無料ブログはココログ

カテゴリー「【書庫】声明・見解・関連資料」の31件の記事

2023年5月 4日 (木)

●岸田首相訪韓にあたっての過去清算共同行動の声明

 5月7日~8日の日程で岸田首相が訪韓することが決まりました。
 3月16日の日韓首脳会談で確認した「シャトル外交の再開」を軌道に乗せるという趣旨での訪韓だと言われています。しかし、聞くところによりますと、議題の中心は日米韓安保協力と経済協力の拡大になりそうだとのことです。

またしても、強制動員問題は後回し、被害者は置き去りです。

 これを前に、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動は、声明「岸田首相は自らの言葉で語れ植民地支配への反省、強制動員被害者への謝罪」を発しましたのでご紹介します。
**************************************************************************

2023年5月3日

       -岸田文雄首相の訪韓に当たって-
声明「岸田首相は自らの言葉で語れ 植民地支配への反省、強制動員被害者への謝罪」

                強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
                 (https://181030.jimdofree.com/

 岸田文雄首相が5月7~8日の日程で訪韓することが正式に発表されました。
 3月16日に尹錫悦大統領が来日し12年ぶりに日韓首脳会談が開催され、時をおかず今度は岸田首相が5年ぶりに訪韓するシャトル外交の再開です。
 ただ問題は、岸田首相が訪韓して首脳会談で何を議論するか、です。
 3月6日の韓国政府の「徴用工」問題の解決策発表とその後の日韓首脳会談は、実態として日米韓の安保協力体制の立て直し、強化を最優先にして進められていることは明白です。
 しかも、2018年の大法院判決以降最悪の状況に陥ったといわれた関係がようやく隣国同士らしい関係に戻ったとは言われますが、強制動員問題は依然として未解決のままです。大法院判決を受けた15名の原告のうち10名の原告遺族は「日帝強制動員被害者支援財団」の「肩代わり」を受け入れました。しかし、長期間裁判を闘った当事者である生存原告は全員「解決策」を批判し「財団」の給付を拒んでいます。

 岸田首相は3月16日の日韓首脳会談の際に「日本政府は1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」としましたが、過去の植民地支配について自身の言葉では反省と謝罪は述べませんでした。まして強制動員被害者へ慰労、謝罪の言葉をかけることもありませんでした。日韓政府間の関係が進展しても強制動員被害者が置き去りにされたままでは被害者も
韓国国民も納得できません。
 今回、岸田首相の訪韓の発表を受けて5月2日付の中央日報は「岸田首相が誠意ある呼応をする番だ」との社説を掲げましたが、これは韓国紙に言われて実行することではありません。

 今回の訪韓を機に岸田首相は自らの言葉で過去の植民地支配に対する反省と謝罪を表明すべきです。同時に、強制動員の歴史的事実を認め、被害者に直接謝るべきです。そうしてこそ強制動員問題解決に向けての一歩が踏み出されます。「確認した史実から教訓を得て、より良い明日を模索するという意味」(金大中)での未来志向の日韓関係が始まります。
 私たちは岸田首相の訪韓がそのような結果を生むことを求めます。

2023年3月19日 (日)

●朝鮮戦争停戦協定70年と私たちの課題(渡辺健樹)

日韓の宗教者と市民運動でつくる「日韓和解と平和プラットフォーム(PF)」の日本側会員交流会が3月18日に開かれ、それぞれのテーマの発題がなされました。その中の朝鮮半島平和キャンペーンについて日韓ネットの渡辺共同代表が「朝鮮戦争停戦協定から70年と私たちの課題」と題して発題を行いました。以下に全文を掲載します。

PDF版ダウンロード - e2978f3.18e697a5e99f93pfe4baa4e6b581e4bc9ae38080e6b8a1e8bebae58e9fe7a8bf.pdf

 

3.18日韓PF会員交流会            part① 朝鮮半島平和キャンペーン
朝鮮戦争停戦協定から70年と私たちの課題
           渡辺健樹(PF運営委員・日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)


   *本稿では大韓民国の略称は「韓国」、朝鮮民主主義人民共和国の略称は「朝鮮」としています。
 いま朝鮮半島では、日本からの解放と同時にもたらされた南北分断から78年。南北分断に起因する朝鮮戦争の停戦協定からも70年が経過しましたが、いまだ朝鮮戦争は終結していません。70年にもわたり「撃ち方やめ」に過ぎない停戦状態のまま置かれていること自体異常であり、これこそが朝鮮半島「危機」の根源です。朝鮮戦争を終結させ、停戦協定を平和協定に転換させることが必要です。

 再び緊張状態に回帰した朝鮮半島情勢  

 2018年の南北首脳による板門店宣言、史上初の米朝シンガポール首脳会談・共同声明は、朝鮮戦争の終結、朝鮮半島の平和体制と完全な非核化へ向かう歴史的な可能性をもたらしました。しかし米国は合意を履行せず、この直後の米韓軍事演習は中断したもののその後は規模を縮小した米韓軍事演習が繰り返されてきました。さらに一方的に朝鮮の核放棄のみを求める強硬政策をとり、また「米韓ワーキンググループ」を設置して韓国政権が勝手に南北関係を進めないようタガをはめました。そのため南北で合意された南北鉄道連結や金剛山観光再開など一歩も進まない状況となりました。
 米国でトランプからバイデンに政権が代わり、韓国でも文在寅(ムン・ジェイン)政権から尹錫悦(ユン・ソンヨル)政権へ政権交代し米韓合同軍事演習は拡大の一途をたどっています。昨年来、原子力空母や戦略爆撃機B1Bなどを投入した大規模演習が日本海や朝鮮半島周辺で常態化しています。これらは、朝鮮に対する核を含む軍事攻撃を想定したものであり、朝鮮指導部の「斬首作戦」まで想定したものです。
 こうした動きを見据えて、朝鮮側も2018年以来継続してきたICBMの発射実験や核実験のモラトリアム(猶予)の停止を宣言し、ICBMを含むミサイル実験を繰り返すなど、再び緊張激化の時代に入りました。

 繰り返されてきた米国の軍事威嚇と挑発こそが元凶

 こうした状況の中で朝鮮のミサイル発射実験に対しては、米韓当局はもとより日本政府もマスメディアも一方的に「北朝鮮の挑発」とし、米韓軍事演習は「挑発への対応」と正当化しています。
 しかし、それはまったく間違いです。朝鮮半島で軍事的威嚇と挑発を繰り返してきたのは米国です。では少し歴史的に見てみましょう。
 ①1953年7月に朝鮮戦争の停戦協定が結ばれ、すべての外国軍隊の撤退について協議することも勧告されていましたが、米国はこれをボイコットし唯一の外国軍隊として朝鮮半島に居座り続けてきました。
 ②さらに新しい武器を持ち込まないことを規定した停戦協定の一部を一方的に廃棄(56.9)し、戦術核兵器を大量に韓国に持ち込みました。(注・この時期は米軍政下に置かれた沖縄にもメースBなどの戦術核が大量に配備。72年の施政権返還で撤去されたが有事の核再持ち込みを密約)。朝鮮半島では、のちに南北間で朝鮮半島の非核化共同宣言(91.12)が出され地上核は撤去されたことになっていますが検証されていません。
 つまり朝鮮の「核疑惑」が取りざたされる以前から核威嚇がかけられていました。
 ③その後、1994年の米朝枠組み合意、2003年には6者協議(南・北・米・中・日・ロ)の枠組みができ、朝鮮半島の([北朝鮮の]ではない)非核化・米朝国交正常化・日朝国交正常化などを目指す6者共同声明(2005.9)なども出されましたが、その間も米韓軍事演習や朝鮮に対する「制裁」なども繰り返され、決裂に至りました。
 こうした過程で朝鮮は核・ミサイル開発を続けてきたことは周知のとおりです。
 朝鮮について筆者は、頭のてっぺんから爪先まで核で武装した猛獣(米国)を前にしたいわば「ハリネズミ」国家を目指していると見ています。

 日本が果たしてきた役割

 この中で日本は極めて犯罪的な役割を果たしてきました。
 ①そもそも朝鮮戦争は、日本の敗戦に伴う米ソの南北分割占領に起因しています。
 当時米ソは朝鮮における日本軍の武装解除のために38度線を境に分割占領しました。それはすでに始まっていた米ソ冷戦の利害から決められたものですが、日本の植民地支配がなければ南北分断もなかったのです。
 ヨーロッパでは侵略当事国であったドイツが東西に分割されましたが(これを肯定するわけではありませんが)、アジアでは日本でなく朝鮮半島が分割されたことに痛みを感じている日本人がどれだけいるでしょうか。
 米国が占領した朝鮮南部では米軍政が布かれ、日本の統治機構であった総督府の要員をかき集め、自主的な建国へのうねりを徹底して弾圧しました。やがて国連の名による南朝鮮だけの単独選挙を強行し(48.5)南北分断の固定化は決定的となっていきました。
 こうして朝鮮戦争勃発への素地が内包されていきました。
 ②朝鮮戦争は前述のように、朝鮮半島の人々が望まない南北分断に起因して起きたわけですが、その中で日本は準「参戦国」として重要な役割を果たしました。
 イ.日本全土が米軍の重要な兵站・出撃拠点となったこと。ロ.GHQの指令とはいえ日本は掃海艇部隊、戦車揚陸艦(LST)、軍事物資輸送などに動員(兵站作業従事者8000人、機雷などで57名犠牲も)。ハ.朝鮮戦争特需が日本の敗戦後の経済復興と「高度成長」のバネになった。
 特に日本の兵站・出撃拠点化がなければ米国の戦争遂行は不可能でした。この関係はその後のベトナム戦争や湾岸戦争、アフガニスタン戦争に至るまで続いています。
 また自衛隊の前身である警察予備隊が作られたのも朝鮮戦争の中でした。
 そして今や「敵基地攻撃能力」の保有や軍事費の倍増など大軍拡を進め、「戦争する国」の道をひた走っています。米日韓軍事同盟体制も現実となりつつあります。
 このようにいわば戦後の日本は朝鮮戦争の中で形作られたと言えます。

 私たちの課題 

 では今年、朝鮮戦争の停戦協定70年という節目にあたり私たちのなすべきことを考えたいと思います。
 ①朝鮮戦争を終結させ停戦状態から平和協定締結へ国際的圧力、世論喚起
 ②未だ敵対関係で一切の戦後処理もしていない朝鮮との国交正常化実現
 ③在日朝鮮人への(だけではないが)差別・ヘイトクライム・ヘイトスピーチの禁止
 ④憲法9条改悪に反対する。「敵基地攻撃能力」保有、軍事費倍増など戦争する国への大転換に反対。米国につき従い、事実上対中国・台湾「有事」への軍事介入宣言と朝鮮・ロシアへも軍事対応するに等しい安保関連三文書に反対。
  以上4項目を列記しましたがこの方向に沿いながら、さらに韓国の運動体の提案にも応え以下のように具体的に連帯していきたいと思います。
 イ.停戦協定70年に向けて各地で米韓演習中止を求める行動(東京では3/12.13に米韓大使館行動実施)、ロ.停戦協定締結70年目の7/27の前に東京で集会を開催、7/22数万人規模で予定されるソウルの行動に合流。ハ.署名、統一旗への寄書き、ニ.その他の多様な取り組み。
                                           以上

 

2023年3月 6日 (月)

●韓国政府の徴用工問題解決法に反対する過去清算共同行動の声明


【声明】歴史に目を閉ざし、被害者を置き去りにしたままでは解決にならない!

