の一つである。
私たちは、日朝間の対話と信頼醸成、何よりも国交を正常化して緊張を緩和し、さらに周辺諸国間の和解・平和友好関係の促進へと波及させ、朝鮮半島の平和と統一、アジアとりわけ北東アジア地域の軍縮や非核地帯化などの恒久的平和に向けた展望を開くことが必要であり、日朝共同宣言のこの項目が、こうした方向に向かって実現されることを強く要求する。
そのためにも日本政府・小泉政権は有事法制を廃案にすべきであり、憲法9条を遵守し、平和外交を日本の対外政策の柱に据えなければならない。
私たちは、再開される日朝交渉を歓迎し、これを注視しながら、引き続き以上の方向実現のために闘うものである。
資料⑨ 米朝ジュネーブ枠組み合意
米国と朝鮮民主主義人民共和国間の合意枠組み
1994年10月21日
1994年9月23日から10月21日、米国政府および北朝鮮政府代表はジュネーブにおいて会談し、朝鮮半島核問題に関する全般的解決について交渉が行われた。
両国政府は、1994年8月12日の米朝間合意声明で示された目標を達成し、核のない朝鮮半島のもとでの平和と安全の実現を目指した1993年6月11日米朝共同声明の諸原則を支持していくことが重要であることを再確認した。
1.両国政府は、北朝鮮の黒鉛減速炉および関連施設を軽水炉施設(LWR)に転換することに協力する。
①1994年10月20日の米国大統領からの書簡に従い、米国は目標年である2003年までに約2000メガワットの発電総量を持つ軽水炉計画を北朝鮮に提供する準備を行う。
米国は、北朝鮮に提供する軽水炉計画を資金的に支え、計画を供与する国際事業体(an international consortium)を米国主導で組織する。米国は、国際事業体を代表して、軽水炉計画における北朝鮮との接触の中心を担う
米国は、国際事業体を代表して、本文書日付から6ヶ月以内に、軽水炉計画供与契約の締結に最善の努力を行う。契約締結のための協議は、本文書日付後、可能な限り早急に開始する。
必要な場合、米朝両国は、核エネルギーの平和的利用に関する協力のための二国間協定を締結する。
②1994年10月20日の米国大統領からの書簡に従い、米国は、国際事業体を代表し、軽水炉一号機が完成するまで、北朝鮮黒鉛減速炉およびその関連施設凍結によって生産不能になるエネルギーを補填する準備を行う。
代替エネルギーとしては、暖房と発電用の重油が供給される。
重油の供給は、引渡しスケジュールについての合意に基づき、本文書日付の3ヶ月以内に開始され、年間50万トンの割合で行われる。
③北朝鮮は、軽水炉の提供と暫定的な代替エネルギーに対する米国側の約束を受け入れる際、黒鉛減速炉とその関連施設の建設を凍結し、最終的にはこれらを解体する。
北朝鮮黒鉛減速炉と関連施設建設の凍結は本文書日付の1ヶ月以内に完全に実行される。
この1ヶ月間ならびに凍結期間中、国際原子力機関(IAEA)は、この凍結を監視でき、北朝鮮は、この目的に対してIAEAに全面的に協力する。
北朝鮮の黒鉛減速炉および関連施設の解体は、軽水炉計画が完了した時点で完了する。
軽水炉建設中、米国と北朝鮮は、5メガワット実験炉から生じる使用済み燃料を安全に貯蔵し、北朝鮮での再処理を行わない安全な形で処理する方法を協力して模索する。
④本文書日付後できるだけ速やかに、米国・北朝鮮の専門家たちによる二種類の協議を行う。
一つめの協議では、代替エネルギーおよび黒鉛減速炉から軽水炉への転換を話し合う。
もう一つの協議では、使用済み燃料の貯蔵と最終的な処理についての具体的な取り決めを協議する。
2.両国は、政治的、経済的関係の完全な正常化に向けて行動する。
①本文書日付3ヶ月以内に、両国は、通信サービスや金融取引の制限を含め、貿易、投資に対する障壁を軽減する。
②専門家レベルの協議で、領事その他の技術的問題が解決された後、それぞれの首都に連絡事務所を開設する。
③両国の関心事項において進展が見られた場合、米国・北朝鮮は、両国間関係を大使級の関係に進展させる。
3.両国は、核のない朝鮮半島に基づいた平和と安全のために協同する。
①米国による核兵器の脅威とその使用がないよう米国は北朝鮮に公式の保証を与える。
②北朝鮮は、朝鮮半島非核化に関する南北共同宣言の履行に向けた取り組みを一貫して行う。
③本合意枠組みは南北対話を促進する環境の醸成に寄与するものであり、北朝鮮は、南北対話に取り組む。
4.両国は、国際的核不拡散体制の強化に向けて協同する。
①北朝鮮は、核拡散防止条約(NPT)加盟国としてとどまり、同条約の保障措置協定の履行を認める。
②軽水炉計画供給に関する供与契約締結後、北朝鮮・IAEA間の保障措置協定のもとで、凍結の対象とならない施設に関して、特定査察および通常査察が再開される。供与契約締結までは、保障措置の継続性のためにIAEAが必要とする査察は、凍結の対象でない施設にも行われる。
③軽水炉計画の大部分が完了し、かつ重要な原子炉機器が提供される前の時点で、北朝鮮は、IAEAとの保障措置協定(INFCIRC/403)を完全に遵守する。これは、国内核物質に関する北朝鮮側第一回報告書が正確かつ完全であるかを確認するための協議後、IAEAが必要と考えるすべての措置を行うことを含むものである。
資料⑩ 南北共同宣言
祖国の平和的統一を念願する全民族の崇高な意志により、韓国の金大中大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正日国防委員長は、2000年6月13日から15日まで平壌で歴史的な対面と首脳会談をおこなった。
南北首脳は分断の歴史上初めて開いた今回の対面と会談が、お互いの理解を増進させ、南北間関係を発展させ、平和統一を実現させる重大な意義を持つと評価し、次のように宣言する。
1.南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした。
2.南と北は国の統一のため、南側の連合制案と北側の緩やかな連邦制案がお互い、共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。
3.南と北は、今年8・15に際して、離散家族、親戚訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、 人道的な問題を早急に解決していくことにした。
4.南と北は経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保健、環境など、諸般の分野の交流を活性化させ、互いの信頼を固めていくことにした。
5.南と北は以上のような合意事項を早急に実践に移すために、早い時期に当局間の対話を開催することにした。
金大中大統領は、金正日国防委員長がソウルを訪問するように丁重に招請し、金正日国防委員長は今後適切な時期にソウルを訪問することにした。
2000年6月15日
大韓民国大統領 朝鮮民主主義人民共和国国防委員長
金 大中 金 正日