無料ブログはココログ

カテゴリー「ソウル国際シンポ報告」の12件の記事

2018年8月18日 (土)

●【韓国訪問報告③】コリア国際平和フォーラム(シンポ)開く

427板門店宣言と612米朝首脳会談

大転換期のコリア 東北アジアの平和と繁栄、統一への道

        関連記事「民プラス(原文) http://www.minplus.or.kr/news/articleView.html?idxno=5776

20188112

810日午後4時、ソウル市議会別館大会議室で第6回コリア国際平和フォーラムが開かれた。今年は427板門店宣言、612米朝共同声明後に初めて開催されるフォーラム(シンポジウム)であり、「大転換期のコリア 東北アジアの平和と繁栄、統一への道」がテーマとなった。

 

主催: 公州大学・ソウル大学・成均館民主同窓会、キム・ジョンフン議員室、独立有功者遺族会、民家協良心囚後援会、民衆党、民プラス、四月革命会、ソウル進歩連帯、(社)私たち同胞ひとつに運動本部(キョレハナ)、ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会、全国民主労働組合総連盟、(社)統一の道、韓国戦争前後民間人犠牲者全国遺族会、韓国進歩連帯、Action One Korea4.9統一平和財団

主管:(社)コリア国際平和フォーラム、8.15自主統一大行進推進委員会

後援: 6.15共同宣言実践南側委員会と現場言論「民プラス」4.27 판문점선언과 6.12 조미정상회담, “대전환기 코리아·동북아 평화와 번영, 통일로 가는 이라는 주제로 열린 이날 포럼에서는 손정목 4.27시대연구원 국제분과팀장이대전환기 코리아·동북아 평화와 번영, 통일로 가는  - 비동맹 중립화 연합연방제 통일로 가는 이라는 제목으로 기조발제를 하였고, 와타나베 겐쥬 일한민중연대전국네트워크 공동대표가판문점선언, 조미공동성명과 일본의 과제라는 제목으로, 야마모토 카즈히데 일한평화연대 대표가한국전쟁 휴전 65주년, 동아시아에 평화를!

 

当初は815自主統一平和大会に連動して開催予定だったが、自主統一平和大行進が南北労働者サッカー大会に合わせて811日に変更になったのに伴い10日の開催となったもの。急な日程の変更のため、昨年は日本のほかカナダや中国からもパネリストが参加したが、今回は日韓共同シンポジウムとなった。

【昨年の610コリア国際平和フォーラム報告はこちら】

    http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/610-ccd0.html

フォーラムでは日韓双方から以下の発題がなされた。

【韓国側基調報告】

 非同盟中立の連合連邦制統一への道

   ソン・ジョンモク「427時代研究院」国際分科チーム長

  http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-b445.html 

20188111                           ソン・ジョンモク氏

【日本側発題①】

 板門店宣言・朝米共同声明と日本の課題

   渡辺健樹・日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表

  http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-dee6.html

【日本側発題②】

 朝鮮戦争休戦65周年、東アジアに平和を!727キャンドル行動

   山本一英・日韓平和連帯(大阪)共同代表

  http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-08cb.html

【特別報告①】

 朝鮮学校不屈の闘い

   森本孝子・「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会事務局

   http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/post-09d3.html

【特別報告②】

 大阪における朝鮮学校への「高校無償化」差別との闘い

   大村和子・朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪

 

討論では、612朝米共同声明後の米国の動向と平和体制構築の展望をどのように見ていくか、また南北・朝米対話と歴史的転換期の中で日本が取り残されている状況などについて活発な質疑討論が行われ、連帯を確認し合った。

20188114                      韓国側スタッフらと記念撮影

 韓国側基調報告 ソン・ジョンモク

非同盟中立の連合連邦制統一へと進む道

                 ソン・ジョンモク(孫政睦)

4.27時代研究院」国際分科長

現場言論『民プラス』企画委員

 

 

1. 不可逆的な南北、米朝首脳会談

 

 「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言(以下、板門店宣言)」は、“朝鮮半島にもうこれ以上の戦争はあり得ず平和の新時代が開けたことを知らせる終戦宣言であり、南北が力を合わせて自主統一の新たな歴史を拓くことを民族と世界に知らしめた布告である。板門店宣言は2回の南北首脳会談の成果を継承しつつ、時代と民族の切迫した要求である朝鮮半島の平和体制と統一を成し遂げる具体的経路と方案を提示したという点で、歴史上で最高水準の合意だと言えよう。

 

 板門店宣言がこれまでの共同宣言よりも確固たる理由は、その合意事項が米朝首脳会談により下支えされたためである。歴史上、初の米朝首脳によるシンガポール共同声明は、これまで行われた米朝会談の性格とは根本的に異なる核保有国同士の会談であり、首脳同士の合意を先行させることにより不可逆的意味をもたせている。シンガポール共同声明は、新たな米朝関係樹立はもとより、朝鮮半島の平和体制と朝鮮半島における完全な非核化のための共同の努力を世界に明らかにすることにより、朝鮮半島の平和と統一の実現を担保し、新しいアジアの秩序を立てて進むべき道を開けた転換の契機になるだろう。

 

 

2. 自主統一原則と統一方案の合意

 

1) 南北首脳同士の随時交流と南北共同連絡事務所

 板門店宣言の最も大きな意義は「自主統一」という朝鮮半島統一の性格を明確にし、その実現のための具体的措置を打ち出したということである。自主統一とは、宣言文の通り、「わが民族の運命はわれわれ自身が決めるという民族自主の原則」に基づき、外国勢力の干渉を排除し、わが民族自らが成し遂げる統一である。宣言文では、この実現のために首脳同士の定期的会談とホットラインの設置、高位級会談をはじめ分野別対話、南北当局者が常駐する南北共同連絡事務所の設置、各界各層の多様な協力と交流、接触の活性化を明示した。中でも注目すべきは、連絡事務所を南北双方ではなく、ケソン(開城)一か所のみに設置することである。これは一部で主張されているような南北関係正常化のための前段階的措置ではなく、予想される全方位的交流協力を南北が共同で管理していこうとする機構である。板門店宣言が6.15共同宣言を継承する際、共同連絡事務所は連合連邦制(連邦連合制)統一方案で提示された「民族統一機構」へと進む前段階の措置だとみるべきだろう。

 

2) 南北が合意した唯一の統一方案~連合連邦制

 周知のように6.15共同宣言の第2項は、南北が合意した唯一の統一方案である。「南側の連合制と北側の低い段階の連邦制に共通性があることを認め、その方向で統一を推進」することとした統一方案の合意は、歴代どの政府も否定することは出来なかった。北側は20147月共和国政府声明において、これを「連邦連合制」統一方案として正式化した。南側政府ではこれを公式に命名した訳ではないが、市民社会団体、進歩的な政党や学会では、これを「連合連邦制」または、「連邦型連合制」としている。

 

 連合連邦制とは、南北の地域政府が軍事権と外交権など主権をそれぞれ保有し、中央では統一志向の南北共同機構(民族統一機構)を設置し、漸次的、段階的に統一を完成していく独創的な統一方案である。連合連邦制は91南北基本合意書において、南北は「国と国との関係ではない統一を志向する過程で暫定的に形成される特殊関係」という合意に基づく。そのため、南側の「連合制」は統一志向を前提とした南北連合という点で、一般的な国家連合とは異なる。南側は統一実現のための機構として南北首脳会議、南北閣僚会議、南北評議会など、共同機構の設立を提示した。北側の「低い段階の連邦制」では、主権を中央政府がもつという一般的な連邦国家でなく、中核的な主権は各地域政府がもつものの、統一実現のための民族共同事業には地域政府でなく民族統一機構が推進するという、よりゆるやかな連邦制である。

 

 このようにみたとき、南側の「連合制」と北側の「低い段階の連邦制」の共通性は次の通りである。南北は相互に現行の理念と体制、制度と政府を尊重する。南北政府はそれぞれ、政治、 軍事、外交権をもつ2体制2政府を維持しつつ、統一を実現するための共同機構をもつ。南側は共同機構として南北首脳会議、南北閣僚会議、南北評議会などを、北側は民族統一機構を提案した。南北は漸進的、段階的に統一を完成していく。連合連邦制(連邦連合制)は初期には全民族が同意できる低いレベルから統一を実現していくという点で、現段階の実現可能な唯一の統一形態である。さらに、完成された形態の統一ではなく、漸進的、段階的に高い段階の統一へと完成させていくという点で、過渡的な性格をもつ統一方案である。

 

 南側の学者の一部にはその過渡的性格を理由に、これは統一方案ではないと主張し、6.15共同宣言の第2項は方向性を合意したのみで統一について合意した訳ではないとして、その合意精神を歪曲しようとしている。しかし、過渡的性格とは、統一か否かという問題ではなく、統一を完成するための水準と段階の問題である。即ち、国号は1つにして、少しずつ中央政府の地位と役割を高めて行こうとするものである。これは南北が長期間の分断により生まれた体制と文化、生活方式などの差異を少しずつ克服していこうとする過程でもある。この[過渡的]期間は南北間で共存共栄の和解協力の過程で、長くかかることも比較的短くて済むこともあり得るだろう。南北が合意した連合連邦制以外に、平和的に統一する方案はない。

 

このように板門店宣言の「定期的な南北首脳会談」と「南北共同連絡事務所」は、連合連邦制の統一実現のための前段階措置として決定的な意義をもつ。

 

 

3. 朝鮮半島平和体制の実現

 

1) 自主統一と朝鮮半島の平和体制

 朝鮮半島の自主統一は、朝鮮半島平和体制によって担保される。広義の意味において朝鮮半島平和体制は、朝鮮半島自主統一の実現と東北アジアの確固とした平和を担保する共同安保機構の設立などで完成されると言えようが、当面は狭義の意味で朝鮮半島平和体制は、米朝間の長い敵対関係の清算を中心とする終戦宣言と、朝鮮半島の平和協定により実現される。この過程において朝鮮半島の核戦争危険の解消を意味する朝鮮半島の非核化は平和体制実現の基盤となるだろう。

 

 朝鮮半島の平和体制は、板門店宣言第3項にある朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築と、シンガポール宣言第2項にある朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築、第3項にある朝鮮半島の完全な非核化がほとんど同時に、密接に結合しながら展開されて実現される。これは朝鮮半島平和体制が南北、米朝間の共同努力によってのみ成し遂げられることを意味している。

 

 板門店宣言第3項の朝鮮半島平和体制構築のための相互不可侵合意の再確認、段階的軍縮、▲3者または4者間での終戦宣言と平和協定、朝鮮半島の完全な非核化は、米朝間の合意にもそのまま適用される。即ち、米朝間の不可侵合意と段階的軍縮、終戦宣言と平和協定、朝鮮半島の完全な非核化実現がシンガポール共同声明にも、そのまま溶け込んでいるということである。これは、今後展開される朝鮮半島平和体制の実現が板門店宣言とシンガポール共同声明の合意事項が鋸の歯のように噛み合わさって展開することを予告するものである。

 

 米朝間でのシンガポール共同声明が板門店宣言と異なり、原則的、包括的合意のみで具体的実行策が含まれていないのは、全ての過程が朝鮮半島をはじめとする東北アジア、米国、全てに全面的で破格の影響を与えうるためである。また、依然として強固に存在する国内外の北への敵対勢力が反トランプ陣営に結集し、ことごとくイチャモンを付け妨害しようとしているためでもある。首脳同士で大きな構図とその方向性を合意し、段階的実践により信頼を形成しながら合意を実現する有利な政治環境を作ろうとする意図が、シンガポール共同宣言に含まれている。

 

2) 朝鮮半島平和体制の初期の措置―終戦宣言 

 現在、米朝首脳会談履行の最大の争点は終戦宣言である。先月、共同声明履行のため開催された米朝高位級会談の決裂の背景は、米国が一方的に北の非核化と遺骨返還問題のみを取り上げ、終戦宣言など平和体制の問題は話合いそのものを忌避したためである。これに対し北のリ・ヨンホ外相は、今回のアセアン地域フォーラム(ARF)で、「信頼造成を先行させつつ、共同声明の全ての条項を均衡に、同時に、段階的に履行していく新たな方法のみが成功させる唯一現実的な方法」だとして、米国の一方的に非核化のみを先行させる要求を批判した。