             2023年3月6日 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
                                             https://181030.jimdofree.com/

 本日、韓国政府・朴振外交部長官が「強制徴用大法院判決関連解決法」を発表しま
した。
 「解決法」として示したのは、①「日帝強制動員被害者支援財団」(以下、財団)が
2018年大法院判決の原告に判決金・遅延利子を支給する、②後続措置として、被害者の
苦痛を記憶し、継承していくために追慕、教育・調査・研究事業等を推進する、③判決
金・遅延利子支払いの財源は民間の自発的寄与などを通じて用意する、の3点。「今後
の計画」として、被害者・遺族に「解決法」への理解・同意を求めること、財団への財
源用意が確実に進むようにすることなどを打ち出しています。

 これを受けて、日本政府・林芳正外相は記者会見で、韓国政府の「解決法」を「日韓
関係を健全な関係に戻すためのものとして評価」すると言い、「この機会に、日本政府
は、1998年10月に発表された『日韓共同宣言』を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立
場を全体として引き継いでいることを確認」する旨を表明しました。

 被告企業は、この韓国政府の発表について「特にコメントする立場にない」とコメン
トしました。そして、改めて「請求権協定で解決済み」との見解を明らかにしました。

 韓国政府が日本政府に求めた「誠意ある呼応」は何ひとつ反映していません。これで
強制動員問題が解決したとは言えません。

 第1に、被告日本企業は謝罪もしていなければ、賠償支払いの表明もしていません。
被告企業は日本と韓国の裁判で、強制動員し、強制労働を強いた事実、その不法行為責
任を認定されています。にもかかわらず被害者に謝罪の言葉さえなく「コメントする立
場にない」と他人事のように振る舞っています。

 第2に、林外相の「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」
との言葉は、「韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えた」という19
98年宣言の核心的部分を欠落させています。日本政府は戦時中の朝鮮人強制動員につい
て第一に責任を負うべき立場にあるにもかかわらず「多大の損害と苦痛」を受けた強制
動員被害者に謝罪しなかったのです。

 このように韓国の財団に賠償支払いを肩代わりさせておきながら加害当事者は謝罪も
せず、1円の金も出さない、これで強制動員問題が解決するはずがありません。

 日韓両政府は、今回の「解決法」発表により、日韓関係が改善され、発展していくと
言っています。しかし、強制動員問題等を解決し、植民地主義を清算するプロセスを進
めていかない限り日韓の真の友好は深まらず、関係が発展していくはずがありません。

 今回の「解決法」について、生存被害者原告は受け入れられないとの立場を明らかに
しています。

 私たちは、被害者ととともに、
(1)日本政府・被告企業が強制動員の事実を認めて真摯に謝罪し、その証として償い
のために資金を拠出し、同じことを繰り返さないための措置を具体的に講ずること、

(2)そのために被害者原告及び遺族との協議の場を設けること、

----を求めて運動を続けていきます。

 

2022年3月 1日 (火)

●佐渡金山問題 日韓プラットフォームが緊急声明

日韓の市民運動と宗教者でつくる日韓和解と平和プラットフォーム(日本側運営委員会)は、3.1朝鮮独立運動103周年にあたり日本政府による朝鮮人強制動員・強制労働を無視した佐渡金山の世界遺産登録の推薦決定について下記の緊急声明を出しましたのでご紹介します。
------------------------------------------------------------------

<緊急声明>佐渡鉱山の強制連行・強制労働の歴史を否定してはならない
      ―「全体の歴史」を記録し登録することを求める―

●「全体の歴史」なしの世界遺産登録の申請

 わたしたち日本の市民・宗教者は、1919 年2・8独立宣言につづく3・1朝鮮独立運動の 103 周年を迎えるにあたり、東北アジアの和解と平和の課題という地平からその歴史的意義をかみしめます。そして同時にわたしたちは、3・1独立運動を“不逞鮮人による暴動”とする事実の隠蔽と歪曲がマスメディアを通して流布され、それがやがて人びとの間に朝鮮人に対する恐怖と差別の心理を生み出すようになり、1923 年関東大震災の朝鮮人虐殺という惨劇を招いたことも、記憶したいと思います。
 この過ちを二度と繰り返さないように、人間の良心と理性に従って、わたしたちは歴史の中で犠牲を強いられ闇の中に封じられてきた事実を徹底して解明し、歴史の教訓として記憶する責任を自覚します。
 岸田首相は今年1月 28 日、「佐渡島の金山」遺跡を、アジア太平洋戦争期の朝鮮人強制連行・強制労働を含む「全体の歴史」ではなく、江戸期に限定して、ユネスコ世界遺産登録に推薦する方針を表明し、続いて2月1日、閣議決定しました。しかしわたしたちは、そのことに対し、自らの良心にかけて断固として抗議します。

●7年前の国際約束を反故にしている日本政府

 2015 年7月5日、ユネスコ世界遺産委員会が長崎県の端島(別名「軍艦島」)を含む「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議するにあたり、日本の佐藤地ユネスコ代表部大使は、「日本は 1940 年代のいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である」と表明しました。世界遺産委員会は、その約束を条件に「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を決議したのです。
 そして日本政府は、2020 年3月に産業遺産情報センターを東京に設立しました。ところがそこに展示された説明においては、日本ユネスコ大使が世界遺産登録にあたって約束したことを反故にし、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史事実が伏せられたものとなっていました。
 このことを確認した世界遺産委員会は昨年7月 21 日、「強い遺憾を示す(stronglyegrets)」決議を全会一致で採択し、2022 年 12 月 1 日までに負の歴史を含む「歴史全体(full history)」を示すよう日本政府に勧告しました。にもかかわらず、日本政府は、この勧告後も改善にまったく取り組まずに放置しています。

●佐渡鉱山における強制連行・強制労働の歴史事実

   日本の朝鮮植民地統治時代、佐渡鉱山に朝鮮人が強制連行され過酷な労働を強いられたことは、『新潟県史 通史編8近代3』(1988 年)など、戦後の歴史研究によって明らかです。佐渡鉱山へ 1,519 人が強制動員されたこと、さらに未経験の過酷な坑内労働に従事させられていたこと、そして日本敗戦時には 1,140 人分の未払い金が残されていたこと。また、佐渡鉱山の 1943 年3月の報告書には、「移入者総計」1,005 人のうち、「死者」10 人、「公私傷/不良送還」61 人、「逃走」148 人、「現在員数」584人と記されています。逃走者が 14.7%にも上り、現在員数がほぼ半減していること自体、強制労働であったことを物語っています。
 このような歴史事実を隠蔽し否定することによって、世界遺産として登録しようとする日本政府の姿勢を、果たして世界の人びとは尊敬のまなざしをもって肯定し受け入れるでしょうか。
 二度にわたる悲惨な世界大戦の経験を通して、新たな戦争を抑止するために国際連合が発足し、そこで「世界人権宣言」が採択されました。そして、個人の人権の尊重なしには平和は作れないという精神に基づき、教育や文化、科学を通じて人びとの「心の中の平和のとりで」を築くためにユネスコが設立され、その憲章では「平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と謳われました。しかし、日本政府のこれまでの行為は、ユネスコ憲章をことごとく踏みにじるものです。

●“歴史戦”ではなく「歴史対話」を

 2020 年 1 月、新潟県選出の国会議員のブログに掲げられた「歴史戦を闘い抜く」という掛け声によって、過去を美化する政治家たちは佐渡鉱山の世界遺産登録問題を“歴史戦”と喧伝し、人びとを嫌韓ナショナリズムに扇動し、問題の本質と、ユネスコ世界遺産委員会からの批判的勧告から目をそらさせようとしています。わたしたちは、彼らの言う“歴史戦”という虚妄を断固として退けます。この問題の核心は、日本と韓国の“歴史戦”などではなく、日本という国および社会が歴史と真摯に向き合い、その上で、韓国およびアジアの人びとと対話することです。そのことは、かつて植民地支配という「悪事」をなした諸外国が今なお取り組んでいる課題なのです。
 たとえばドイツでは 2004 年6月、連邦議会は次のように決議しました。「ドイツはその植民地主義の過去について、一点の曇りもない明確な態度を示さなくてはならない」「ナミビアに対するドイツの特別の政治的・道義的責任を認める」「我々はここに、幾万もの犠牲者たちの尊厳と名誉を回復することに寄与したい。我々は、起こったことを、なかったものとすることはできない」と。
 わたしたちは、近現代の歴史に刻まれた「負の歴史」とは、人間にとって崇高なゆるしと和解、そして平和の精神に互いがたどり着くための試金石だと確信します。私たちは真実と和解への希望を見失わず、日韓における互いの記憶の共有によって修復される信頼の関係をめざす「歴史対話」の道を、韓国の宗教者と市民社会とともに貫きつづけ
ます。

2022 年3月1日

日韓和解と平和プラットフォーム 日本運営委員会
【共同代表】 小野文珖(宗教者九条の和)/髙田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動)/野平晋作(ピースボート)/光延一郎(日本カトリック正義と平和協議会)
【運営委員】 飯塚拓也(日本キリスト教協議会東アジアの和解と平和委員会)/石川勇吉(愛知宗教者平和の会)/小田川興(在韓被爆者問題市民会議)/北村恵子(日本キリスト教協議会女性委員会)/金性済(日本キリスト教協議会)/白石孝(日韓市民交流を進める希望連帯)/平良愛香(平和を実現するキリスト者ネット)/武田隆雄(平和をつくり出す宗教者ネット)/中井淳(日本カトリック正義と平和協議会)/比企敦子(日本キリスト教協議会教育部)/飛田雄一( 神戸青年学生センター)/渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク)/渡辺美奈(「女たちの戦争と平和資料館(wam)」)
【事務局】 くじゅうのりこ(東アジアの和解と平和ネットワーク)/佐藤信行(外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会)/潮江亜紀子(外国人住民基本法の制定を求める神奈川キリスト者連絡会)/藤守義光(日本キリスト教協議会)/昼間範子(日本カトリック正義と平和協議会)/柳時京(日本聖公会大阪川口基督教会)/渡辺多嘉子(平和を実現するキリスト者ネット)

◆連絡先◆〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 2-3-18 日本キリスト教会館 24 号 NCC気付
   電話(03)6302-1919 FAX(03)6302-1920 Email <jk.peaceplatform@gmail.com

 

2021年6月11日 (金)

●【声明】元「徴用工」への6.7ソウル中央地裁反動判決を糾弾する!(過去清算共同行動)

6月7日のソウル中央地裁の反動判決を糾弾して強制動員問題解決と過去清算のための共同行動が声明を出しましたので紹介します。

             声 明
強制動員被害者らの請求を却下した6.7ソウル地方法院の反動的判決を糾弾する!

 6月7日、強制動員被害者・遺族ら85名が日本製鉄・三菱重工・住石ホールディングス等日本企業16社を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、ソウル地方法院(キム・ヤンホ裁判長)は原告の請求を却下する判決を出した。
私たちは、強制動員被害者らの訴えを一顧だにせずソウル地方法院が出したこの反動的な判決を糾弾する。

 今回の判決は、以下の点で、被害者の人権回復の視点を欠き、また、脱植民地主義の流れに逆行する反動的な判決である。

 第1に、本訴訟を審理した裁判長は、被害者原告が求めた弁論の機会を一切認めず、被害事実等の訴えに全く耳を傾けることなく法理論だけで請求を却下した。国連自由権規約第2条第3項(b)は、権利・自由を侵害された者の救済に向けて、「司法上の救済措置の可能性を発展させること」を締約国に求めている。しかるに、今回の訴訟の審理、判決は、司法に課されている人権侵害被害者の救済義務に背を向けるものであり、到底認めることはできない。

 第2に、判決は強制動員被害者らに実体として損害賠償請求権があることを認めながら、日韓請求権協定で財産・請求権問題は「一括処理」され、「完全かつ最終的に解決」されたので、原告が請求権を行使することは制限されると言って、請求を却下した。このような判断は、反人道的な不法行為の被害者の権利回復の道を塞ぎ、同時に加害当事者を免責する法理であり、人権規約、国際人権法の発展に反するものでしかない。

 第3に、本判決は、強制動員被害者の慰謝料請求権を認め、被告日本企業に賠償を命じた2018年10月30日大法院判決を、ウィーン条約第27条、禁反言の原則に反するものであると言って、自らを合理化している。ただ、同条約第27条は「どの当事国も、条約の不履行に対する正当化の方法として、その国内法規定を援用してはならない」と規定しているのみである。他方、大法院判決は請求権協定を否定したものではない。反人道的な不法行為に対する慰謝料請求権は請求権協定に含まれないと判断しただけである。また、大法院判決は「植民地支配の不法性を認める国内法的な事情」からのみ出されたものでもない。2001年ダーバン宣言は、「植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。」(パラグラフ14)と規定している。植民地支配が「合法」、「適法」などという主張はもはや通らない。また、植民地主義によって「苦痛がもたらされた」被害者の人権は回復されなければならない。このことを、裁判長は知るべきである。

 第4に、判決は、被害者の請求が認められ、それが強制執行されたならば、対米、対日関係が悪化し、「国家の安全保障と秩序維持という憲法上の大原則を侵害する」と述べ、「権利濫用」とまで言う。しかし、本訴訟はあくまで強制動員被害者が加害日本企業を訴えた民事訴訟である。それにも拘わらず判決は、「国家安保」「秩序維持」を前面に出して被害者の人権回復の道を封ずる。さらには、請求権資金によって「漢江の軌跡」がもたらされたとまで言って、暗に「だから我慢せよ」と被害者を黙らせようとする。許しがたい判決である。

 上記のように、今回の判決は、強制動員被害者の人権救済よりも、「自由民主主義という憲法的価値を共有する」日本との関係、韓米同盟を重視、優先する極めて国家主義的な判決である。キム・ヤンホ裁判長は、いまだに冷戦下の1965年に生きている感覚で判決を書いたとしか思えない。
   これは国際人権の発展、脱植民地主義の世界史的流れに逆行する反動的な判決である。このような判決は、上級審において必ず否定されねばならない。
   それだけでは済まない。2018年10月30日、11月29日、被害者の請求が認められ加害企業(日本製鉄、三菱重工)に賠償が命じられた大法院判決から既に2年半以上が経過した。しかし、被害者の人権はいまだに回復していない。それどころか勝訴判決を得ながら謝罪も賠償も受けることなく亡くなった被害者も存在する。このような状況を一日も早く打開し、強制動員被害者の権利回復、強制動員問題の解決が図られねばならない。

   日本政府は、この判決を受けて、「懸案の解決のため、韓国が責任を持って対応していくことが重要だ。韓国からの具体的提案を注視している」(加藤官房長官)と述べた。自らには何の責任もないかのようである。被告企業のひとつである日本製鉄は「妥当な判断である」とコメントした。2018年10月30日の大法院判決には服さず、自分たちに都合の良い判決は肯定する。被害者の人権は二の次で自分たちの利益しか眼中にないのであろう。私たちはこのような無責任を認めることはできない。
 

   私たち、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動は、韓国の強制動員被害者の人権回復のために、被害者、支援団体などと連帯し、さらに運動を広げていく決意を表明する。

             2021年6月10日
強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
住所:〒230—0062 横浜市鶴見区豊岡町20番地9号
 サンコーポ豊岡505号 全造船関東地協労働組合気付
e-mail:181030jk@gmail.com
URL:https://181030.jimdofree.com/

 

2021年5月27日 (木)

●【韓国サンケン労組支援闘争】闘う仲間の不当逮捕と家宅捜索に抗議する ‼

5月22日、韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会と韓国サンケン労組を支援する会は、会員を不当に逮捕し、自宅や関係組織への家宅捜索を行うなどの弾圧に抗議する声明を発表しました。(以下声明全文)

 

             【抗 議 声 明】

  5月21日午前10時過ぎ、埼玉県警により不当な家宅捜索が行われ、逮捕された仲間の勾留期日がさらに10日延長されました。労働争議に介入し不当な家宅捜索を行った警察当局、勾留延長決定を行ったさいたま地裁、虚偽で通報したサンケン電気本社に、こみ上げる怒りを抑えることができません。ここに煮えくり返る怒りをもって強く抗議し、勾留されている仲間を直ちに釈放することを再度要求します。
 
  5月10日サンケン電気は、埼玉県新座市所在のサンケン電気本社の門前で話し合いを求めていた私たちの仲間を警察に通報し、新座署はありもしない暴行容疑で仲間を逮捕するでっち上げを行いました。そして5月21日午前10時頃、「サンケン労組を支援する会」の連絡先となっている中小労組政策ネットの事務所と、逮捕された仲間の自宅への家宅捜索を行いました。新座署公安課は、病気療養中で具合が悪く立っているのがやっとでドア越しに出て来られない家族の健康状態を配慮するどころか、強引にも自宅ドアの鍵穴2つを破り、13人が踏み込みました。そして、病人のいる部屋で延々と6時間以上にもわたる捜索を行い、チラシや家にあった書類、文書綴りだけでなく、旅券や健康保険証まで押収したのです。押収物にはUSBメモリ16本を含む12点、70枚以上の書類、中には「事件」と無関係の病気で動けない家族の物も含まれていました。中身が分からないからと持って行った押収品の目録には「本件犯行に至る組織関係に関係あると認められるその他各種文書類」などと記載されています。

  私たち「韓国サンケン労組を支援する会」と「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」は昨年7月に韓国サンケンの会社解散と労働者全員解雇の決定を一方的に通告したサンケン電気本社に対し、コロナで訪日できず、韓国サンケンの会社前でビニールのテントを張り24時間体制の交替での座り込みを続ける韓国サンケン労組を応援する意味で、サンケン本社門前に立ち非暴力で平和的に話し合いを求めるスタンディングを行ってきていました。

  サンケン電気は2016年にも韓国サンケン労組組合員全員に解雇通告を行い、組合員たちが来日し229日間の「遠征闘争」を繰り広げ解雇撤回と原職復帰を勝ち取りました。その際交わされた合意書には「今後重大な雇用問題が発生した際には労働組合と協議し、合意のもとに行う」ことが取り決められています。それにもかかわらず、サンケン本社経営陣はその約束を破り、突然、一方的に、しかもホームページ上で会社解散と労働者全員解雇という重大な問題を通告したのです。サンケン電気は韓国で労働組合のある韓国サンケンを潰しておいて、こっそり別会社を買収して巨額を投資し着々と韓国での営業拡大を狙い、話し合いを求める韓国の組合員を無視し続けるばかりか、門前に立つ私たちに対しても警備員が阻止するだけで誰も出て来ません。

 この状況は既に韓国で、公共テレビ放送のKBSやMBCテレビや各種メディアで何度も取り上げられており、韓国・慶尚南道(キョンサンナムド)昌原(チャンウォン)市にある馬山(マサン)輸出貿易地域で各種優遇策のもと利益を上げ、労働者を解雇したサンケン電気には「食い逃げ日系企業」と批判が高まっています。ソウルの日本大使館前でもスタンディングが行われているところから、徐々に一企業の問題から政治問題化しつつあるのです。