 

 実際、米国がこれを知らないはずはない。それにも関わらず、このように自分たちが先に提起した終戦宣言を送らせようとする理由は、米国の広く蔓延している北への敵対勢力の反発と反対のためでもあるが、何よりもその発表がもたらす朝鮮半島の政治軍事的地殻変動に対する憂慮と準備不足のためのようである。

 

 最近、米国の反トランプ勢力は、ロシアとの和解をはじめ中東情勢の解決を図ったプーチン大統領との首脳会談について、トランプ大統領を「反逆者」とまで激しく非難し、ロシアとの関係改善と米朝共同声明履行をいちいち妨害している。実際にトランプ政府の北韓(朝鮮)とロシアとの関係転換は2か国のみの問題ではなく、これまでの米国中心の覇権秩序における転換と直接関連している。

 

彼らは先月のポンペイオ長官の訪朝を前に「濃縮ウランの生産」を報道したのに続き、先月末のワシントンポスト(WP)は、米軍の遺骨55体が返還された後にもその善意を知らせるのはおろか、北の「ICBM追加生産」情報を報道し、まるで北が非核化をしないと言わんばかりにちらつかせている。一言で北韓(朝鮮)が共同宣言を違反し、米国を騙しているということである。ひいては北に対し、非核化を先行させた後に安全保障を行うというような主張を行いつつ、シンガポール合意を正面から否定している。それでも不安だったのか[米国]上下院の反トランプ、北への敵対議員らは、はなからトランプ政府の足を引っ張るため駐韓米軍の兵力を22千人以下に減らせないように制限し、相当規模の撤退は北韓(朝鮮)非核化関連の交渉が不可能な対象とした「2019会計年度国防権限法案(NDAA)」を通過させた。このように彼らは絶え間なく、あらゆる虚偽の情報と法的装置を動員して、朝鮮半島平和体制の実現を妨害しようとしている。

 

彼らのこのような妨害は北との和解を送らせようとする意図もあるが、まずはトランプを退陣させようとするのにその目的がある。トランプ政権の外交的成果を妨害し、当面11月の中間選挙で勝利しようとするものである。しかし、大勢となった朝鮮半島平和体制の流れは、たとえ彼らが今後政権を取ったにせよ妨害出来ないだろう。それは何よりもシンガポール共同声明がこれまでの米朝間合意と質的に異なる核保有国同士の合意のためである。トランプ大統領が米朝首脳会談を終え帰国した第一声が「これ以上北韓(朝鮮)から核の脅威はない」「今晩はぐっすり寝よう!」としたことからも知られる。このようにシンガポール合意は核保有国同士の互いの核攻撃の脅威を除去するための対話と談判の性格をもつ。だからこそ北が戦略国家として核武力の完成を宣言し、米国本土の攻撃能力を立証した条件で進められた米朝首脳会談の合意は決して一方的に破棄することは出来ない。それは、直ちに直接米本土が深刻な危険にさらされることを意味するためである。

 さらに、北の国家宣言は中国やロシアとの関係を再定立させた。何よりもこれまで米朝の間で慌てていた中国がしっかり北と手を握り、「1つの参謀部で緊密に連携して協力する」とまでに合意したのは、米国の立場をさらに苦しくさせた。中ロはすぐに独自の範囲で制裁を事実上解除し、国連安保理にも制裁解除を要求している。中ロが対北制裁で実際に手を引けば、米国主導の制裁は時が過ぎるにつれ無力化するだろう。また、中国は終戦宣言と平和協定にも積極的に乗り出してきている。米国は中国との貿易戦争をより強め、ロシア銀行に対する制裁まで発表したが、3つの核保有国同士の協力はより強まることだろう。これは朝中ロの3か国が朝鮮半島問題の解決は当然のこと、予見される新たな世界秩序の形成に緊密に協力していくことを意味するものである。

 

 何よりも朝鮮半島の終戦宣言は、これまでの朝鮮半島秩序に巨大な地殻変動を呼び起こすだろう。終戦宣言の発表は直ちに、朝鮮戦争に国連軍の参戦を決議した国連安保理第83号、第84号の終了につながるためである。国連安保理決議の第83号は、北韓軍(人民軍)撃退に必要な援助を国連の会員国が国に提供せよという勧告であり、第84号は北韓軍(人民軍)撃退作戦を行う統合部隊が国連旗を使い、米国がその司令部を構成するという決議となっている。終戦宣言が発表されれば、南北どちらであっても朝鮮戦争で国連軍の参戦を決めた「安保理決議第83、第84号」の終了決議を国連安保理に提起するだろう。米国を含め国連安保理は拒否権を行使出来ない。このように「安保理決議第83号、第84号」の終了が決議されれば、朝鮮半島に存在する国連軍司令部と国連軍の解体と撤収は避けられない。当然、駐韓米軍は韓米相互防衛条約に基づき、国連軍とは別途に政府の要請により駐留していると主張するだろうが、北との対関係を清算し、国連軍の活動が終了を宣言する以上、駐留し続ける名分はなくなる。残るのは時間の問題だけだ。

 

 朝鮮半島の終戦宣言はまた、駐日米軍の地位にも重大な影響を与えることになる。米国は19507安保理決議第84号により日本の東京に国連司令部を設置し、国連司令部の名で「日本国内の国連軍基地については、日本政府の事前許可なく使える駐留軍地位協定(SOFA)を締結」した。国連軍司令部がソウルに移転した後、米国は日本に国連軍後方司令部を設置し、地位協定により日本各地に7か所の大規模な軍事基地を設置、運営してきたばかりか、今でも国連軍の名で英国、オーストラリア、フランスなど9か国の多国籍軍を参加させている。もはや、安保理決議の終了が宣言されれば、駐日米軍の地位もまた地殻変動を起こし、これ以上多国籍軍は動員できなくなる。

 

このように終戦宣言は、駐韓米軍のみならず駐日米軍の運命に大きな影響を与える。これこそ、米国が国連司令部の解体問題とつながる終戦宣言の発表を遅らせている最も大きな理由である。そうなれば米国内の反トランプ陣営は蜂の巣をつついたように騒ぎ立てるのは目に見えている。これを阻止し、終戦宣言とその後の政治的過程を円滑に進めるためには、米朝首脳同士の協力と決断が必須となろう。

 

 

4. 先行的非核化措置と親書外交

 

 北韓(朝鮮)が米国と終戦宣言の日程に対する合意もなく先行的にICBM出力発動機(エンジン)実験場の閉鎖と西海岸の衛星発射場の解体、そして米軍遺骨の一部返還を行ったのは、終戦宣言を実行するための事前措置とみられる。特に、西海岸の衛星発射場の解体は公開されていない約束の履行で、米国を驚かせた。西海岸の衛星発射場は北の立場からすると、この20年間で最も重要な国策事業として推進されてきた国家宇宙開発事業の象徴のような場所である。これを解体するというのは北韓(朝鮮)略的に強力に推進してきた宇宙開発事業を中断することである。また、北に批判的な38ノース(north)がやむなく認めた通り、液体燃料のICBM開発中断の意義もある。実際において、このような措置はキムジョンウン(金正恩)委員長の朝鮮半島平和体制実現のための決断がなければ不可能なことである。

 . .

 現在まで北が取った非核化措置は、核とミサイル実験の中止、核実験場の閉鎖、ICBMエンジン発射の実験場の閉鎖、西海岸の衛星発射場の解体などである。反面、これに応じた米国が取った措置としては、韓米合同軍事演習の中断しかない。誰が見ても北の取った措置は非核化の実質的措置であり、もしも復旧させるとすれば多額の費用と時間がかかるのだが、米国はいつでも合同軍事演習を再開できる程度の措置しか取っていない。もはや、米国が答える番である。

 

 北韓(朝鮮)はトランプ大統領の決断を引き出すために、反トランプの北対陣営さえも認めるほどの破格の措置を取ると同時に、3回目の親書を送った。米国のハイテン略司令官でさえも北の潜在的非核化が「肯定的な方向」に動くのは「何者にも否定できない」と述べたように、北の先行的で果敢な非核化措置は、米国議会内外の懐疑的世論を静めている。さらに、普通であれば終戦後に実現されるような遺骨返還を一部行い、親書まで送っている。北は実務レベルで解決出来ない問題を首脳が直接動いて解決しようとする親書外交を効果的に行い、米国を宣言履行に引っ張り出している。

 

トランプ大統領が金正恩委員長の親書に対し、「あなたの“良い書簡(nice letter)”に感謝する」「再開を楽しみにしている」と北に返事を送ることにより、2回目の米朝首脳会談が日程にのぼっているようである。終戦宣言は板門店宣言で発表したように、南北と米国、または南北と米中の34か国の首脳が集まって発表されることだろう。元々、米朝間では北の外務省発表のように、終戦宣言を先月727日の停戦協定の日に発表する話合いが行われていたようである。既に北が米国の憂慮事項を減らした条件で、近い時期に34か国の首脳が一同に介する契機は、北の9.9節[建国記念日]70周年行事と国連総会である。

 

 

5. 非同盟中立化の統一

 

 朝鮮半島の平和体制が米朝間の係正常化と平和共存を実現する政治的条件をつくるものであるならば、朝鮮半島の非核化は米朝間の相互核攻撃の脅威を除去する軍事的条件をつくるものである。両者は互いに密接に関連しつつも区別されるものである。北の先行的非核化措置が終戦宣言という平和体制の初期措置の実行条件を作るように、朝鮮半島非核化の過程は朝鮮半島の平和体制実現の条件となる。逆に言えば、平和協定など朝鮮半島平和体制の実現は朝鮮半島非核化を妥結させる政治的基盤となろう。

 

 共同声明は北による朝鮮半島の完全な非核化と、米国による安全保障を明記している。しかし、安全保障はリビアの事例にあるように、平和協定や国交正常化のような政治的書簡で担保し得ないものである。必ず、それ相応の軍事的、物理的担保となる措置が追加されねばならない。言い換えれば、北の非核化が米国に対する核攻撃能力の除去だとすれば、これに相応した米国の北に対する核攻撃能力の除去もまた実行されねばならない。しかし、米国の北に対する核攻撃は、南側だけで可能なのではなく日本やグアム、米国本土からも可能になっている。現在のように核技術が極超音速[ハイパーソニック・hypersonic speed]と高度化した条件では、地理的条件は大きな問題ではない。実際北の立場からしてみれば、南側の駐韓米軍関連の非核化のみで、米国の日本やグアム、米国本土からの核攻撃能力はそのままにする状態で、自らの全ての核やミサイルを廃棄するということはあり得ないことである。だからと言って米国が北の非核化に応じて、日本や米国本土の核廃棄を行うことも、今すぐには不可能である。したがって米朝間では朝鮮半島の完全な非核化と安全保障の範ちゅうをどのように調整して妥結するのかということがキーポイントとなろう。

 

 これについてはトランプ大統領も理解しているようである。彼は米朝首脳会談後の単独記者会見の場で、北の20%非核化と駐韓米軍撤退の希望を表明した。トランプは北の20%非核化を「臨界点に達すれば逆戻りできない非核化措置」だと説明し、これに相応の米国の安全保障措置として、事実上の駐韓米軍撤退を示したのである。これは事実上、朝鮮半島の完全な非核化の意味を定義づけしたものである。即ち、米国が考える「合意可能な朝鮮半島の完全な非核化」とそれ相応の物理的安全保障の範ちゅうを提示した。北韓(朝鮮)もやはり“合意可能な非核化の範ちゅう”を提示するであろう。この合意の結果が主要な平和協定の内容となろう。

 

 このようにシンガポール共同声明の履行とは、米朝間の朝鮮半島領域で当面の核と軍事問題を平和体制実現と同時に、段階的に解決しつつ信頼を高め、係正常化を通じて平和共存を実現することである。

 