  実際、昨年末に韓国の国会議員が連名でサンケン電気本社と厚生労働省や経済産業省、後日外務省にも書簡を送り、地元の慶南道知事、昌原市長、道議会、市議会からも廃業撤回を求める書簡がサンケン電気に送られていますが、サンケン電気は無視し続け、2021年1月には韓国サンケンを廃業に追い込みました。

 韓国国内の批判や日本国内の幅広い連帯運動に危機感をもったサンケン電気が弾圧を加えようと警察に連絡し、埼玉県警がこれに手を貸し、さいたま地裁はきちんと調べもせずに勾留を延長させました。サンケン電気本社は6月の株主総会まで私たちの抗議行動を終らせ仲間を釈放させたくないとして、警察や裁判所の力を借りて弾圧を加えてきたのかもしれませんが、今回のやり方は火に油を注ぎ、怒りと連帯はさらに強まっています。

  私たちは連帯を強めサンケン電気本社への抗議行動を続け、弾圧を糾弾しつつ、サンケン本社が話し合いに応じることを再度強く要求します。
また、労働問題に介入した埼玉県警新座警察とさいたま地裁に断固抗議し、不当に勾留している仲間を即刻釈放することを強く求めます。

2021年5月22日
韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会
韓国サンケン労組を支援する会

 

2021年5月25日 (火)

●菅内閣の強制連行・強制労働に関する4.27国会答弁の撤回を求める声明

過去清算共同行動のHPはこちら⇒ https://181030.jimdofree.com

声明文・解説ダウンロード - e2978fe38090e5bcb7e588b6e980a3e8a18ce383bbe5bcb7e588b6e58ab4e5838de5958fe9a18ce380914e383bb27e694bfe5ba9ce7ad94e5bc81e381abe5afbee38199e3828be5a3b0e6988e.pdf

 

 菅内閣の強制連行・強制労働に関する4・27国会答弁の撤回を求める声明
   - 朝鮮人強制連行・強制労働の歴史を歪曲・否定することはできない!-

                               2021年5月24日
                       強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
                     
   第204回国会で、2021年4月16日に馬場伸幸衆議院議員が「『強制連行』『強制労働』という表現に関する質問主意書」を出した。それに対して、4月27日、菅内閣は閣議決定のうえ、「答弁書」を出した。
   馬場議員の質問主意書は以下の3点を尋ねるものだった。
   質問①-朝鮮半島から日本に来た労働者には、募集、官斡旋、徴用など様々な経緯で来た人がいるので、一括りに「強制連行」と表現するのは適切ではないのではないか?
   質問②-国民徴用令で来た人を「強制連行」というのはおかしいので、「徴用」と言うべきではないか?
   質問③-戦時中に動員されて日本に来た朝鮮人労働者は、強制労働させられたのか?

   この質問に対し、政府はつぎのように答弁した。
 質問①に対する答弁-朝鮮半島から内地に移入した人々の移入の経緯は様々であり、一括して「強制連行された」というのは適切ではない。
 質問②に対する答弁-国民徴用令に基づいて徴用された人びとについては、徴用という。
 質問③に対する答弁-強制労働に関する条約には該当しないので、強制労働と言うのは適切ではない。

   この政府答弁は朝鮮人強制連行・強制労働の歴史を歪曲・否定するものであり、誤りである。
 第1に、これまで政府は、戦時下の「労務動員計画」に基づく朝鮮人労務動員について、「募集、官あっせん、徴用など、それぞれ形式は異なっていても、すべて国家の動員計画により強制的に動員した点では相違なかった」(参議院予算委員会、1997年3月12日)と述べていた。今回の答弁は何の根拠も示さずに、これまでの学会の成果に依拠しての政府の認識を変更している。それは政府の動員計画によって朝鮮人の強制的な連行・労働がなされたという歴史を否定するものである。
 第2に、国民徴用令に基づく労働は、強制労働以外の何ものでもない。「徴用」とは「戦時などの非常時に、国家が国民を強制的に動員して、一定の仕事に就かせること」である(「デジタル大辞泉」、小学館刊)。それを「国民徴用令に基づいて徴用された人びとについては、徴用という」などと言うのは、徴用が強制労働であることを隠蔽する行為である。
 第3に、国際労働機関(ILO)条約勧告適用専門家委員会は、1999年3月の報告書で「本委員会はこのような悲惨な条件での、日本の民間企業のための大規模な労働者徴用は、この強制労働条約違反であったと考える」と戦時の朝鮮人動員を強制労働と認定している。政府の答弁はこのILOによる認定に反するものである。
   朝鮮人強制動員の歴史の否定をねらう者たちは、今回の質問主意書と政府答弁書により、朝鮮人労務動員が「強制連行」でも「強制労働」でもなかったと宣伝したいのだろう。また、歴史教科書から朝鮮人強制動員の記述を消すことを狙っているのであろう。しかし、歴史の事実を歪曲・否定することはできない。歴史教科書から朝鮮人強制動員の記述を削除するのではなく、侵略と植民地支配の歴史を正確に記し、次世代に語り伝えるべきである。そして、重大な人権侵害を受けた強制動員被害者を直ちに救済し、その権利の回復を図るべきである。
   朝鮮人強制動員の歴史を歪曲・否定する政府答弁は誤りである。われわれは、この答弁の撤回を求める。

(参考)
質問主意書https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a204098.htm 
答弁書https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b204098.htm 

 

            【解 説】

1. 戦時の労務動員計画に基づく募集、官斡旋、徴用による動員は強制連行である 〔答弁①批判〕

 日本政府は中国で全面侵略戦争を起こすと、「総力戦」態勢の構築をねらって国家総動員法を制定した。1939年以降、「労務動員計画」を閣議決定し、朝鮮半島から多数の労働者を強制連行し、強制労働させた。このことは歴史学の常識であり、各種の歴史辞典にも明記されている。それゆえ、政府は過去、国会において自民党議員から質問が出された際に、次のように答弁している。
 
★参議院予算委員会、1997(平成9)年3月12日
○政府委員(辻村哲夫君) 
…一般的に強制連行は国家的な動員計画のもとで人々の労務動員が行われたわけでございまして、募集という段階におきましても、これは決してまさに任意の応募ということではなく、国家の動員計画のもとにおいての動員ということで自由意思ではなかったという評価が学説等におきましては一般的に行われているわけでございます。
そのような学説状況を踏まえまして、教科書検定審議会におきましては、この強制連行というもとにおきましても、この募集段階の写真につきましてもこれを許容したという経緯でございます。
○政府委員(辻村哲夫君)
…強制連行の中には、先ほど申しましたように、募集の段階も含めましてこれを評価するというのが学界に広く行き渡っているところでございます。
 例えば、ここに国史大辞典を持っておりますが、募集、官あっせん、徴用など、それぞれ形式は異なっていても、すべて国家の動員計画により強制的に動員した点では相違なかったというような、歴史辞典等にも載せられているところでございまして、私どもはこうした学界の動向を踏まえた検定を行っているということでございます。
  
 また、実際に中学、高校の歴史教科書においても、戦時中に日本が朝鮮人、中国人を強制連行し、強制労働させた事実が記述され、それは文部省の検定を通っている。例えば、高校の日本史教科書では、以下のように記述されている。
  ★『高校日本史A』新訂版 実教出版 (2016年3月18日検定済、2019年1月25日発行)
「第5章 15年戦争と日本・アジア」の「第6節 アジア太平洋戦争(太平洋戦争)」での「大東亜共栄圏の実態」という項での記述(125頁)。

 朝鮮・台湾では、日中戦争開戦後から皇民化政策を実施した。神社参拝や日本語の使用を強制し、日本軍の兵力不足を補うために志願兵制度をつくり、さらに徴兵制を実施した。とくに朝鮮では、日本式の氏を創り名前を改める創氏改名、天皇への忠誠を誓う皇国臣民の誓詞の斉唱など、朝鮮人の民族性を否定する政策をおこなった。経済面では国家総動員法などを適用し軍需生産をおこない、国民徴用令を適用して、多くの人々を工場や炭鉱などへ強制的に連行した。」(⑥)
「⑥ 労働力不足を補うため、1939年からは集団募集で、42年からは官斡旋で、44年からは国民徴用令によって、約80万人の朝鮮人を日本内地や樺太・アジア・太平洋地域などに強制連行した。また同期間中に415万人の朝鮮人を朝鮮内の鉱山や工場に、11万人を軍隊内での労務要員に強制連行した。さらに約4万人の中国人も日本などに強制連行した。過酷な労働のなかで多くの死者を出し、秋田県では中国人の蜂起もおこり、約420人の死者を出した(花岡事件)。

 このように政府は過去の国会答弁で、「一般的に強制連行は国家的な動員計画のもとで人々の労務動員が行われたわけでございまして、募集という段階におきましても、これは決してまさに任意の応募ということではなく、国家の動員計画のもとにおいての動員ということで自由意思ではなかった」という評価・学説等を肯定し、認めているのである。
 そして、こうした学説や学会の動向を踏まえて文部科学省は教科書検定を実施してきた。その結果、上記のように記述した実教出版の歴史教科書も検定を通っているのである。
 政府はこのような国会答弁や歴史教科書の記述を否定することはできなかった。それゆえ、答弁書では、政府は「強制連行はなかった」と書くことはできなかったのである。日本に渡って来た「経緯は様々で」あったから、それを一括りに「強制連行」というのは適切ではないと曖昧な表現を用いたのである。
 今、強制動員で問題になっているのは、日本の裁判所も強制労働の事実を認定し、韓国大法院が日本の強制動員企業の不法行為責任を認定し、その被害者に対して企業に賠償せよという判決が出ていることである。強制動員被害者の人権回復をいかに図るのかが問われているのである。
 馬場議員は、一括りに強制連行というのは適切ではないという政府答弁を引き出して「満足」しているのかも知れない。しかし、それでは強制動員被害者の尊厳は回復されない。日本の国会議員としての責任を果たしているとは言えない。
 なお、馬場議員は、この「質問主意書」と同日に、「『従軍慰安婦』等の表現に関する質問主意書」を提出した。これに対しても政府は「答弁書」を出した。その「答弁書」には、「『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招く」、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」と書かれていた。すると「産経新聞」(4.28付)は、「政府が閣議決定の形で『従軍慰安婦』の表現を不適切とする姿勢を明確に打ち出したことで、近年は教科書検定のたびに記述の妥当性が議論となっていた『従軍慰安婦』問題に一定の決着がみられた」などと報道した。
 答弁をふまえ、検定済教科書の「慰安婦」記述を「訂正」させる動きも現われている。「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問は、「慰安婦」問題と同じ趣旨で出され、教科書記述への介入を狙っているとみられる。だが、歴史教科書から朝鮮人強制動員の記述を消すことは歴史の否定であり、許されないことである。

2.国民徴用令による労働は強制労働である  〔答弁②批判〕

 国家総動員法、国民徴用令に基づいて行われた動員=「徴用」は、日本人、朝鮮人に等しく実施されたのだから、強制動員ではない、強制労働とは言わない、などという論理は通用しない。
 まず、辞書を見てみよう。「精選版 日本国語大辞典」(小学館)では、「徴用」について、次のように説明している。
 ① 物品を強制的にとりたてて使用すること。徴発して用いること。② 戦時などに際し、国の公権力で国民を強制的に動員し、一定の業務に従事させること。③ 召し出して、官職につけること。 
 また、「デジタル大辞泉」(小学館)でも、以下のように説明している。
 戦時などの非常時に、国家が国民を強制的に動員して、一定の仕事に就かせること。また、物品を強制的に取り立てること。「兵器工場に徴用される」「車両を徴用する」。
 どの辞書でも、人の「徴用」については、公権力(ないし国家)が国民を強制的に動員し、一定の業務に就かせることと説明している。「徴用」とは、強制動員、強制労働を意味する用語なのである。
 続いて、「徴用」の根拠法である国家総動員法の条文をみよう。「徴用」について規定しているのは第4条である。
 第四條 政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣民ヲ徵用シテ總動員業務ニ從事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ
 この「徴用」を拒んだときはどうなるか。それについては第36条に規定がある。
 第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
 一 第四條ノ規定ニ依ル徵用ニ應ゼズ又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事セザル者
 「徴用」を拒んだときには、1年以下の懲役または千円以下の罰金が科されるのである。つまり、懲役ないし罰金という「強制」、圧力をもって動員し、労務に従事させるというのが「徴用」なのである。
 さらに、国際労働機関(ILO)の「強制労働条約」(1930年、日本は1932年批准)は、「強制労働」について次のように規定している。
 第二条
 一 本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ
この規定に照らせば、日本が戦時下で行った「徴用」は、まさに強制労働そのものである。

 このように、徴用とは強制動員による強制労働であり、馬場議員の「国民徴用令で来た人を『強制連行』というのはおかしい」という言い方は通用しない。政府による、国民徴用令に基づいて徴用された人は徴用というとする答弁は、徴用のもつ本質(=強制労働)を隠蔽する表現である。

3.国際労働機関(ILO)は、戦時の朝鮮人動員・労働を強制労働条約違反と認定している  〔答弁③批判〕

 政府は、「『募集』、『官斡旋』及び『徴用』による労務については、いずれも同条約上の『強制労働』には該当しない」と答弁しているが、これは偽りである。
 なぜならば、国際労働機関(ILO)の条約勧告適用専門家委員会は、1999年3月の「年次報告書」で、戦時中に日本が行った「民間企業のための大規模な労働者徴用は、強制労働条約違反であった」と認定しているからである。
 ILOに対し、1997年に全造船関東地協労働組合、1998年に東京地方労働組合評議会が、日本が戦時中に行った朝鮮人・中国人の強制連行・強制労働を、強制労働条約違反と認定し、日本政府に対して被害者救済を勧告するよう、申し立てを行った。これに対し、ILO条約勧告適用専門家委員会は1999年3月の「年次報告書」で、強制労働条約違反を認定したのである。「報告書」は次のように述べている。

 12 本委員会は、提出された情報と日本政府の回答をノートした。本委員会は、日本政府が『外務省報告書』の全般的内容に反論せず、その代わりにそれぞれの政府に対して支払いをしてきたことを指摘していることをノートする。本委員会はこのような悲惨な条件での、日本の民間企業のための大規模な労働者徴用は、この強制労働条約違反であったと考える。
 本委員会は、請求が現在裁判所に係属しているにもかかわらず、被害者の個人賠償のためになんら措置が講じられていないことをノートする。
 本委員会は政府から政府への支払いが、被害者への適切な救済として十分であるとは考えない。本委員会は『慰安婦』の事件と同様、本委員会が救済を命じる権限を有しないことを想起し、日本政府が自らの行為について責任を受け入れ、被害者の期待に見合った措置を講ずるであろうことを確信する。本委員会は、日本政府に、訴訟の進行状況と講じられた措置についての情報を提供するよう要請する。

 政府は、強制労働に該当しない理由として、「『緊急ノ場合即チ戦争ノ場合・・・ニ於テ強要セラルル労務』を包含しないものとされている」ことをあげている。確かに、強制労働条約は、日本政府が言うように戦時の「適用除外」を認めている。しかし、それには厳格な条件が付与されている。同条約の、関連条文を見てみる。
 第一条
 2 右完全ナル廃止ノ目的ヲ以テ強制労働ハ経過期間中公ノ目的ノ為ニノミ且例外ノ措置トシテ使用セラルコトヲ得尤モ以下ニ定メラルル条件及保障ニ従フモノトス
 第二条
 1 本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ
 2 尤モ本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ左記ヲ包含セザルベシ
(d) 緊急ノ場合即チ戦争ノ場合又ハ火災、洪水、飢饉、地震、猛烈ナル流行病若ハ家畜流行病、獣類、虫類若ハ植物ノ害物ノ侵入ノ如キ災厄ノ若ハ其ノ虞アル場合及一般ニ住民ノ全部又ハ一部ノ生存又ハ幸福ヲ危殆ナラシムル一切ノ事情ニ於テ強要セラルル労務 ((a)(b)(c)(e)省略)

  
 上記のように、「緊急の場合即ち戦争の場合」においては、例外として「強制労働」から外し、「包含」しないと規定している。しかし、戦時であれば強制労働は認められるのかと言えば、そうではない。ILOは安易に「適用除外」を認めない立場をとっているのである。
 日本政府は、全造船関東地協、東京地評の申し立てに対し、戦時中の朝鮮人の労務動員について、「戦時適用除外」(第2条第2項(d)に該当)を主張したのかも知れない。しかし、1999年3月に専門家委員会が公表した「意見」には、日本政府は、①植民地支配について繰り返し「遺憾の意」を表明してきた、②1965年の条約で韓国に5億ドルの経済援助をしたことによって「完全かつ最終的に解決したものとして合意した」の2点をもって、「反論」したとしか、記述されていない。専門家委員会報告だけを読むならば、日本政府はILOに対して公然とは戦時の「適用除外」を主張できなかったのではないかと推測することもできる。
 しかし、1997年の「報告書」は、「慰安婦」問題をめぐり、専門家委員会内でさまざまな議論がなされたことを明らかにしている。留意すべきは、専門家委員会の「報告」が以下のように述べていることである。

 条約違反の存否に関わる問題に関しては、委員会は又、1996年8月の第48会期国連差別防止少数者保護小委員会で、戦時の組織的強姦、性奴隷制、及び奴隷類似慣行に関してなされた論議に留意する。その論議に際して、(強制労働)条約第2条中の適用除外規定との関連で、戦時『慰安婦』問題に関して条約の適用があるか否かに関し、疑問が提起された。
 これに関して、委員会は、1979年に委員会が強制労働の廃止のための一般的調査(General Survey of 1979 on the abolition of forced labour)のパラグラフ36に記載した、条約第2条第2項(d)により条約の適用が除外される「緊急の場合即ち戦争の場合、又は火災、洪水、飢饉、地震、猛烈なる流行病、獣類、虫類若は植物の害物の侵入の如き災厄の若はその虞ある場合及び一般に住民の全体又は一部の生存又は幸福を危殆ならしむる一切の事情において強要せらるる労務」に関する説明を引用する。委員会は、緊急概念は、条約が例示的に列挙するように、突然の、予見しがたい偶発的事件であって、即時的な対応措置を必要とするものに関わると指摘してきた。条約に規定された例外の限界に関わるので、労働を強要できる権限は、真に緊急な場合に限らねばならない。さらに強制されるサービスの内容・程度も、それが用いられる目的と共に、その状況により厳密に必要とされる範囲内に制限されねばならない。条約第2条第2項(a)により条約の適用が除外される「強制兵役法に依り強要せらるる労務」の範囲を「純然たる軍事的性質の作業に対して」のみ限定しているのと同様であるが、緊急に関する第2条第2項(d)は、戦争、又は地震の場合でありさえすれば、いかなる強制的サービスをも課すことができるという白紙許可ではないのであって、同条項は、住民に対する切迫した危険に対処するためにどうしても必要なサービスについてしか適用できないのである。
 委員会は、本件は、条約第2条第2項(d)及び第2条第2項(a)により認められた適用除外事由に該当しないのであり、したがって、日本による(強制労働)条約違反が存在したものと結論する。

 この「報告」を読むと、1995年の報告で専門家委員会が、日本軍「慰安婦」制度を強制労働条約違反と認定したことに対し、日本政府がこれを覆すために反論、反撃に出たことが伺える。しかも、この問題は、国連の「差別防止少数者保護小委員会」とILOをまたいで議論されたのである。
 その際に、日本政府が「慰安婦」制度は強制労働条約違反ではないことを「立証」するためにあげた論拠、根拠条文が強制労働条約第2条第2項の(a)(d)であった。つまり、日本政府は、「戦時中だったのであるから」、強制労働には当たらない、と言ったのである。その時、兵士に性的サービスを強制することも第2項(a)=「純然たる軍事的性質の作業に対し強制兵役法により強要せらるる労務」に該当すると言ったことが推測される。また、(d)に当たるとも主張した。
 しかし、専門家委員会は、戦争でありさえすればどんな強制労働も「例外」として認められるなどということはない、とその反論を退けたのである。専門家委員会は、「白紙許可ではない」と言い、「適用除外」は「住民に対する切迫した危険に対処するためにどうしても必要なサービスについてしか適用できない」と日本政府の破廉恥な主張を退けた。
 このように日本政府は、専門家委員会の中で反論を試みたのだが、ほとんど「一刀両断」で退けられたため、以降は「作戦」を変更した。
 それが、①サンフランシスコ平和条約と1965年の請求権協定により、法的には「完全かつ最終的に解決済み」という主張であり、②アジア女性基金等で誠実に対応してきたという「実績」アピールである。しかし、このような主張に対して、専門家委員会は一貫して「(日本政府は)被害者の期待に応えるために必要な措置をとるべき責務を果たし続けるであろう」と言い続けているのである。