 予想される南北と米中の朝鮮半島平和協定は、駐韓米軍の撤退、駐日米軍の地位変更など、東アジアの秩序に大きな地殻変動を起こすものであろう。駐韓米軍の撤退は、ついに朝鮮半島が外国勢力の影響から脱して、自力で統一できる絶好のチャンスが開かれることである。一部には、もし駐韓米軍が撤退すれば朝鮮半島は過去のように中国の影響圏に属し、それを米国も憂慮していると主張する向きもある。しかし、多くの先覚者が示したように、統一された朝鮮半島は、いかなる大国、どんな同盟にも属さない非同盟中立国と位置付けられるだろう。米国もまた、統一した朝鮮半島が米国と対立する可能性を遮断させる中立化こそが利害に合致すると考えている。昨年3月に、米国反トランプ系列の政治専門雑誌フォーリンポリシー(FP)さえも、「米中は統一コリア政策を必要としている(China and America Need a One-Korea Policy)」というタイトルで、南北が米中と締結した同盟条約を破棄した前提で、朝鮮半島の非同盟中立化統一方案を示している。

 

 最近の2か月間、人類は世界秩序を揺るがす3つの事件を目撃した。米朝首脳会談とG7そしてNATO首脳会談、さらに米ロ首脳会談である。トランプ政府は戦後、世界秩序を主導してきたヨーロッパの同盟と激しく衝突し、長い対関係にあった北韓(朝鮮)やロシアとは和解を図っている。これは、戦後に大西洋同盟に代表された米国中心の覇権秩序がもはや限界に達したことを知らせる警鐘であり、新たな多極化秩序への移行を知らせる一大事件となる。米朝首脳会談は北の核武力完成による結果でもあるが、一方では米国衰退のやむなき選択でもある。したがって、板門店宣言も以前のように逆戻りはあり得ない。当然とも言えるが歴史はまっすぐ直線に進む訳ではない。常に反動は存在するし、紆余曲折は必然であるが、世界史的転換というこの大きな流れは、これ以上戻れない。もはや分裂と対立を乗り越え、予見される平和と繁栄、統一を迎える活動に邁進する時期に来ている。さらに、親善と互恵の新たなアジアの秩序を打ち立てていかなければならない。

 

 日本側発題① 渡辺健樹

板門店宣言・朝米共同声明と日本の課題

           渡辺健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)

 

 南北首脳による427板門店宣言と、史上初となる612朝米首脳会談・朝米共同声明は、朝鮮半島の恒久的平和体制構築と非核化への歴史的転機をもたらした。

何よりも、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)建国から70年にわたり、砲火を交え銃口を向けあってきた朝米首脳が歴史上初めて対面し、両首脳の名により包括的な目標が示されたことは画期的である。

 朝米首脳会談が成立した最大の理由は、朝鮮側が「制裁圧力」に屈したということではなく、米国側が朝鮮のICBM完成(あるいはその目前)を無視できなくなったからである。

 しかし、目標を実現していくためにはいくつもの紆余曲折が存在している。

朝米首脳会談後では初となる76日のポンペオ米国務長官の訪朝・後続交渉で、さっそく米国側は「朝鮮半島危機」の根源である朝鮮戦争の終戦宣言の問題は後回しにし、一方的に朝鮮側に非核化要求を迫った。またポンペオ長官は、共同声明にCVIDが明記されなかったことで、こんどはFFVD(最終的[Final]で最大限[Fully]の検証可能な[Verifiable]非核化[Denuclearization])なる新用語を持ち出しているが本質は変わらないだろう。さらにこの間、米政権側からは「完全な非核化まで制裁を維持する」ことが繰り返し語られている。

これらは612朝米共同声明に背く姿勢である。

612朝米共同声明は、「新たな朝米関係の確立が朝鮮半島および世界の平和と繁栄に貢献すると確信するとともに、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進できる」との認識の上に、①朝米は新たな関係の確立に全力を挙げる、②朝米は朝鮮半島の平和体制構築に向けともに努力する、③朝鮮は427板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の非核化に全力で取り組む、④朝米は戦争捕虜・行方不明米兵の遺骨収集と返還を進める-の4項目を宣言した。

この4項目は、同時的かつ段階的に進められることが必要であり、それによる信頼醸成があって初めて「朝鮮半島の完全な非核化」も可能となる。

朝鮮側は、ポンペオ長官との会談において、「朝米関係改善のための多面的な交流を実現する問題と朝鮮半島での平和体制構築のためにまず朝鮮停戦協定締結65周年を契機に終戦宣言を発表する問題、非核化措置の一環としてICBMの生産中断を物理的に実証するために大出力エンジン試験場を廃棄する問題、米軍遺骨発掘のための実務協商を早急に始める問題など、広範囲な行動措置を各々同時に取る問題を討議することを提起した」という(7/8朝鮮外務省報道官談話)

そして、現在すでに東倉里のミサイル関連施設の解体、米兵の遺骨送還などを実施している。一刻も早く朝鮮戦争の終戦宣言を行うことは急務である。この点では、ボールは米国側に投げられている。

ここで重要なことは、南北首脳による427板門店宣言で、「停戦協定から65年にあたる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換」するため南北と米国の3者または南北と米中の4者会談の開催を積極的に推進することが明記されていることである。

これを履行することは、南北が主導し米国にそれを求めて行くかつてない構図となっている。そして、これを着実に推し進めていく力は朝鮮半島の主人である南・北・海外の民衆、とりわけキャンドル革命により政権交代を実現した韓国民衆の平和と統一への闘いにある。

後続交渉では、国連軍司令部の解体や在韓米軍の撤収または何らかの地位変更問題などもまな板の上にのらざるを得ないと思われるが、私たち日本の民衆は、そのことが日米安保体制に与える影響をはじめ、日本と東アジアの平和にとってきわめて大きな意味を持つものであることを確認しつつ、皆さんの闘いを支持し、連帯していくものである。

 

朝鮮半島の歴史的転換と安倍政権

 

 南北首脳会談と朝米首脳会談、さらに朝中首脳会談など今年に入って以降の朝鮮半島問題をめぐる対話局面の中で一人蚊帳の外に置かれてきたのが日本の安倍政権である。

安倍政権は、昨年までの朝鮮半島をめぐる「戦争危機」の高まりの中で、トランプ米政権が唱えていた軍事力行使を含む「すべての選択肢」をいち早く支持し、朝鮮に対する「最大限の圧力」を一つ覚えのように繰り返しながら、朝鮮半島の緊張を煽り、それを最大限に利用して「戦争のできる国」作りを推し進めてきた。

安保法制(戦争法)に基づき自衛隊の米軍への戦争協力拡大、韓米-日米がリンクした事実上の日韓米合同軍事演習の推進、ミサイル発射装置と用地取得費別で2基で4,600億余円もの陸上配備型イージスミサイルシステム(イージスアショア)の導入推進、先制攻撃のための「敵基地攻撃能力(長距離巡航ミサイルなど)」の導入など米国からの高額兵器購入をはじめとした大軍拡政策、さらに「共謀罪」の強行成立などによる治安管理体制の強化を推し進め、憲法9条の改悪にまで手を付けようとしている。さらに「北朝鮮の脅威」を煽りながら、全国の自治体を巻き込み戦時動員さながらのミサイル防空演習に人びとを動員するなどしてきた。

また「北朝鮮制裁」の名のもとに、高校無償化から唯一朝鮮学校を排除するなどの差別排外主義政策を推し進め、そのことがヘイトスピーチなどを拡散する温床となっている。

 今年に入り平昌冬季オリンピックを契機とした対話局面に入っても、「微笑外交に騙されるな」「最大限の圧力を」と唱え続け、韓米合同軍事演習が延期となるや「これまで通りの規模で再開すべき」などと内政干渉発言すら行い、対話局面に冷水を浴びせることに躍起となってきた。

 427南北首脳会談、612朝米首脳会談が実現の見通しとなると、日本人拉致問題を政治利用し、文在寅大統領、トランプ大統領に「口利き」を依頼して回った。だが、それは自ら何らの方策も持たず、他国頼みの姿勢が明らかになっただけである。

いよいよ朝米首脳会談が実現すると、こんどは一転して日朝首脳会談を模索するポーズをとりはじめたが、依然として朝鮮敵視政策に変わりはない。

それを端的に示しているのが、朝米首脳会談が行われている最中の612日午後120分に種子島宇宙センターから対朝鮮を主目的とした軍事偵察衛星を打ち上げていることである。またイージスアショアの配備予定地とされる秋田・山口への説明も6月に入って行ない、朝米首脳会談後の6月末、小野寺防衛相が現地に出向く熱心さである。また平和の流れに逆行し、沖縄辺野古への米軍新基地建設で8月には埋立てのための土砂投入を予定し、さらにオスプレイの全国的配備まで行おうとしている。どこまでも軍拡と「戦争のできる国」をめざしているのである。

628日には、関西空港税関支署が修学旅行で祖国・朝鮮訪問を行った神戸朝鮮学校生徒のお土産品のほとんどを没収するという暴挙も行っている(これに抗議する緊急抗議署名は約1週間で7,600余の団体・個人に及んだ)

 

朝鮮半島の平和への動きと日朝国交正常化問題

 

安倍政権は、これまで拉致問題を日朝交渉の入口としてすべての上に置き、①拉致問題は日本の最重要課題、②拉致問題の解決なくして国交正常化なし、③拉致被害者全員が生きて帰ってくること-などを掲げてきた。そして、これが朝鮮敵視政策を包み込む世論の厚い壁を生み出してきたことも事実である。今回、安倍政権が「日朝首脳会談」を模索するポーズ取り始めているものの、「拉致問題解決に資する」のが前提だとしている。

しかし、そのこと自体が日朝ピョンヤン宣言の歪曲であり、拉致問題を含め日朝関係が一歩も進んでこなかった要因である。

日朝国交正常化の基本は、いうまでもなくかつて日本が朝鮮侵略・植民地支配をおこなった加害の歴史に対する反省の上に、これを誠意をもって清算することである。そもそも朝鮮半島の南北分断にかこつけて朝鮮への過去清算を避け、国交すら持ってこなかったこと自体が異常なことである。

拉致問題について言うなら、朝鮮側は、20029月の小泉首相の訪朝時に金正日国防委員長が謝罪し、当時日本政府が認定していた拉致被害者13名のうち4人生存、8人死亡、1人未入国と回答、認定外の1人の生存を通知し、生存者5人の帰国が実現した経過がある。その後、2014年の日朝ストックホルム合意を受け、朝鮮側が拉致を含む包括的な在留日本人の調査を実施、拉致関連ではほぼ2002年時点と変わらない調査結果から、日本側が報告の受取りを事実上拒否しているという(朝日国交正常化交渉担当大使・宋日昊氏)。 

「死亡」とされた人の家族が「生きて返せ」という感情を持つことは分からないではないが、政府が家族感情に乗っかり繰り返すのは外交ではなく、家族を利用したパフォーマンス、政権浮揚のための政治利用以外の何ものでもない。日朝国交正常化を進める中でこそ拉致問題の解決も見出せるのであり、拉致被害者家族に応えることでもあるのだ。

私たちは、427板門店宣言と612朝米共同声明で確認された朝鮮半島の平和体制構築と完全な非核化の道を支持し、日本政府が、「北朝鮮の脅威」を口実に進めてきた軍拡政策を直ちに中止すること。今こそ日朝ピョンヤン宣言を基礎として、不幸な過去の清算を基礎とした日朝国交正常化交渉を速やかに再開することを強く要求して闘っていくものである。

 日本側発題② 山元一英

朝鮮戦争休戦65周年・東アジアに平和を!7・27キャンドル行動

                   山元一英・日韓平和連帯共同代表

1. 4月27日南北首脳会談、6月12日米朝首脳会談の意義。

 

米ソの冷戦体制が崩壊し、最後の冷戦構造にあった朝鮮半島の南北分断、新たな戦争の脅威であった米朝対立が解消し、東アジアに平和体制が構築される情勢が生まれようとしています。南北分断から南北の平和統一へ、朝鮮戦争・休戦協定から戦争終結・平和協定へと平和の流れが、戦後世界史の大転換を期する出来事として、今私たちの前で起こっているのです。

この様な大きな成果をもたらせたのは、日本では朝鮮への制裁・圧力が功を奏したとの評価がなされていますが、決してそうではありません。一昨年の韓国におけるキャンドル革命は、朝鮮敵視政策を進める朴槿恵大統領を弾劾し、南北融和・「太陽政策」をとる文ジェイン大統領を誕生させました。そして今年に入り、平昌冬季オリンピックでの南北融和の前進、4・27南北首脳会談の成功を経て、6・12米朝首脳会談の開催へとつなげました。韓国キャンドル革命を成し遂げた民衆及び文ジェイン政権が果たした役割こそが、評価されなければなりません。