 日本政府は日本軍「慰安婦」制度で戦時の「適用除外」を主張した。そうであれば、朝鮮人強制連行・強制労働について同様の主張をしたことは、ほぼ間違いないであろう。しかし、これに対しても専門家委員会はそのような主張、反論は認めなかった。その結果として1999年3月の報告に記載された結論に至ったものとみられる。
 ところが、今回の馬場議員の質問主意書に対して、政府は「同条約上の『強制労働』には該当しないものと考えており、これらを『強制労働』と表現することは、適切ではないと考えている。」と答弁した。
 その際、強制労働条約第2条2項(d)の条文「緊急の場合即ち戦争の場合……に於て強要せらるる労務」を略してあげ、戦時の「適用除外」が認められるかのように述べた。それはILO条約の専門家委員会が「適用除外」には該当せずに強制労働条約違反と認定していることを無視する答弁である。
 また、答弁では「該当しないものと考えており」と、自らの「主観的見解」を表明するにとどめている。ILO専門家委員会による強制労働条約違反の判断を知る政府は、「強制労働」に該当しないと断言できなかったのである。姑息な、主権者をあざむく答弁である。

終わりに-政府は強制労働の事実を認め、被害者を救済せよ

 ILO条約勧告適用専門家委員会は1999年3月、戦時中に日本政府が行った朝鮮人・中国人強制労働について、「適用除外」とはみなさず、明確に「強制労働条約違反であった」と断定した。そして、日本政府が日韓請求権協定を経て5億ドルの経済援助を行った、それで「解決済み」という主張に対しても、「被害者への適切な救済として十分であるとは考えない」と言い切った。
 その上で、ILO専門家委員会は「本委員会が救済を命じる権限を有しない」と断りつつも、「日本政府が自らの行為について責任を受け入れ、被害者の期待に見合った措置を講ずるであろうことを確信する」と意見し、日本政府に自主的、自発的な被害者救済を促したのである。
ところが、日本政府はこの「勧告」を「法的強制力はない」「従う法的義務はない」と言い、無視してきた。そのような無作為の結果、2018年10月30日、韓国大法院は日本企業に対し強制労働被害者に慰謝料を支払うよう命じる判決を出すに至ったのである。
 大法院判決は、被害者の訴えに背を向け、ILOの勧告を無視し続けてきた日本政府自らが引き出したものなのである。今こそ日本政府は、戦時中の朝鮮人強制連行・強制労働の事実を認め、被害者を救済すべきである。それと同時に、歴史の事実を歪曲・否定するのではなく、教科書にその事実を記し、過去の過ちを後世に正確に伝えていくべきである。朝鮮人強制動員の歴史を歪曲・否定する4・27政府答弁は撤回すべきである。

連絡先  強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
      住所 〒230—0062 横浜市鶴見区豊岡町20番地9号 サンコーポ豊岡505号
               全造船関東地協労働組合気付
      電話番号 090-2466—5184
      e-mail 181030jk@gmail.com
      URL https://181030.jimdofree.com/ 

 

(参考資料)
 本「解説」執筆に当たって、以下の資料などを参考とさせていただいた。
 ・『過去の克服 ILO勧告受け強制労働被害者補償へ』(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク編、2005年1月14日刊)
 ・ウェブサイト「『徴用工』問題を考えるために 混乱したギロンを片付けたい!」   
  (https://katazuketai.jp/

 

2021年2月 2日 (火)

●【日本政府へ要請】核禁条約発効の今こそ、「核の傘」からの脱却に向け北東アジア非核平和地帯構想の検討を求める

2月2日午後、ピースデポが呼びかけ私たち日韓ネットを含む諸団体の連名による日本政府への要請書が外務省軍備管理軍縮課・首席事務官の鈴木晶子氏を通じて提出された。この日は時節柄オンラインでの対面だったが、予定の1時間を超えて活発な質疑が行われた。

 

内閣総理大臣 菅義偉様
外務大臣  茂木敏充様

【日本の核兵器政策に関する要請書】
核兵器禁止条約が発効した今こそ、「核の傘」政策からの脱却に向け「北東アジア非核兵器地帯」構想の真剣な検討を求める

 世界の感染者が1億人を超えたコロナ禍は、核兵器をはじめとする軍事力が「人間の安全保障」に全く役に立たないことを浮き彫りにしています。人間の安全を保障するには、核兵器を含む巨額の軍事予算を削減し、その分を市民の生命と安全を守る様々な予算にまわすことが必要です。
 そうした中で、2021年1月22日、被爆者をはじめ世界の市民の念願であった核兵器禁止条約(以下、TPNW)が発効しました。核兵器は、言うまでもなく、わずか一発で無差別大量殺戮が可能で、核攻撃の応酬となれば人類を滅亡させかねない兵器です。TPNW発効により、このおぞましい兵器が、国際法上、保有も使用も許されない違法な存在となりました。これにより核兵器の非人道性と違法性の認識が世界に広がることで、今後、締約国以外にも大きな影響を及ぼすでしょう。
 ましてや、日本はヒロシマ、ナガサキを経験した「唯一の戦争被爆国」です。にもかかわらず、日本政府はTPNWの意義を認めず、参加を拒否し続けています。一方で、日本政府は一貫して核兵器の非人道性と核兵器廃絶を訴えており、TPNWへの否定的態度との矛盾は、今後、さらに厳しく問われることになるでしょう。
 そうした矛盾を解消し、日本がTPNWに参加するには、条約が第1条e項で禁止する「核の傘」政策からの脱却が必要となります。そこで「核の傘」政策からの脱却を可能にする現実的政策である「北東アジア非核兵器地帯」構想を真剣に検討するよう、以下要請します。

1.直ちに実施可能な行動
(1) 核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべきであるというTPNWへの原則支持の表明を行うこと
 日本政府は「核兵器禁止条約が掲げる核兵器廃絶という目標は共有している」と繰り返し表明しています。また国会答弁において外務大臣は「唯一の戦争被爆国として、核の非人道性をどの国よりもよく理解をしている」と述べながら「核兵器禁止条約とは核兵器廃絶へのアプローチが違う」と述べ、TPNWへの参加を否定してきました。この立場からすれば、日本政府はアプローチは違うが、「核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべき」というTPNWの基本的な考えには賛同できるはずです。日本政府は、まず「TPNWを原則的に支持します」という分かり易いメッセージを世界の市民に発するべきです。

(2)TPNW締約国会議にオブザーバーとして参加すること
 条約は発効から1年以内に締約国会議を開催することを定めています。日本政府は締約国会議へのオブザーバー参加に慎重であると報じられています。一方で日本政府は核兵器廃絶に向けてTPNW推進派と否定派の「橋渡し」役を果たすと述べていますが、橋渡しをするためには推進派と否定派双方の主張を理解し関係を築くことが必要です。日本がTPNW締約国会議にオブザーバー参加することによって、TPNW推進派とも相互に理解を深めることができます。それは橋渡しをするうえで不可欠な前提となります。

2.中長期的な取り組み―「核の傘」政策からの脱却
(1) 北東アジアにおける安全保障環境を悪化させる行動をとらないこと
 日本政府は厳しい安全保障環境を理由に「核の傘」の必要性を訴え、TPNWへの参加を拒否しています。しかし、安全保障環境を厳しくした、あるいは、厳しくしている責任は日本にもあります。日本は、専守防衛政策に反して、敵基地攻撃能力の保有を準備したり、米軍とともに遠く南シナ海に自衛艦を派遣したりして、ことさらに軍事的緊張を高めています。また、2018年に朝鮮半島で始まった歴史的な緊張緩和の好機を定着させる努力をすることなく、国連安保理決議を超える北朝鮮への独自制裁を継続しています。良好な安全保障環境を築くためには、まず、日本が安全保障環境の改善に向けた外交努力を行うことが必要です。

(2) 2018年に始まった朝鮮半島の非核化・平和プロセスの行き詰まりを打破するため、米国のバイデン政権に米朝協議の再開を要請すること、そのために、まずシンガポール共同声明の継承をバイデン政権に求めること
 2018年6月、シンガポールでの米朝首脳会談で合意された米朝首脳共同声明は、画期的な合意文書です。そこには長い敵対の歴史を超えて両国が平和と繁栄の新しい米朝関係を築くこと、朝鮮半島に永続的で安定した平和体制を構築すること、という今も必要な基本的な合意が述べられ、そのうえで北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化を行い、米国が安全の保証を与えるという、お互いの約束を表明しています。
 米国の新政権が、まずこの米朝首脳共同声明の意義を再確認し、その履行に向けた米朝協議の再開について新しいイニシャチブを発揮することが、北東アジアの非核化と緊張緩和に極めて重要です。日本自身の核兵器依存を軽減する道でもあります。
 日本政府がバイデン政権発足の機会に、米新政権に対してこれらの要請を行うことを求めます。

(3) 「核の傘」政策からの脱却、そしてTPNW加盟を可能にする「北東アジア非核兵器地帯」構想を真剣に検討すること
 日本政府は、日本が受けている核兵器の脅威に対して、日本自身が核武装しない以上、米国の拡大核抑止力(核の傘)に依存することが必要だとしてきました。しかし、世界の圧倒的多数の国は核武装でも「核の傘」でもなく、非核兵器地帯条約の締結という外交的努力と国際法の力によって核兵器の脅威から身を守ってきました。それらの国々がTPNW推進の大きな原動力になっています。
 日本もまた、北東アジア非核兵器地帯を設立する努力をすることによって、「核の傘」依存から脱し、TPNWに加盟することが現実的に可能であると考えます。
 日本政府が、2018年の南北板門店宣言と米朝シンガポール共同声明に始まった朝鮮半島非核化プロセスを支持するだけではなく、すでに非核三原則をもつ日本を加えた北東アジア地域全体の非核化を提案すれば、「北東アジア非核兵器地帯」条約への道は大きく前進するでしょう。日本と南北朝鮮の3か国が非核兵器地帯を形成し、米国、中国、ロシアの3か国がこの地帯に核兵器の使用や威嚇しないという安全の保証を約束するものです。検証を伴った「北東アジア非核兵器地帯」条約が実現すれば、「核の傘」は不要となり、日本はTPNWに加盟し、被爆国にふさわしい核兵器廃絶への使命を果たすことができます。
 核兵器禁止条約が発効した今こそ、このような「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討を強く要請いたします。
                                    以上
                                   2021年2月2日