4・27「板門店宣言」では、朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終結、南北相互訪問、共同連絡事務所の開設、離散家族対面の再開、敵対行為の中止等で合意されました。同じ民族の分断に終止符を打つべく、南北の平和統一の道が切り開かれました。とりわけ東北アジアの平和勢力にとっては、朝鮮戦争の終結と軍事的緊張の根源となる敵対行為(米韓合同軍事演習)の全面中止は、戦争ではなく平和を築くうえでの大きな合意事項といえます。

そして、史上初の6・12米朝首脳会談が開催され、「共同声明」が発せられました。「共同声明」では、敵対関係を克服(米韓軍事演習の中止)し、新たな米朝関係の確立、持続的で安定した平和体制(朝鮮戦争の終結と平和協定締結)を築く努力、板門店宣言を再確認し、朝鮮半島における完全非核化の努力、米軍兵士の遺骨の収集の四点で合意されました。

その後、南北では6月14日「南北将軍級軍事会談」、16日「南北体育会談」、22日「南北赤十字会談」が持たれ、民族の和解と団結、平和と統一に向けた取り組みが進められています。また、米国は6月19日「8月米韓合同軍事演習」の中止を決定、トランプ大統領は20日「朝鮮戦争戦死者遺骨200体の返還を受けた」ことを明らかにしました。また同日朝鮮は、「西海衛星発射場(ミサイルエンジン試験場)」を廃棄することを表明しました。このように、南北、米朝間の対話は着実に進展しており、日本での報道が皆無なのが心配の種です。

 

2. これからの、日本と朝鮮半島との関係をどうするのか。

 

  中国、朝鮮・韓国、日本は、紀元前の時代からの歴史を刻み、相互の文化・交流を行ってきました。しかし、近代日本は、世界の帝国主義陣営に組し、アジア諸国を植民地化とする軍国日本となりました。朝鮮、台湾を植民地化し、中国に満州国をでっちあげ、皇国臣民を強制し、悲惨な戦争に駆り出しました。この戦争での犠牲者は、アジアでは2000万人以上、日本人も320万人といわれています。敗戦後日本の民主化は、米国の反共政策に従い、朝鮮戦争を契機に自衛隊の発足、憲法・民主主義の形骸化が促され、現在でも、日本軍慰安婦問題、朝鮮学校無償化排除問題、外国人の参政権問題等、民族差別、排外主義を克服すべき課題が山積しています。これらの課題を無視し、朝鮮の核・ミサイルの脅威をあおり、国家間・民族間の不信を助長していては、共生、共存の国際関係を造ることは不可能です。朝鮮による「日本人拉致問題」は大きな問題ですが、2002年の金正日氏と小泉首相との間で交わされた「日朝平壌宣言」に立ち返り、植民地支配の清算、戦後補償と拉致問題の包括的解決に向け、日朝の国交正常化の再開を開始すべきです。

 

3. 今回の会談が日本の労働運動、平和運動に及ぼす影響は?

 

これまで安倍政権や保守勢力は、被爆国日本の「核軍縮の素朴な願い」を利用して、核・ミサイル開発をすすめる朝鮮を「独裁国家」「テロ国家」と宣伝し、多くの国民に「北朝鮮」脅威論を流布してきました。そして、朝鮮の核・ミサイル攻撃から日本を守ると称して、米軍再編強化、自衛隊軍事装備の増強、集団的自衛権行使が出来る戦争法の制定、9条改憲等、日米軍事一体化を推し進めてきました。しかし、「北朝鮮」からすれば、朝鮮戦争から65年経た現在も戦争終結がなされず、朝鮮の国家体制転覆を意図する米韓合同軍事演習が恒例のように続けられ、昨年末には東北アジアでの新たな米朝戦争の危機が、極度に高まりました。今回の南北・米朝首脳会談の成功は、朝鮮戦争の終結と休戦協定を平和協定へと転換させ、世界最後の冷戦体制である朝鮮半島に平和をもたらす可能性を切り開きました。私たちは、米朝首脳会談の共同声明に述べられた「米国と朝鮮の新たな関係樹立や朝鮮半島の持続的で強固な平和体制の構築」を断固支持し、東北アジアの平和構築に奮闘することが、日本の平和にとって重要であることを自覚しなければなりません。

ところで日本では、南北・米朝会談での「朝鮮半島の非核化」を「北朝鮮の非核化」に矮小化し、平和構築に水を差す論調が多くみられます。世界から核兵器を根絶する課題は、すべての核保有国に課せられた課題です。朝鮮半島の非核化は、当然にも最大の核保有国である米国の核兵器削減や、韓国に配備されている中距離弾道ミサイル問題にも波及するものです。日本のプルトニュウム保有問題も、無関係とは言えません。朝鮮半島の非核化問題を、米国、中国、ロシアの核軍縮へと波及させなければなりません。

この様に、南北関係の平和統一の前進、米朝関係の改善による朝鮮戦争の終結は、また米韓合同軍事演習の完全なる廃止が実現するならば、沖縄の在日米軍基地強化の必要性も、日米軍事同盟と化した安保条約も、その存在理由の根拠を弱体化するに違いありません。日本における反戦平和運動の前進にとっても、朝鮮半島の平和構築と日朝国交正常化の取り組みは重要な課題となっています。

 

4.このような認識に立ち私たちは7月27日、「朝鮮戦争休戦65周年、東アジアに平和を!7・27キャンドル行動」を、大阪靭公園に1500名が結集し、平和「PEACE」の人文字を完成させ御堂筋デモを行い、街行く人々に朝鮮戦争の終結、平和協定締結を訴えました。9月18日には、日朝国交正常化と9条改憲阻止を掲げ、安倍政権打倒に向けた集会を準備する予定です。今こそ「コリア国際平和フォーラム」国際連帯が重要な時はありません。ともに東アジアの平和体制確立に向け頑張ろう!

 特別報告 森本孝子

朝鮮学校差別に抗して

森本孝子・「高校無償化」からの朝鮮学校排除な反対する連絡会事務局

(1) 朝鮮学校創設からの不屈の闘い

 日本の植民地支配から解放され、朝鮮に帰ることを期待して、在日コリアンたちは各地に朝鮮語を学ぶ国語教習所を設立した。長い間の日本での生活で、母国語を話せない子どもたちに母国に帰って困らないように言葉を教える目的で建てられたものが、やがて学校として整って行ったのが朝鮮学校だ。私が住んでいる荒川区には東京で最も大きな朝鮮第1幼初中級学校がある。その正門の所にある松の木の杭は、学校創設時の1世たちの思いがこもったものだ。当時は「金のあるものは金を、知恵のあるものは知恵を、力のあるものは力を」とそれぞれが持っているものを出しあいながら、子どもたちに学びの場を手作りで作っていった。大きな道具がない中で、校舎が地震などの災害にあった時でも揺るがないようにと、地中深く、松の木の杭が打ち込まれた。この杭は第1回目の校舎建て替えの時には出てこなかったほど、深く深く、その愛の深さを象徴するように打ち込まれていた。しかし、各地に数々の朝鮮学校が作られていく中で、1948年、朝鮮学校に「閉鎖令」が出されるようになった。この閉鎖令によって、各地域では朝鮮学校を守るための闘いが展開された。西日本では兵庫や大阪を中心にした非暴力の大きな運動が展開されたが、その中で日本では戦後初めて「戒厳令」が発せられ、アメリカ軍と日本政府による弾圧の中で、一人の少年が射殺されると言う4・24事件が起きている。ちょうどこの年には、韓国済州島で4・3事件が起きていた。

東京では、「東京都立朝鮮人学校」が設立され、朝鮮学校は東京都の管轄下に入った。この学校には日本人教師が派遣され、朝鮮人生徒たちを教えた。その中に、給料が良くなるからと言う理由で赴任した、梶井陟がいた。梶井は生徒たちから朝鮮語の生徒名が読めないと嘲笑され、生徒と心を通わせるために朝鮮語を学び、やがては朝鮮語の辞典も編むほど、朝鮮の子どもたちの教育に打ち込んだ。梶井の書いた経験談が本になり、一時絶版になったが、田中宏先生は今こそこの本が必要だと出版元の岩波書店にかけあい、再出版となった。

 朝鮮学校が学校として認められるために、長い間の闘いが展開された。通学用の定期券獲得や、高校体育大会への参加、大学受験資格獲得など、闘いなくしては得られなかった。民衆の力が大きく動いた東京都知事選で選出された美濃部都知事は、反対する人々が多い中、朝鮮大学を認可し、そのあと各地方自治体が、各地の朝鮮学校を認可して補助金を支給するようになった。今の日本からは考えられないような時代だった。

 

(2) 朝鮮学校無償化排除と差別の現状

 2010年民主党政権は、長年留保していた国連社会権規約の後期中等教育の無償化に踏み切り、留保を解除した。「高校無償化法」は全ての学ぶ意欲にある高校生に、経済的負担をかけないように政府が公立学校生は無償に、それ以外の学生には支援金を支給すると言うものだった。画期的だったのは、対象校に外国人学校を含めたことだったが、民主党政権内部から「拉致問題に進展がない中で朝鮮学校を無償化することは国民の理解が得られないのでは。」という異議がでて、朝鮮学校は無償化適用するかどうか、審査することになった。 

文科省は対象校を3分類し、国交がある国の学校は(イ)国交がなくても国際基準に合っている学校は(ロ)として(イ)(ロ)は無条件で支援金支給、朝鮮学校は(ハ)に分類され、審査会が重ねられた。当時野党だった自民党は、のちに文科大臣になる下村博文が、審査に通りそうとなった時に「(ハ)」の条項を削除するという案を提案し、実際に政権交代で自民党が政権を取ると、安倍政権は最初の政策として、朝鮮学校無償化不適用を通知し、(ハ)の項目を削除し、永遠に申請できないようにした。すでに外国人学校43校が無償化法による支援を受けている中で、朝鮮学校だけが排除され続けている。2013年2月20日のこの日を忘れず、私たちは全国の朝鮮学校支援者に呼び掛けて、朝鮮学校差別反対、無償加即時適用を求める全国運動を行ってきた。

しかし、朝鮮学校差別は無償化排除にとどまらなかった。各地方自治体が支給している補助金についても奪う攻撃が行われた。当時の東京都の石原知事、大阪の橋下知事を中心に、埼玉や千葉、神奈川など次々に補助金が廃止されていった。東京都は、石原都知事の「調査の結果、廃校になってもやむなし。」と言う指示のもと、朝鮮学校調査委員会を作り、教育内容、経営について結論ありきの調査を行い、結果を公表しホームページに掲載した。それをみて、ヘイト書き込みが続出した。この調査結果は2年以上掲載されていたが一度ページ刷新の理由で削除され、小池知事が誕生すると、即再掲載された。通常は問題になった学校については、校名を伏せて掲載するのに、朝鮮学校だけは名前を公表してさらし者にしてきた。そして、2016年3月29日、自民党の「拉致議連」からの要請で、文科省は、補助金を継続している地方自治体に対して、「補助金支給に関しての留意点」と言う通知を出し、各自治体が自主的に廃止するよう促した。この通知を受けてこれまで支給していた補助金を停止や減額するところが激増した。朝鮮学校は経済的な締め付けや差別にさらされると言う攻撃の中で、不屈の闘いを続けている。