NPO法人ピースデポ
朝鮮半島非核化合意履行・監視プロジェクト
アーユス仏教国際協力ネットワーク
核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
原子力資料情報室(CNIC)
原水爆禁止日本国民会議
世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
世界連邦運動協会(WFM)
日韓民衆連帯全国ネットワーク
日本キリスト教協議会(NCC)東アジアの和解と平和委員会
日本基督教団神奈川教区寿地区センター
日本反核法律家協会
日本福音ルーテル教会社会委員会
日本YWCA
反核医師の会
ピースボート
ふぇみん婦人民主クラブ
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
許すな!憲法改悪・市民連絡会

連絡先 NPO法人ピースデポ 担当:渡辺洋介
〒223-0062横浜市港北区日吉本町1-30-27-4 1F
TEL 045-563-5101 FAX 045-563-9907

 

2020年4月 7日 (火)

【資料】北のコロナ対策妨害する制裁を即時緩和・中断せよ(韓国社会市民団体共同声明)

来週に迫った韓国総選挙(4月15日投開票)は、文在寅政権のコロナ対策が内外の高評価を受けて与党有利に進められていると報道されています。実際、PCR検査数だけみても安倍政権下の日本の状況とは雲泥の差です。

この中で、民主労総や韓国進歩連帯、参与連帯、韓国YMCAをはじめとする87の社会市民団体は3月31日に共同声明を出し、<朝鮮のコロナ対策を妨害する制裁を緩和・中断せよ>と訴えています。

金正恩氏に親書を出したトランプとポンペオの間に距離ができているのか役割分担なのか分かりませんが、いずれにしても世界的な新型コロナの拡大の中で「制裁」の維持・強化を唱えることの犯罪性は明らかです。

以下、韓国社会市民団体声明全文を紹介します

DPRKのコロナ対策を妨害する北への制裁を即時緩和、中断せよ

 3月25日(現地時刻)、米国のポンペオ国務長官は、[G7外相によるテレビ電話会議後の記者会見で]「G7など全世界が一つになって、DPRK[朝鮮民主主義人民共和国]に対する外交的、経済的圧力を続けるべきだ」と主張した。前日の国連のミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官による「コロナ19のパンデミックの中で、全世界の公衆保健、数百万人の生命と権利のために、DPRKなどへの制裁を緩和するか中断すべき」という発言を一蹴したものだ。さらにポンペオ長官は、26日のマスコミとのインタビューで「DPRKとイラン、ベネズエラのような国々が人道的支援を要請してきても断る」と明らかにした。現状でDPRKへの圧力を維持したまま、人道支援拒絶を口実とするのは、何の助けにもならない。トランプ大統領の親書のように、米国政府がコロナ19防疫のために北側と協力し支援する意向があるならば、今必要なのはコロナ19への効果的対応を妨害する米国と国連の制裁を緩和もしくは中断することだ。

   コロナ19の世界的流行により、制裁を緩和もしくは中断すべきだという声が続いている。ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、広範囲な制裁は再評価が急がれるとしながら、キューバ、DPRK、ベネズエラ、ジンバブエ、イランなどで、制裁が医療活動を妨害することになり、これは我々全ての危険を高めると強調した。アントニオ・グテーレス国連事務総長もまた、G20首脳に書簡を送り、コロナ19の医療支援と感染対策に必要な医療資材や食料の供給のため、制裁措置の免除を呼び掛けている。米国の対北人道支援の団体も、制裁により支援が妨害されることにないようすべきだとしている。

   国連安保理北朝鮮制裁委員会は案件別に制裁免除を承認しており、最近は承認期間も短縮しているが、依然として不十分だ。体温計や遺伝子増幅検査[PCR検査]装置、診断薬・試薬、人工呼吸器など、必要な医療資材の支援も煩雑な手続きを経なければならない。免除承認のためには、支援の目的ばかりか、物品移動の位置、船積みの数量と方法、貨物の移動ルート、ドル換算の値段、免除要請の理由、利用する金融機関など、広範囲の情報を提供せねばならず、これは一旦支援を行えば変更してはならない。さらに免除承認を受けたとしても、金融制裁と米国の独自制裁などで、支援物品の代金支払い、現地NGOや国連機構の運営費支払いのために金融機関を探すのも困難な上に、送金そのものが大変だ。コロナ19による国境統制などで、現金を直接手渡すことも難しくなっており、支援そのものが総体的難局に陥っている。制裁が急速に拡がる感染症に、緊急で効果的な対応を妨害している。

   DPRKはこれまでコロナ19の感染者はいないと公表しているが、今後の状況は誰にも予測できない。DPRKは拡散初期から航空便を制限するなどの国境閉鎖措置を行い、自主的な防疫に尽力しているという。併せてロシアに診断キットを、国境なき医師団やユニセフなどに医療資材の支援を要請している。DPRKの報告通り感染者が発生していないとしても、防疫を徹底して行わない限り、どの国も安全とは言い切れない。ウィルスには国境がない。専門家たちは1か国でも防疫に失敗し、手のつけようもないほど拡がれば、全世界的な脅威となるので、多国間協力や国際協力が大変重要だと強調している。DPRKを「支援」するためでなく、コロナ19への世界的共同対応のためにも、制裁を変化させるのは非常に急がれるところだ。

   3月26日、G20首脳はコロナ19対策について、最初の特別首脳会合を開催し、世界的パンデミックに対応するための「国際行動、連帯、国際協力」を誓い合った。[コロナ封じ込めの]韓国政府の対応が世界的好評を博す中で、各国から国際協力の要請も相次いでいる。ところが皮肉なことに、韓国が協力できない国は朝鮮半島で共に生きるDPRKなのだ。韓国政府と民間の支援、南北の保健医療協力は制裁に遮られてきた。DPRKのコロナ19拡散と被害を防ぐ効果的な方法は、防疫、隔離、医療資材を大幅に拡充させることだが、これは制裁の広範囲の緩和もしくは中断、そして国際社会の協力なしには不可能となっている。さらに制裁緩和と同じように重要なのは、DPRKもまた、国際社会の防疫協力提案に積極的に参加すべきだということだ。協力は一方的な努力だけでは行えない。

   南北は2018年11月に開催された南北保健医療分科会議を通じて、▷双方の感染症に対する情報交換など、南北の感染症の流入と拡散防止、▷結核とマラリアをはじめ感染症の診断や予防治療の協力、▷中長期的な防疫並びに保健医療協力、▷南北共同連絡事務所を通じた定例会議と問題解決などに合意をみた。ところがコロナ19拡散の状況で、このような合意は全く履行されていない。朝鮮半島平和プロセスの進展が朝鮮半島に居住する人々の安全と直結するということを確認させる事例だ。グテーレス国連事務総長が強調したように、「今や排他ではなく連帯の時」だ。もはや、ためらう時間もない。米国と国際社会は、DPRKのコロナ19対応を妨害している対北制裁を即時緩和もしくは中断しなければならない。

2020年 3月 31日
(社)分かち合いと共に、(社)グリーン交通運動、(社)暖かい朝鮮半島愛の練炭分かち合い運動、(社)民族和合運動連合、(社)子どもと肩組んで、(社)子ども医薬品支援本部、(社)わが地の平和運動、(社)仁川都市農業ネットワーク、(社)済州参与環境連帯、(社)青少年人権福祉センターネイル、(社)平和サムチョン、(社)ハナヌリ、(社)韓国回復的正義協会、(社)朝鮮半島の平和と繁栄のための協力、(財)ナイスピープル、開城観光再開国民運動、健康と分かち合い、健康権実現のための医療団体連合(健康社会のための漢方薬剤師会、健康社会のための歯科医師会、労働健康連帯、人道主義実践医師協議会、真の医療実現青年漢方医会)、国際民主連帯、キムジェ正義平和行動、キムチョン教育を越えて、労働者教育機関、グリーンコリア、もう一つの世の中に向かう連帯、民族問題研究所、民主社会のための弁護士会・統一委員会、民主平等社会のための全国教授研究者協議会、非正規労働者の家・熟睡、サードミサイル配備反対キムチョン市民対策委員会、新たな100年を開く統一義兵、新たな世を開く天主教女性共同体、生命政治フォーラム、西海5島平和運動本部、世宗参加自治市民連帯、韶成里サード撤回星州住民対策委員会、市民平和フォーラム、新大乗ネットワーク、実践仏教全国僧家会、女性平和運動ネットワーク、開かれた軍隊のための市民連帯、わが民族助け合い運動、蔚山市民連帯、円仏教・人権委員会、円仏教・星州聖地守護非常対策委員会、円仏教・市民社会ネットワーク、陸に住む済州の人たち、利潤より人を、人間模様錬磨所、人権連帯、人権運動サランバン、仁川キョレハナ、仁川市民文化芸術センター、仁川女性会、仁川小さな図書館協議会、仁川平和福祉連帯、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯、自主平和統一実践連帯、全国公共運輸労働組合、全国民主労働組合総連盟、全国女性農民会総連合、全国女性連帯、全羅南道南北交流平和センター、全北平和と人権連帯、済州平和人権センター、済州平和人権研究所ソワット、参与連帯、緑の傘子ども財団、忠清北道参与自治市民連帯、統一の木、統一出迎え、パックス・クリスティ・コリア、平和ネットワーク、平和都市づくり仁川ネットワーク、平和をつくる女性会、平和鉄道、ピースモモ、韓国YMCA全国連盟、韓国キリスト教教会協議会・和解統一委員会、韓国女性団体連合、韓国進歩連帯、ハンベ平和財団、ヒョンミョン財団、興士団・民族統一運動本部、(合計87団体)

*文中の( )は原文通り、[ ]は翻訳者によるものです。 【翻訳 日韓ネット・k】

 

2020年1月10日 (金)

●【資料】1.6 強制動員問題の真の解決に向けた協議の呼びかけ(日韓弁護士・支援団体)