 南北会談が実現し板門店宣言が発表され、米朝会談も実施されて朝鮮統一、平和への動きが加速されている現在にもかかわらず、安倍政権は相変わらずの圧力政策を転換しようとしていない。在日朝鮮人に対する日本独自の制裁は10年以上も継続され、その中には、朝鮮高校生が祖国訪問から帰国したときに持ち帰る土産品も対象になっている。6月28日には、神戸朝鮮高校生が帰国した際に、土産品を全部没収されると言う惨い事件が起きた。翌日に行われたモンダンヨンピル公演ではこの生徒たちが冒頭の素晴らしい演奏とダンスを披露した。モンダンヨンピルの団員や支持者は帰国後、朝鮮学校支援者とともにすぐさま、日本大使館に抗議してくれた。私たち無償化連絡会でも国会議員を通して、経産省・財務省・内閣府に対して抗議声明を提出し、話し合いの場を持った。この抗議声明には、1週間くらいの間に、7600人を超える団体や個人の賛同が寄せられた。しかし、今年2月に起きた朝鮮総連中央本部への銃撃テロについては、日本政府は何の声明も出さず、国会でも全く問題にならなかった。こうした日本の現状はおかしいと、私たちは大手新聞社への社説掲載要請を行い、また、国会議員へのロビー活動も行った。また7月18日には、神奈川県下の朝鮮幼稚園に対して、ヘイト集団だと思われる人たちによって、ガラス窓が破壊される事件が起きている。「ヘイトスピーチ解消法」が成立して2年の日には、在日コリアンが多く居住する川崎市で、ヘイト集団による講演会が企画され、条例や公共施設利用のガイドラインが作られているにも関わらず、市長がそれを認めてしまうと言う事件が起きた。500人以上のカウンターによって集会は中止を余儀なくされたが、そこで、警官が守っていたのはヘイト集団の側だった。海外からも極右政権と称されている安倍政権によって、今、日本社会はかつてのナチスの時代のような状況が起きていると言っても過言ではない。

 

(3) 朝鮮学校支援の動きと今後の展望

 2014年韓国で「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」が結成されて、今年6月に第10次の訪問団が来日し、力強い支援活動を展開してくれている。(この活動については韓国側からの報告があると思う)

同じ年2014年8月には、国連人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、「朝鮮学校無償化排除は差別であり、即時適用すること、そして、地方の補助金についても支給するように中央政府が指導すること」という勧告を行った。すでに社会権規約などからも勧告は出ていたが、この勧告は重要勧告4つの中に位置づけられ、しかも補助金についても勧告したことは画期的だった。しかし、日本政府は「国連の人権勧告に従う義務なし」と閣議決定し、無視し続けている。その日本政府は2017年から国連人権理事国に就任し、2020年のオリンピックには人権大国になると宣言している。オリンピック開催地の東京が率先して朝鮮学校差別をしていることはオリンピック憲章違反ではないのか、と私たち支援者は東京都に抗議している。

また、海外在住の日本人やコリアンの方々からの支援の声も届くようになった。カナダ在住の長谷川さん、乗松さんは。朝鮮学校差別に抗議する声明を文科省と政府に提出し、多くのカナダの著名人や市民が賛同署名している。乗松さんは学生たちが毎週金曜日に文科省前で行っている金曜行動にも参加され、この声明を披露してくれた。金曜行動とは、朝鮮大学の学生が企画して、毎週学部ごとに文科省前で抗議行動を継続しているものだ。時には高校生や神奈川や千葉などからも学生や支援者が参加し、毎週金曜日に1時間の抗議行動を行っている。学生たちは自分の言葉で、文科省に向けてなぜ、朝鮮学校だけが排除されるのか、植民地支配の結果としての言語や文化剥奪の歴史を知っているのか、と一人一人が訴える。その姿は多くの参加支援者の心に深い感動を与え続けている。学生が参加できない時には支援者が継続し、すでにその数は300回を超えた。

 また、2014年に全国5か所で国を訴える裁判が提訴され、地裁での判決が出てきている。大阪では画期的と言える、原告勝利を勝ち取った。裁判長は自ら資料を読み込み、学校と民族団体の関係についても歴史的に意味があることと判断し、無償化適用をすべきであると、判決した。しかし、その前後に行われた判決では、広島も東京も敗訴した。裁判長は、国側から提供された公安警察庁の総連に関する資料や、政権寄りの新聞の資料など、明らかに偏った資料を裁量し、原告敗訴とした。さらに愛知でも敗訴判決が出された。福岡だけはまだ地裁判決が出ていないが、9月20日に結審する。そして4か所ではそれぞれ高裁での審理が進み、9月には大阪の、10月には東京の高裁判決が出る予定だ。

朝鮮学校への不当な差別を訴え多くの支援者を得るために、私たちはあちこちの集会でアピールしたり、各種団体の広報に記事を書いたりしてきたが、何と言っても今年初めからの南北会談や朝米会談の影響が表れてきたのか、裁判の報告集会に国会議員が複数参加して発言したり、朝鮮中高級学校を地方議員含めて10人以上の議員が参加したりと言う状況が生まれてきている。各地域での街頭宣伝にも議員が参加するような報告もある。朝鮮学校無償化排除、補助金廃止の攻撃は、日本の植民地支配、侵略戦争の歴史を否定し、新たな戦争国家へと進む攻撃の核になる問題だ。文科省との交渉では、「なぜ、日本の学校に行かないのか、そうすれば多額の援助が受けられるではないか」と平然と発言する官僚の不勉強に愕然とする。植民地支配から引き続く日本への同化政策に何の反省もない。私たちは、安倍政権のこうした攻撃に対抗し、朝鮮学校こそ、日本で守るべき学校であることを確信し、今後はもっと支持者を拡大できるよう、韓国での支援に力をいただきながら頑張っていきたいと思う。

2017年6月18日 (日)

●【詳報】6・10ソウル国際シンポ「コリア国際平和フォーラム」を開催

20170611

 

610日、ソウルの韓国国会議員会館で「コリア国際平和フォーラム(KIPF)」が開かれた。このKIPFは日本や米国などと韓国の平和団体の交流と連帯の歴史を踏まえ、2013727日、ソウルで開かれた朝鮮戦争停戦協定60年「国際平和大会」で結成しようと決議されていたもの。

 

そして今年、韓国側から「特に、サ(THAAD)配備の問題は朝鮮半島のみならず米と中ロシアの対立に拡がっており、日本は朝鮮半島の軍事的決を利用し、軍事大国化の道を歩み始めています。このような時に、際平和運動勢力との連帯と共同の闘いは、朝鮮半島の恒久的平和を現するのに決定的な力となるでしょう。今年、87年民主化30キャンドル市民革命により朝鮮半島の激動期を迎えているこの時期に、コリアの平和のためのソウル際フォラムを開催しよう」との呼びかけを受け開かれた。

 

 

【主催】キム・ジョンフン議員、独立有功者遺族会、ソウル進歩連帯、ソウル平和会議、良心囚後援会、全国大学民主同門会協議会、全国民主労働組合総連盟(民主労総)、反戦平和国民行動、チョン・ドンヨン議員、平和3000、統一の道、韓国労働組合総連盟(韓国労総)、朝鮮戦争前後民間人犠牲者全国遺族会、韓国進歩連帯、6.15言論本部、6.15学術本部、KIPFKorea International Peace Forum

 

【後援】6月民主抗争30周年事業推進委員会、6.15共同宣言実践南側委員会、インターネット言論「民」プラス、サード配備阻止全国行動

 

 

日本からは、藤本泰成・平和フォーラム共同代表、渡辺健樹・日韓ネット共同代表、山元一英・日韓平和連帯(大阪)共同代表をはじめ各団体から9人が参加した。また海外からのスピーカーとして、ミシェル・チョスドフスキー・オタワ大学名誉教授、シオン・レイ中国人民大学教授、ヨーイチ・シマヅ中国清華大学教員なども一堂に会した。

 

 

フォーラムでははじめにキム・サムリョル(独立有功者遺族会代表・KIPF共同代表)、キム・ジョンフン国会議員が主催者を代表して挨拶を行った。

 

20170611_2                 チョスドフスキー氏

続いて、以下の発題と討論発表が行われた。【別掲で発題全文掲載】

 

【発題①】韓国の政権交代 第二の太陽政策 非武装化と平和プロセス

 

         ミシェル・チョスドフスキー オタワ大学名誉教授

       http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-9ef1.html

 

【発題②】朝鮮半島の恒久的平和体制に移行する激変期の情勢と闘争課題

 

         ハン・チュンモク 韓国進歩連帯常任代表

       http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-a304.html

 

【発題③】朝鮮半島平和プロセスの利害当事者とトラブルメーカー

 

         シオン・レイ 中国人民大学教授

       http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-1c0e.html

 

【発題④】米韓の政権交代と安倍政権の動向、日本平和勢力の課題

 

         渡辺 健樹 日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表

       http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-755e.html

 

 

4人の発題を受け、休憩後、韓国のTHAAD反対闘争の映像が流され、続いて討論に移った。

 

【討論①】日本社会の右傾化-暴走する安倍政権 

 

藤本 泰成 フォーラム平和・人権・環境共同代表

 

【討論②】東アジアの平和構築の現況

 

         山元 一英 日韓平和連帯共同体表

 

【討論③】サードの裏に隠された狙い-朝鮮半島非核化を「撃墜」

 

         ヨーイチ・シマヅ 中国清華大学教員(日系米国人)

 

【討論④】韓国のサード配備阻止運動の意義と展望

 

         キム・ピョンギュ 戦争反対平和実現国民行動共同執行委員長

 

 

 

討論の全体としては、トランプ米新政権の対朝鮮半島政策に対する分析と対応策、キャンドル革命を背景とした韓国新政権の展望、そしてその中での日本の安倍政権の動向などついて論議が集中し、いまや朝鮮半島の平和をめぐり決定的な分岐点に入ってきていること、サードの韓国配備反対をはじめ今後の朝鮮半島の恒久的平和体制構築に向けた課題について確認した。

 

 

 

876月民衆抗争30周年 民族民主烈士追慕祭などに参加

 

6/9】今回、私たち東京・大阪の日本訪問団は9日にソウルで合流し、韓国の仲間たちや先乗りしていたチョスドフスキーさんらその他の海外組とも合流。その後、私たちの歓迎も兼ねた韓国民主化運動・平和統一運動の記念祝賀宴にも合流した。

 

ここでは、日本政府の朝鮮学校への「無償化」差別に反対する金曜行動の場と化した。金曜行動とは日本政府の朝鮮学校への「無償化」差別に反対して東京・文科省前で朝鮮学校生徒や「無償化連絡会」の人たちなどにより毎週金曜日に取り組まれているもので、ソウルでもこれに連帯して韓国の「ウリハッキョと子供たちを守る市民の会」が日本大使館前で毎週金曜日に取り組んできた。今回は大使館前ではないが、集まった韓国の人びと、チョスドフスキーさんや日本からの訪問団もバナーを掲げて意思表示した。

 

201769_9_2

201769_11_2

201769_12_3

6/10】翌10日、前述のコリア国際平和フォーラムを終えた一行は、ソウル市庁舎前で開かれた876月民衆抗争30周年 民族民主烈士追慕祭に参加した。

 

我々は、フォーラムとの時間の関係で文在寅大統領の記念演説には立ち会えなかったが、文在寅大統領は「歴史を変えた2人の青年、朴鍾哲と李漢烈を永遠に記憶する」と述べ、「6月抗争とキャンドル集会を通じ、民主主義を継承してきた市民こそ、歴史の主人公」、キャンドル革命は「未完の6月抗争」の完成を求めているとし、「制度としての民主主義が後退することは、もうない」と強調したという。

 

追慕会終了後、参加者全員が正面に掲げられた民主化闘争・平和統一闘争のなかで斃れた烈士の遺影に献花し、新たな闘いへの決意を固めていた。

 

P1010123_640x480_2
P1010121_640x480_2
19205011_1510915512314058_163337029

  日本訪問団の東京組は、翌11日早朝、東京で予定されている611東京シンポのためとんぼ返りした(韓国ゲストとチョスドフスキーさんも)

 

 【ソウルシンポ発題】ハン・チュンモク韓国進歩連帯常任代表

20170611_4
朝鮮半島の恒久的平和体制に移行する激変期の情勢と闘争課題

 

ハン・チュンモク

韓国進歩連帯常任代表

 

 

朝鮮半島情勢の特徴 : 朝鮮半島の軍事的対立が構造的に激化しつつ、決定的な分岐点に差しかかっている。

 

北の核、ミサイル能力が高度化し、これまでの軍事オプションが事実上失われ、対北政策の転   換を迫られる米国 トランプ政権が登場し、対北政策の新たな基調を発表

 

 オバマ政権が「戦略的忍耐」で滞っていた間に、北の米本土に向けた核攻撃能力は格段に向上した。北は5回の核実験を経て、核頭の小型化、多種化、標準化の段階に入ったことを明らかにし、固体燃料、移動式発射台、大気圏突入技術など、ミサイル攻撃能力も向上し続けている。

―朝鮮半島の軍事的対立は構造的に激化し、相手への先制攻、報復能力が向上する中で、米国の対軍事オプションが失われ、米朝間の激突は決定的な分岐点に差しかかっている。

これまでの制裁や体制崩壊政策の失敗が明確になる中、政策換に迫られたトランプ政権は原子力空母などを朝鮮半島の東海に展開させることを発表、4月には先制打撃論までちらつかせながら、朝鮮半島の戦争危機説をあおり、軍事的決を激化させた。

426日、米国上院議員の全員をホワイトハウスに招き、新たな対政策の合同ブリーフィングを行った。また、この会合後にはティラソン務長官、マティス防長官、コ家情報長官が共同明を表し、「北朝鮮の核、ミサイル発射実験を断念させるためのこれまでの努力は失敗に終わった」として「戦略的忍耐」政策破棄を宣言し、北朝鮮は「家の安全保障にとって差し迫った脅威」と見なし、外交上の最優先課題とした。

さらに、経済制裁を、同盟国など域内パートナーの外交的手段で圧力をかける方針を示し、中国が役割を果たすことを強く求めた。また、「国は朝鮮半島の安定と平和な非核化を追求する。われわれはその目標のために、交渉のドアはオープンになっている」と強調した。

53日、ティラーソン国務長官は「北朝鮮の政権交代や体制の崩壊、朝鮮半島の統一を加速化させようとするものではない」と言及。 

―トランプ政権は現段階において、北への経済制裁による「最大の圧迫」を行いつつも、これまでのオバマ政権とは異なり政権交代や体制崩壊の意思はないことを明らかにし、渉もオープンにしていくものと思われる。 

 

米朝間で半官半民の接触が始まる 

 

 58日日、オランダで米朝の1.5トラック[半官半民]の接触があった。北朝鮮外務省のチェ・ソンヒ北米局長と「ニュー・アメリカ財団」のスザンヌ・デマジオ上級研究員が会合した。 

 会合のあった59日、日本のマスコミは一斉に、トランプ大統領が北の核放棄を条件に米朝首脳会談を提案したと報道した。日本のマスコミでは、トランプ政権が首脳会談を提案しながら、体制の換は求めない、金正恩政権の崩壊は追求しない、南北統一を加速化させない、米軍は38度線を越えて北上しない、などの原則を伝えたと報道され、一連の変化がみてとれる。 

トランプ大統領は最近金正恩委員長について、「権力を良く掌握している」としながら「適切な環境で会えるなら光栄だ」とも述べている。 

 

○ 米朝対決の臨界点に達しつつあり、朝鮮半島の冷戦、戦争構造の解体を早め、拡げていく作   業が必要だ。 

 

―北側の核、ミサイル能力は高度化を続けている。昨年4,000km級中距離ミサイル射実験に成功し、最近では6,0008,000km級ミサイル射実験、大気圏突入に成功している。移動式技術、固体燃料技術などの機動性、安定性も高度化していると評価されている。米本土に向けた攻撃 能力の現実化が超スピードで進んでいる。

―トランプ政権は、これまでの「戦略的忍耐」政策の失敗をハッキリ知っている。

―長期にわたる消耗する政権崩壊策や体制換の意思はないということを明らかにし、「核、ミサイルの放棄」という目標に集中する模様。最近は、「開発中断」による「再開」まで述べられている。 

 渉による平和的解決 vs 軍事的方法による戦争の現実化という鋭い対立点から、対話か戦争かという決の最終段階に入っている。渉が本格化する時まで、北のミサイル射は続くだろうし、国もまた対制裁の、軍事的デモンストレーションなど、強硬策に注力するだろう。 

 もし、交渉が始まれば、過去の「段階的合意」よりも「包括的で戦略的合意」に達する蓋然性が高く、そうなれば、長期間の米国の朝鮮半島への介入や支配政策に決定的打撃になるだろう。この過程で、米軍の駐留問題、韓米同盟の性格などをめぐり、韓会の内部で保守勢力との厳しい決局面も予想される。 

 

 トランプ対北政策の限界と朝鮮半島平和体制の樹立

 

 トランプの政策は、非軍事的迫による北の核問題解決であり、オバマの「戦略的忍耐」と本質的にはそれほど変わらない。ただ、違いがあるとすれば、中国を巻き込んで圧迫のレベルを最大限高めているということ、またオバマ政権に比べ、国にはそれほど時間的余裕がないということだ。 

 国も北朝鮮の非核化に共通の利害係があるので一定程度、北圧力に協調しているが、北との係を破局に持ち込むほど圧力レベルを高めることは出来ないだろう。したがって、国による圧力や国の様々な圧迫により、北の核ミサイル能力化を阻止することは出来ないだろう。

 北は核強国の地位を固め、その力を基礎に米国との平和体制を樹立させようとしているのが明確なので、スピーディーに核ミサイル能力の化を図るだろう。

 このようなところから短期的にみると、朝鮮半島の軍事的危機は極度に高まる可能性が高いが、北の米国本土に向けた攻撃能力が完成され確認されれば、米国は否応なしに戦争か平和か、二者択一を迫られるだろう。また、このような状況になれば、核凍結と平和協定の締結は現実の問題となるに違いない。

 

○ 今は韓国社会の矛盾の根源が崩壊しつつある歴史的転換であり激変期である。 

 

 今は韓会の漆黒の根源である体制が崩壊していく換期であり、断と外国勢力に寄生し、会を支配してきた親米保守勢力の支配基盤が倒れていく激変期だ。

 核ミサイル能力急速されるにつれ体制解体平和体制樹立をめぐる米朝終着点かってんでいる。また、朴槿恵の国政私有化に怒り立ちあがったキャンドル抗争は、積もり積もった過去の弊害と社会の大改革闘争へ進み、数十年間韓国を支配してきた親米保守勢力の権力基盤を弱体化させながら民主的革を進めている。

 今はこのような二つの化が交差しながら展し、会の矛盾の根本的解決に向かう激変期であり換期である。 

 

 キャンドル抗争の意義とムン・ジェイン(文在寅)政権のスタート

 

  キャンドル抗争は、保守独裁政権による反民主的、反民衆的弊害を算し、実質的に国民主権を現するための民主的運動だ。これは、朴槿恵退陣と逮捕により第1段階を勝利で結び、大統領選挙で文在寅政権を打ち立てることにより第2段階を越えた。そして、実質的な積弊算と会の大改革完成という第3段階に差しかかっている。

  文在寅政権は、金大中、盧武鉉権と登場とはその性格が異なる。金大中、盧武鉉権が保守の強い政治的基盤のもとで発足したとすれば、文在寅政権はキャンドル抗争により保守の政治的基盤が急速に瓦解している状況で作られ、積弊算と社会の大改革という国民的要求と支持を基に打ち立てられた。したがって、文在寅政権をキャンドルの力と切り離してみることは出来ない。

  キャンドル抗争は韓会を支配してきた保守の政治的権力基盤を弱体化させ、反民主的な積弊算を行い実質的民主化により韓国の民主的展を成し遂げるという意味では大きな歴史的意義があるが、革の根本課題である自主的革へと展できていないという限界がある。

― したがって、文在寅政権が積弊の中の積弊である断による積弊を清算し、朝鮮半島の恒久的平和体制を構築する道に進むよう国民的抵抗と闘いを続けて行かなければならない。南係を改善、展させ続けることこそ、朝鮮半島平和構築の重要な要素となる。

 

自主統一運動の全盛期を開き、反戦平和運動と反米自主化運動を高めて、朝鮮半島の  平和体制を打ち立てよう

 

  米朝決が最終段階に差しかかると危機が高まり、危機が高まるほど平和を守るための反平和闘争と南北係の改善、自主統一闘争はさらに重要となる。朝鮮半島の平和を守り、自主化を成し遂げ、韓国社会の民主的革を完成させるための中心的課題は、平和体制を打ち立てることだ。このためにも反平和運動を化し、自主統一運動の新たな全盛期を切り開くことが求められている。 

  自主統一運動の核心は、こう着状態にある南北係を改善し、話と交流を通じて和解協力の時代を切り開くものになるべきだ。そして、キャンドル抗争で文在寅政権が誕生した有利な状況に合わせ、祖国統一闘争は大胆に進めなければならない。 

  平和運動は、根本的に停体制を終息させ、恒久的平和体制を樹立することを目標に進めるべきだ。このようなところから、軍事訓練の中断とサド配備撤回を求める闘いを進めつつ、それが平和体制樹立の闘いに結びつけ、平和体制樹立運動を反平和運動の中心に据えなければならない。 

  そして、南北係の改善(ケソン/開城工業団地の再稼働、金剛山観光の再開、全民族大会、交流協力の活性化、6.1510.4宣言の履行)、平和協定締結、軍事訓練の中止、サド配備の撤回、敵対政策の撤回と再開のための闘いを適切に配置して進めるべきだろう。特に、新政権のもとで南北改善の活動を強めることが必要だ。

 

朝鮮半島の恒久的平和体制実現のために、強力な国際連帯、平和闘争を進めよう

 

―朝鮮半島の平和は東アジアの平和、世界平和を現するためにも重要だ。したがって朝鮮半島の  平和は南と北、米朝間の対決と交渉のみで解決するのではなく、国際的な平和連帯を通じて、各国政府に圧力をかけ牽引するとき実現可能なものとなっていく。

国際的な平和運動を通じてサド配備の撤回、韓米合同軍事訓練の中断と米国の対北敵視 政策の破棄が行われなければならない。また、北の核凍結、非拡散に応じた形で、話と渉による平和協定の締結が現されなければならない。

 

<本日の「コリア国際平和フォーラム」を機に、朝鮮半島の恒久的平和実現のために国際共同行動をご提案します。具体的には今年815日、ソウルで行われる南と、海外同胞が共に集う民族共同行事に合わせ、アジアと世界平和の実現を願う心を込めて、世界中で ‘2017.8.15. One Korea Peace Day’‘ とコリア平和実現のための国際宣言と共同キャンペンを行おうということを提案したいと思います。>

 

朝鮮半島の恒久的平和を現しようとするわれわれの闘いは、東アジアの平和、世界の平和と繁栄の礎になるという確信と共に、各国の現場で孤軍奮闘される参加者皆様に改めて敬意と感謝を表する次第です。

 【ソウルシンポ発題】渡辺 健樹 日韓ネット共同代表

米韓の政権交代と安倍政権の動向、日本平和勢力の課題

―朝鮮半島の緊迫に乗じて目的の達成狙う安倍政権―

 

渡辺 健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)

 

*本稿では大韓民国は韓国、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮と略称を用います

(1)はじめに                                         19205141_1510915482314061_181441541

 朝鮮半島をめぐる一触即発の軍事緊張は引き続き続いているが、米・日・韓(代行)政権やマスメディアが喧伝していた「4月戦争危機」が過ぎ、新たな変化の兆しが生まれつつあると思われる。

 トランプ米新政権は、「(オバマ前政権の)戦略的忍耐の時代は終わった」としながら軍事攻撃を含む「すべての選択肢はテーブルの上にある」としていた段階から、4月末以降、対朝鮮4大方針」(朝鮮を核保有国として認めない、②全ての制裁と圧力を加える、③朝鮮の政権交代を推進しない、④最終的には対話で問題を解決する)4つの『しない』原則」(朝鮮の政権交代、②政権崩壊、③統一の加速化を目標とせず、④38線を越えて北上する口実を探すこともしない)、「適切な状況下であれば金正恩委員長と会う。そうできれば光栄だ(トランプ)」等々の表明がなされている。これをどう評価し、どう対処していくのか。オバマ政権の「戦略的忍耐」のもとでは米国の朝鮮半島問題に対する政策順位は低かったが、トランプ政権がICBM獲得目前の朝鮮の核・ミサイル問題が差し迫った安全保障上の脅威、外交の最優先課題」としている今が情勢変革への大きなチャンスとも言えるのではないか

 何よりも韓国民衆がキャンドル行動の巨大なうねりを背景として政権交代を実現したことは、朝鮮半島と東アジアの平和に向けた新たな情勢変革に大きな希望をもたらしている。

この場を借りて、あらためて韓国民衆のこの間の闘いに心からの敬意と連帯の挨拶を送りたい。

 

(2)朝鮮半島の緊迫に乗じ「戦争国家」の道ひた走る日本・安倍政権

 