1月6日、日韓の徴用工裁判に携わったきた弁護士、支援団体がソウルと東京で同時に記者会見を行い下記の呼びかけを発しました。私たち日韓ネットも参加している強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」も呼びかけ団体です。

PDFファイルのダウンロード - e380901.6e5bcb7e588b6e58b95e593a1e5958fe9a18ce381aee79c9fe381aee8a7a3e6b1bae381abe59091e38191e3819fe58d94e8adb0e38292e591bce381b3e3818be38191e381bee38199e38091.pdf

------------------------------------------------------------------

強制動員問題の真の解決に向けた協議を呼びかけます。

1 現在、強制動員問題に関して、韓国国会議長が提案した法案などさまざまな解決構想 が報じられています。日韓請求権協定によっても個人賠償請求権は消滅しておらず、未解決とされている強制動員問題の解決構想が検討されることは望ましいことです。しかし、報じられている解決構想の多くが真の解決になり得るのか疑問です。

2 まず確認しておきたいことは、強制動員問題には、労務強制動員問題(いわゆる徴用工問題)の他に、軍人・軍属として強制動員された被害者の権利救済の問題(軍人・軍属問題)も含まれるということです。 強制動員問題全体を最終的に解決するためには、軍人・軍属問題も含めて解決構想が検討されなければなりません。したがって、総合的な問題解決案とともに現実的な条件を考慮した段階的解決策を検討すべきです。

3 労務強制動員問題の解決についてですが、労務強制動員問題の本質は、被害者個人の 人権問題です。したがって、いかなる国家間合意も、被害者が受け入れられるものでなければなりません。また、国際社会の人権保障水準に即したものでなければ真の解決とはいえません(被害者中心アプローチ)。
 被害者が受け入れられるようにするためには、労務強制動員問題の解決構想の検討過程に被害者の代理人などが主体のひとつとして参加するなど、被害者の意向が反映できる機会が保障されなければなりません。
 また、強制連行・強制労働は重大な人権侵害として違法であり、その被害者に対しては、原状回復や賠償など効果的な救済がなされなければならないと国際社会は求めています。

4 それでは何をもって労務強制動員問題の真の解決といえるのでしょうか。
 (1) 真の解決といえるためには、①加害者が事実を認めて謝罪すること、②謝罪の証として賠償すること、③事実と教訓が次の世代に継承されるということが充たされなければなりません。
 (2) このような事項は、日本と韓国における長年にわたる訴訟活動などを通じて被害者及び支援者らが求めてきたものです。ドイツにおける強制連行・強制労働問題を解決した「記憶・責任・未来」基金や、中国人強制連行・強制労働問題の解決例である花岡基金,西松基金及び三菱マテリアル基金においても、基本的に踏まえられているものです。
 特に、労務強制動員問題の本質が人権問題である以上、問題解決の出発点に置かれ るべきは、人権侵害事実の認定です。人権侵害の事実が認められることで、初めて被 害者の救済の必要性が導かれるからです。
 (3) この点、注目すべきは,韓国大法院判決の原告らが韓国での裁判の前に日本で提訴した裁判における日本の裁判所の判断とそれに対する評価です。日本の裁判所は結論としては原告を敗訴させましたが、原告らの被害が強制連行や強制労働に該当し違法であると認めています。
 この日韓両国の裁判所がともに認定した人権侵害の事実を、日本政府や日本企業が 認めて謝罪をすることが、この問題解決の出発点に位置づけられなければなりません。

5 真の解決を実現するために、誰が、何をすべきなのでしょうか。
 (1) 労務強制動員被害者らは,国家総動員体制の下,日本政府が政策として企画した労
務動員計画(1939年~1945年)に基づき動員され、日本の加害企業が連行に関与し、炭鉱や工場などで働かされました。したがって、労務強制動員問題に対して第一次的法的責任を負うのは日本国及び日本の加害企業であるといえます。
 労務強制動員問題の解決の出発点は、人権侵害の事実を認めることですが、それは 日本政府及び日本企業しかできないことであり、そのことが日本国及び日本の加害企 業の果たすべき重要な役割といえます。
 さらに、今日、国際連合は、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」や「グローバ ル・コンパクト」という取り組みを通じて、人権分野においても企業が責任あるリー ダーシップを発揮することを期待しています。韓国大法院確定判決の被告企業である 日本製鉄や三菱重工にもその役割を果たす責任があるといえます。これらの加害企業 が現在及び将来において人権分野で責任あるリーダーシップを発揮するためには、過 去自ら行った人権侵害の事実に誠実に向き合い、その問題を解決することは不可欠で あるといえます。
 (2) 韓国政府は、日韓請求権協定において強制動員問題をまともに解決できず、その後も 被害者の権利救済をなおざりにしてきた道義的責任があります。強制動員被害者問題を全体的に解決するためには、韓国政府も自らの責任と役割を果たすべきです。
 (3) 韓国の企業の中には、日韓請求権協定第1条に基づく「経済協力」により企業の基盤 が形成されその後発展してきた企業(受恵企業)があります。受恵企業が過去の歴史 に誠実に向き合い、歴史的責任を自覚し、自発的にこの問題の解決に関与することは 解決のための正しい態度であるといえます。
 (4) 以上のとおり、労務強制動員問題を始めとする強制動員問題について日韓両国政府、 日本の加害企業及び韓国の受恵企業は、この問題解決のために果すべき責任と役割が あります。

6 真の解決を実現することは可能でしょうか。
 解決の可能性を検討するにあたり参考になるのは、中国人強制連行・強制労働問題の解決例である花岡基金、西松基金及び三菱マテリアル基金による解決についてです。
 ここでは、被害者と加害企業との「和解」により、加害企業が自らの加害と被害の事実と責任を認め、その証として資金を拠出して基金を創設しました。そして、その基金事業として、被害者への補償と慰霊碑の建立、慰霊行事通じて記憶・追悼事業を行い、また行おうとしています。
 この事業に日本政府や中国政府は直接には関与していません。加害事実を認めたのも、 残念ながら日本の加害企業のみであり、日本政府は認めてはいません。それは今後の課題として残されています。しかし、このような「和解」を通じて日中両国の被害者、支援者、日本企業などの間で相互理解と信頼が育まれてきています。
 日本の最高裁判所は、中国人強制連行・強制労働事件に関する判決の付言の中で被害者を救済すべき必要性を指摘しました。また、日中共同声明により裁判上訴求する権能は失われたが、個人賠償請求権は消滅していないとの解釈を示すことで、加害企業が被害者に任意かつ自発的に補償金を支払うことが法的に許されることを示しました。
 韓国人労務強制動員問題についても、日本の裁判所も人権侵害の事実を認めており、 救済の必要性が認められるといえます。そして、日韓請求権協定第2 条において「請求権の問題」が「完全かつ最終的に解決した」ということの意味については、国家の外交的保護権を解決したのであり、個人賠償請求権は消滅していないというのが日本政府や日本の最高裁判所の判断です。加害企業は任意かつ自発的に補償金を支払うなどの責任ある行動をすべきですし、日本の政府や裁判所の見解に照らしても、日韓請求権協定は、労務強制動員問題を解決するにあたり法的障害にはならないといえます。
 したがって、少なくとも日本政府が事実に真摯に向き合い、日本の司法府の判断を尊重して問題解決に努力する姿勢を示し、日本の加害企業が解決しようとすることを日本政府が妨害しなければ、解決することは十分に可能といえます。

7 私たちは、労務強制動員問題の真の解決のためには、これまで述べてきたことを踏まえて、関係者間での協議が行われることが望ましいと考えています。
 そのために、日韓両国間で、強制動員問題全体の解決構想を検討するための共同の協議体を創設することを提案します。
 この協議体は、強制動員被害者の代理人弁護士や支援者、日韓両国の弁護士・学者・ 経済界関係者・政界関係者などから構成され、強制動員問題全体の解決構想を一定の期間内に提案することを目的とします。日韓両国政府は、この協議体の活動を支援し協議案を尊重しなければなりません。
 私たちは、このような努力が日韓間の厳しい対立を解消するためのひとつの方法であり強制動員問題の解決に向けた途であると考え、日韓共同の協議体の創設を強く強く呼びかけます。

2020年1月6日
強制動員問題の正しい解決を望む韓日関係者一同

(韓国)
 強制動員被害者訴訟代理人
  弁護士 キムセウン(金世恩)
  弁護士 キムジョンヒ(金正熙)
  弁護士 イサンガプ(李尚甲)
  弁護士 イジェソン(林宰成)
  弁護士 チェボンテ(崔鳳泰)
  弁護士 クォンソヨン
  弁護士 キムミナ
  弁護士 キムサンフン
  弁護士 キムスジ
  弁護士 キムジョンホ
  弁護士 リュリ
  弁護士 パクインドン
  弁護士 ソビョンソン
  弁護士 ソンウチョル
  弁護士 イグァンウォン
  弁護士 イソンスク
  弁護士 イソア
  弁護士 イチェヨル
  弁護士 チャンウンベク
  弁護士 チャンヒョイン
  弁護士 チョンミンギュ
  弁護士 チョンダウン
  弁護士 チョンインギ
  弁護士 チェモク
  弁護士 チェジョンヒ
  弁護士 キムソンジュ
  弁護士 ソボゴン
  弁護士 イドンジュン
  弁護士 イサンヒ
  弁護士 イヨンウ
  弁護士 イヒョンジュン
  弁護士 チョンボムジン
  弁護士 チェヨングン
  弁護士 パクインスク
 強制動員被害者訴訟支援団
 勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会
 民族問題研究所
 太平洋戦争被害者補償推進協議会

(日本)
  弁護士 青 木 有 加
  弁護士 足 立 修 一
  弁護士 岩 月 浩 二
  弁護士 内 田 雅 敏
  弁護士 大 森 典 子
  弁護士 川 上 詩 朗
  弁護士 在 間 秀 和
  弁護士 張  界 満
  弁護士 宮 下 萌
  弁護士 山 本 晴 太
 名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会
 韓国の原爆被害者を救援する市民の会長崎
 朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動
 広島の強制連行を調査する会
 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会
 過去と現在を考えるネットワーク北海道
 川崎から日本軍『慰安婦』問題の解決を求める市民の会

 

より以前の記事一覧