 「変化の兆し」の中に日本を入れられないことには忸怩(じくじ)たる思いがあるが、この間の日本・安倍政権の動向について見ていきたい。

 ①真っ先にトランプ新政権にすり寄り、対朝鮮圧力強化の旗振り

 安倍首相は世界各国の首脳に先駆けて大統領当選直後のトランプ氏詣でを行い(2016.11.18)、また大統領就任直後にも真っ先に日米首脳会談を行った(2017.2.10)

 大統領選期間中にトランプ氏が、「撤退」までちらつかせて在日・在韓を含む在外米軍駐留経費の負担増要求を繰り返していたこと、TPP離脱や対日貿易赤字を槍玉に挙げていたこと、韓国のキャンドル革命の進行-などで不安が生じていたためだが、米側が先行してマティス国防長官を初外遊先として韓国・日本(2017.2.24)に送るなど、あらためて米日韓軍事同盟の継続・強化を再確認し、対朝鮮圧迫政策でも連携を確認するに至った。

 その後、史上最大規模の米韓合同軍事演習を背景に、45日の朝鮮による弾道ミサイル発射実験を受けた日米首脳の電話会談(4/6)で、トランプ大統領は、翌7日から予定されていた米中首脳会談をもにらみ、「(軍事攻撃を含む)すべての選択肢はテーブルの上にある」と表明、安倍首相はこれを「力強い発言」と高く評価し、朝鮮への圧迫で連携を強めることを確認した。

 翌7日には、「必要とあれば軍事攻撃も辞さず」のデモンストレーショ(demonstration)して、米中首脳会談の最中に、敢えて行われた米軍のシリア政府軍へのトマホーク攻撃に対しても、安倍首相は「化学兵器の使用と拡散を許さないとの米国の決意を支持する」といち早く表明した。

 また413日の参議院外交防衛委員会で安倍首相は、朝鮮が「サリンを弾頭に装着し着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と根拠不明の発言も行っている。

 さらに52627日、イタリアのシチリアで行われたG7首脳会合(サミット)では、事前に日米首脳会談を持ち「朝鮮問題が国際的優先事項」だとして、温度差のあるヨーロッパ各国首脳を議論に巻き込み、安倍首相は「今は対話のための条件が整うには程遠い。国際社会は連帯して圧力を加えるべき」だと強調した。

この安倍発言に対しては、同日ロシアで行われていた中ロ外相会談で取り上げられ、中国の王毅外相は、「問題解決にあまり前向きではない」「対話の足をひっぱらないように望む」とクギをさした。ロシアのラブロフ外相も、軍事的な圧力ではなく、政治的解決を目指すべきだと強調した上で、「日本を含むすべての当事国が、これ以外の解決はありえないことを認識してほしい」と指摘した。

 韓国の文在寅新政権に対しては、特使の訪日がなされたが、今のところ様子見の段階だろう。

しかし、安倍首相としてはトランプと連携し国際的な対朝鮮圧力強化の旗を振ることで、対話重視の文在寅新政権に対しても強く牽制する意図を込めていることは明らかだ。

 ②危機煽りの大衆動員キャンペーン

 こうして安倍政権が自ら率先して危機煽りの旗振りを行っている中で、新聞・雑誌はもとよりTVでもワイドショー番組を含めほぼ一日中と言ってよいほどこの問題が取り上げられてきた。

 さらに今年3月、政府は秋田県男鹿市で朝鮮のミサイル着弾を想定した住民避難訓練を行っていたが、421日、都道府県の危機管理担当者を集めた説明会で、朝鮮の弾道ミサイルの着弾を想定した住民避難訓練を行うよう要請。国民には着弾情報が流れた場合の行動として、(1)頑丈な建物や地下街への避難、(2)適当な建物がない場合、物陰に隠れるか地面に伏せる、(3)屋内ではできるだけ窓から離れるか、窓のない部屋に移る-などを示した。

 そして、429日には朝鮮の弾道ミサイル発射の報道を受け、東京メトロ(地下鉄)と東武鉄道、JR北陸新幹線などが一時運転を見合わせるなどの事態も起きている。

 真っ先に標的となる在日米軍基地はそのままに(沖縄では辺野古新基地建設を強行し)、原発の再稼働を推し進め、「対話より圧力」などと唱える安倍政権に国民の安全のため平和な環境を築こうという意思は見られない。そこには安倍政権の邪(よこしま)な意図が存在している。この間にもTVの生中継等で韓国の人たちが全く普通の生活をしている姿が流され、韓国の人々から「日本の異常な動き」「安倍政権の作為」への強い懐疑の声が伝えられたが、そう感じるのは当然だろう。この滑稽ともいえる動きには日本国内でも多くの批判が挙がっている。

 ③進む「戦争国家」化政策

 【改定日米ACSA、改定日豪ACSA、日英ACSA】こうした朝鮮半島の緊迫に乗じて、414日、参議院本会議で改定・日米(軍事)物品役務相互提供協定(ACSA)と改定・日豪ACSA、日英ACSA新規締結が与党などの賛成多数で可決・承認された。

 これは、安保法制(戦争法)(2015.9.19強行可決)に基づく集団的自衛権行使を拡大するものであり、それまでは日本が直接攻撃を受けない限り、米軍への弾薬提供等は禁止されていたが、これにより自衛隊は米軍への弾薬提供、発進準備中の戦闘機への給油、水その他軍需物資の提供が可能となる。また米英豪3カ国と日本との間の軍事協力を体制面から一層強化し、自衛隊の世界展開に資するものとなる。協定実施後、海上自衛隊は欧州や米国へ向かう場合、これらの国々と作戦物資の調節を行うことができるようになり、また、NATO加盟国と武器基準を統一することで一層の軍事力強化の機会を得るなど、長期的には日本の自立的展開への野心も込められていると言えよう。

 【「米艦防護」・日米合同訓練】これも集団的自衛権行使の拡大の一環として、カールビンソン空母機動部隊が日本海(東海)に展開し対朝鮮軍事圧力を強めている最中の51日から、海上自衛隊最大のヘリ搭載艦「いずも」(事実上ヘリ空母)を日本の太平洋側の千葉県房総沖から四国沖まで米軍の補給艦に対する初の「米艦防護」任務に就かせ、既成事実化を図った。戦争法の「(米軍その他の外国軍の)武器等防護」規定に基づくもので、外国軍の艦船・航空機・武器・弾薬などを防護するため自衛隊は武器使用も可能となった。万一、米軍が対朝鮮武力行使を行えば自衛隊も「米艦防護」のために自動的に参戦することになりかねない。

 これに先立ち、朝鮮半島に向けて航行中のカールビンソンと自衛艦との合同軍事演習も実施されている。この間、B1、B2戦略爆撃機が朝鮮への威嚇のために飛来するや航空自衛隊機との合同訓練も行われてきた。また日韓「慰安婦」合意や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結などを受け、対潜水艦などの日米韓の三か国合同軍事演習も実施されるようになってきた。

 こうした雰囲気を背景に、自民党国防部会が、巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有の早期検討の提言を行うなど、政府・自民党内で「敵基地攻撃」論も活発化し始めている。

 【「共謀罪」法案を強行】「戦争のできる国」作りの上で「国民監視社会」作りも深く結びついている。近代刑法は犯罪の実行行為に対して処罰することが原則だが、同法案の本質は、犯罪が起こっていない段階で2人以上が犯罪を「計画」し「準備」したと、すなわち「犯罪を相談しているらしい」と捜査機関がみなせば捜査が開始され、処罰されるという現代版治安維持法というべきものである。518日には、国連人権理事会が任命した国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏からも、本法案がプライバシー権や表現の自由に対する過度の制限になると強く懸念する書簡が安倍首相に送られている。すでに衆議院では自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数で強行採決され、529日参議院で審議に入っており、当面の最大の焦点となっている。

 

(3)安倍首相「2020年施行めざし憲法9条の改定」を宣言

 

 さらに安倍首相は、今年53日の憲法施行70周年の記念日に、改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、憲法9条第1項、第2()はそのままに第3項を新設し自衛隊を明記する改憲案を自ら提起し、2020年には「改正憲法」を施行するよう呼び掛けた。

 ()日本国憲法第9(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 これまでの自民党改憲草案では、上記の9条第2項を修正し国防軍を明記することが謳われてきたが、今回の安倍提案はこれとも異なるものである。

 この間、改憲に向けた議論や宣伝がさまざま行われ、世論調査でも9条を除く他項目で改憲賛成が増加してきたが、9条に関しては改憲反対が常に多数を占めてきた。だから、本丸である9条はとりあえず横に置き、9条以外の項目の改憲から手を付けようとする試みがなされてきた。

 今回の安倍提案は、①朝鮮半島をめぐる緊迫した情勢を最大限利用し、②連立政権を組む公明党が9条改憲に慎重で、また改憲ではなく足りない部分を加える「加憲」を唱えてきたことからこれにすり寄ることで取り込みを図り、またあわよくば民進党内の右派をも取り込み、③2020年の東京五輪、天皇の譲位などの「祝賀ムード」も利用して、最長2021年まで(自民党規約改定で総裁任期を2期から3期まで延長。他方首相に任期の制限はない)の自分の任期内に9条改憲に手を付けようという正面突破の宣言である。

 加えて、安倍首相がこの提案を今出してきた理由の一つには、「森友学園」「加計学園」問題という安倍夫妻自身が深く関わり、安倍政権を直撃している一大スキャンダルから国民の目をそらし、政権の求心力を維持・強化しようという思惑もある。

 安倍首相は、自民党に年内の改憲案取りまとめを指示し党内の結束を呼びかけた。

ちなみに自衛隊の存在に限れば、世論調査でも「必要」とする意見が多数となるが、それは憲法9条の存在ゆえに本格的な戦争への参戦経験がなく、もっぱら災害救助活動などで「活躍」する姿が大きく投影した結果である。まして、憲法違反の戦争法と集団的自衛権行使にまで踏み込んでいる自衛隊の方に、憲法を合わせるなどということは本末転倒も甚だしい。

 憲法9条を素直に読めばそもそも自衛隊は違憲の存在である。これを通常の軍隊ではない自衛権に基づく実力部隊だとして矛盾を糊塗し、その上で解釈改憲を積み重ねてきた。そして究極の解釈改憲が安保法制(戦争法)であり、「専守防衛」をかなぐり捨て、米軍が海外で行う戦争を自衛隊が支援するという役割に道を開いた。

しかし、これでも全面参戦は不可能であり、イギリス軍型をめざすには憲法に自衛隊(あるいは国軍)の存在を明記しなければならない。これが、彼らの9条改憲の真の狙いである。

過去の反省もなく侵略・植民地支配を正当化する歴史修正主義の台頭とも相まって、日本が再び軍事面でもアクターとして登場することは、東アジアの平和にとって新たな危険な要素を加えるものとして強く警鐘を鳴らす必要がある。

 

(4)朝鮮半島の平和と日本の「戦争国家」化阻止を

 

①朝鮮半島の平和のために

 

 以上みてきたように安倍政権は、朝鮮に対して「対話ではなく圧力」の旗振り役を自ら買って出ている。トランプ米新政権の対朝鮮政策も、朝鮮側は「最大の圧力と関与」という「名前を変えただけの敵視政策」に過ぎず、「我々に対する全面的な制裁と圧迫騒動に力を入れている条件の下では、我々の核抑止力強化措置も最大の速度で進められるだろう」としている。

 確かに、先制攻撃や朝鮮指導者への「斬首」作戦などを織り込んだ「作戦計画5015」に基づき史上最大規模の米韓合同軍事演習が行われ、同演習終了後もカールビンソン、ロナルドレーガンの2空母機動部隊が日本海(東海)に配備され、軍事的圧力をかけ続けている状況下では、対話の環境には程遠く、朝鮮側が反発するのも当然だろう。

 朝鮮に対する軍事力行使がほとんど不可能であることは、94年の第一次核危機の際に当時のクリントン政権が寧辺(ヨンビョン)への限定空爆直前までいって、これが全面戦争に発展した場合、最初の90日で米兵52,000人、韓国軍490,000人が犠牲となるという自らのシミュレーション結果に驚愕して思いとどまらざるを得なかったことからも明らかだろう。南北の軍民を合わせれば数百万人の犠牲者がでるとまでされている。まして現在の朝鮮は、自ら「自衛措置」とする核と弾道ミサイルを高度化させており、米軍の最大の出撃・兵站拠点となっている在日米軍基地まで照準に入っているのである。

 中ロ外相の言を待つまでもなく、「対話より圧力」などと言っている安倍首相の無責任ぶりは明らかだろう。

 【米朝「相互停止」を】

 結局、朝鮮半島問題の解決のためには対話以外の方法はない。そのための環境を整えるには、米国側は大規模軍事演習や軍事威嚇を停止し、朝鮮側も核・ミサイル開発を停止するという「相互停止」が必要である。この趣旨のことは、すでに朝鮮側も提案したことがある。中国・ロシアも強く反対しているTHAADの韓国配備も撤回されるべきだ。この点では、情報が限られていることを前提として言えば、朴槿恵前政権が独断で配備受入れを行ったことに対して、文在寅新政権が民意を後ろ盾に国会承認案件として切り返していることは一つの政治的知恵だろう。

 対話の実現、停戦協定から平和協定・平和体制構築への国際的包囲網を】

 米朝間および多国間での対話はすでに経験済みのことである。しかし、現状では一触即発で対話さえままならない状況となっている。何故そのようになったか振り返る必要がある。

 94年の第一次核危機は、カーター米元大統領の訪朝・金日成(キム・イルソン)主席との会談により一転して米朝ジュネーブ枠組み合意へと結実した。朝鮮の黒鉛減速炉の廃止とIAEAの保障措置協定の完全順守、米側と各国による軽水炉提供、エネルギー支援、米朝間の政治的・経済的関係の完全な正常化のための行動-などを規定した同枠組み合意のもとで、99年には前述のシミュレーションに基づき対話路線を定式化したウィリアム・ペリー対朝鮮政策調整官(クリントン政権1期目の国防長官)報告が出され、200010月にはマデレーン・オルブライト米国務長官のピョンヤン訪問、趙明禄(チョ・ミョンノク)朝鮮国防委員会第一副委員長のワシントン訪問が相互に行われ、クリントン大統領の訪朝でも合意していた。

 この間の20006月に金大中(キム・デジュン)韓国大統領の訪朝、金正日(キム・ジョンイル)朝鮮国防委員会委員長との首脳会談が行われ、615南北共同宣言が出されたことも大きな作用を果たした。こうした一連の流れの中に、20029月の小泉純一郎日本首相の訪朝もあったといえる。

 この対話路線を破たんに追い込んだ最大の原因が、ジョージ・W・ブッシュ政権の誕生とイラン・イラク・朝鮮を「悪の枢軸」と規定し、朝鮮に対する対話路線を破棄して再び敵視政策に転じたことにある。さらに2001911同時多発テロへの「報復」を口実としたアフガニスタン軍事侵攻、それに続く「大量破壊兵器」疑惑でっち上げによるイラク進攻が朝鮮側を大きく身構えさせたことは容易に想像がつく。

 20034月の米朝中三カ国会談の合意を経て、同年8月から六者協議が始まった。

 20059196者共同声明」は、平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化、朝鮮へのエネルギー・食糧支援、米朝正常化、日朝正常化、朝鮮半島における恒久的平和体制について協議を進める-ことなどが確認された。

 しかし、その後も米韓合同演習は継続され、米国によるマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)の朝鮮関連口座の凍結問題で二転三転するなどの過程が続いた。

 こうした過程で、2006109日の朝鮮の最初の核実験が行われた。

 これを踏まえ、20072月に開かれた第5回六者会合は、あらためて以下の合意がなされた。

1.朝鮮が60日以内に寧辺の核関連施設(再処理施設を含む)の停止(shut down)および封印(seal)を行い、IAEAによる監視を受け入れる。(初期段階措置

2.朝鮮は放棄の対象となる核開発計画(使用済み燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む)の一覧表について、他の五者と協議する。

3.他の五か国は見返りの緊急エネルギー支援として重油5万トンを支援する。朝鮮が施設を無力化(disablement)することで、95万トンの重油に相当する規模を限度とする経済・エネルギー・人道支援を行う。

4.米国と朝鮮は国交正常化のための協議を始めると共に、米国は朝鮮のテロ支援国家指定の解除や対敵通商法の適用終了の作業を進める。

5.日本と朝鮮は国交正常化のための協議を始める。

6.「朝鮮半島の非核化(議長:中国)」「経済・エネルギー支援(議長:韓国)」「日朝関係正常化(議長:日本・朝鮮)」「米朝関係正常化(議長国:米国・朝鮮)」「北東アジアの安保協力(議長国:ロシア)」の5つの作業部会を設置する。

7.初期段階の措置が実施された後、六者による外相級閣僚会議を行う。

その後、米朝実務協議でBDAの凍結資金の返還が合意され、2007319日の第6回六者会合で金桂冠(キム・ゲガン)外務次官からは、六者の信頼醸成が必要とし「言葉対言葉」「行動対行動」の原則が守られるなら、核施設の停止・封印とIAEAの査察を受け入れる用意があると表明されたが、翌20日、BDA凍結資金の返還が確認できないとして会合への出席を拒否、休会となって以降、六者協議は開かれていない。

その後、200945日に朝鮮は「銀河2号」ロケットを打ち上げた。これに対する国連安保理の議長声明に反発し、414日、朝鮮政府は核兵器開発の再開と六者会合からの離脱を表明するに至った。

 

これらを見てくると、これまでの対話が、朝鮮半島の非核化(とりわけ朝鮮の非核化)ありきで、朝鮮の体制保障や恒久的平和体制への転換問題は付随事項のように見受けられる。

今後の対話は、米朝二国間であれ六者であれ、朝鮮半島の平和体制構築・64年にも及ぶ停戦状態を平和協定に転換する問題を主としながら、その中で朝鮮半島の非核化も追求されるべきだと考える。朝鮮半島が「撃ち方やめ」に過ぎない停戦状態のまま放置され続けていること、絶えず軍事的圧迫にさらされていることが、朝鮮をして核・ミサイル開発に向かわせた。

朝鮮半島問題の解決はこうした歴史的・構造的問題解決に向かうことこそが前提であり、何よりも朝鮮半島非核化の早道でもあると考える。

米日韓軍事同盟の中で、韓国で新政権が誕生したこと、中ロも軍事行動に反対し対話を強調していること。とくに文在寅政権が、民間の南北交流を先行させながら、開城(ケソン)工業団地や金剛山観光再開、やがて本格的な南北対話をめざしていると聞き及んでいるが、どのような手順であれ南北対話が再開されることを支持する。そして、615南北共同宣言、104宣言が履行されていくことを心から望みたい。

そして、これらを基礎にトランプ政権に対して停戦協定から平和協定への転換・平和体制構築を迫る国際的包囲網構築の道へ、日本でも安倍政権の「戦争国家」化政策と闘いながら呼応していきたい。

 

②安倍政権の憲法9条改憲、「戦争国家」化政策と全面対決

 

安倍政権の危険な動きについては前述の通りである。

これに対して日本の平和勢力は、総がかり行動実行委員会を軸として、立憲野党(民進党・共産党・社民党・自由党)とも連携しつつ当面「共謀罪」法案の参議院での可決・成立阻止を焦点としながら、集団的自衛権行使の拡大に反対し、また沖縄現地の抵抗闘争と連携して辺野古への米軍新基地建設阻止の闘いを進めている。

53日の憲法施行70周年の改憲反対集会・デモには東京55,000人をはじめ全国各地で数千・数百人規模の行動が取り組まれている。

そして、いよいよ安倍首相が宣言した憲法9条改悪との全面的な闘いが始まる。

この闘いは、日本の民衆の進路にとってだけではなく、東アジアの平和にも大きくかかわる問題である。また安倍政権が朝鮮半島の緊張激化を煽り、それを利用して日本の「戦争国家」化を推し進めていることは、朝鮮半島の平和体制構築をめざす闘いといかに密接な関係にあるかを示している。

その安倍政権は、森友学園・加計学園問題という一大不正疑惑にまみれている。この徹底追求ともあわせ、改憲・「戦争国家」の道をひた走る安倍政権を退陣に追い込みたい。

 

  【ソウルシンポ発題】ミシェル・チョスドフスキー オタワ大名誉教授

韓国における政権交代、第二の太陽政策、非武装化と平和プロセス

 

ミシェル・チョスドフスキーオタワ大学名誉教授

 

 

第二の太陽政策と朝鮮半島の非武装化

 

歴史の遺産は根源的である。朝鮮戦争(1950-53)20170611_3
の結果としてだけでなく、1945年からの韓国に対する米国の干渉と軍事プレゼンスは、民主主義と国家主権に対する主要な障害であり続ける。

米国は東アジアにおける覇権を確保するため、常に韓国政治に関与してきた。弾劾された朴大統領は米国行政府の道具として仕えてきた。

それは韓国で実施された大統領選挙において、文在寅氏の当選を導く上で大きな貢献をした。

ろうそくデモによって支持され文在寅氏が大統領に選出されたことは、潜在的には重大な分岐点となり、地政学的に、また政治的にも画期的な出来事である。そしてそれは米国の干渉が続く中でも国家主権に向けた道筋が開けたことを意味し、また権威主義が支配する過去の時代との潜在的な決別でもある。

文在寅大統領は、盧武鉉政権で大統領秘書室長等の側近として活動した。

彼はこれまで、米国との関係を維持しながらも、第二の太陽政策と呼ばれる、朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)との対話と協力を進める確固たるコミットメントを表明している。

文在寅大統領は朝鮮の核計画に断固反対しながらも、米国が提供する高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備にも毅然とした態度を示している。

最近の情勢の展開では、韓国国防部長官はTHAADミサイルシステムの発射台を4台追加する上で、大統領の陰に隠れイニシアティブを握っていた。文在寅大統領は国家安保室長からその件に関する「報告を受け、非常に衝撃を受けた」と述べている。

文在寅大統領の朝鮮との協調と非武装化へのコミットメントは、軍事分野における米韓関係の再定義を求めることになろう。

 

作戦統制権の破棄と米韓連合司令部

 

2014年、朴槿恵政権は作戦統制権の返還に関する合意を2020年代中頃まで延期した。これが意味するものは、「紛争が起きた際」すべての韓国軍は韓国の大統領や司令官ではなく、米国防総省が任命する米国の司令官の指揮下に置かれるということである。

米韓連合司令部の組織構造だけではなく、作戦統制権に関する合意の破棄なくして、国家主権の合理的回復はあり得ないということは、言うまでもない。

私たちは(独裁者であり、また弾劾された朴槿恵前大統領の父である)朴正煕将軍の大統領施政下において、二国間による米韓連合司令部が設置されたことを知っている。実質的には、これはいわゆる国連軍司令部のラベル替えであった。

また、再交渉された作戦統制権(2014年)下の米司令官の司令権は、一時的な停戦を法的に制定した1953年の停戦協定が平和協定に代わらない限り、全面的に運用される。

 

1953年の停戦協定

 

1953年の停戦協定の根底にあるものは、戦争当事国の一つである米国がこの64年間、朝鮮に対して戦争を開始すると常に脅威を与えてきたということである。すなわち戦時体制を継続させたのである。西側メディアと国際社会が注意を払うことなどないが、米国は半世紀以上もの間、停戦協定13b項に違反し、朝鮮を標的とした核兵器を積極的に配備してきた。最近では、主に中国とロシアを直接的な標的とした、いわゆるTHAADミサイルを配備している。

米国は未だ朝鮮との戦争状態にある。米国、朝鮮、そして中国人民志願軍の戦争当事者間における「一時的な休戦」を法的に制定した1953727日に署名された停戦協定は、恒久的な平和協定の署名により廃止されなければならない。

米国は南北朝鮮間における関係正常化と協力のプロセスを避け続けているだけではなく、韓国における軍事的プレゼンスを維持するために、これまで停戦協定に違反し続けてきただけでなく、朝鮮との平和交渉も一貫して拒否してきた。

 

南北二者間の平和合意へ向けて

 

停戦協定署名国の一つが平和協定の署名を拒否するなら、包括的な南北二者間での平和合意の形成について考えねばならない。これは1953年の停戦協定の実質的な廃止を意味する。

模索されるべきことは、(停戦合意下で継続する)米朝間における「戦争状態」が、協力と交流を伴う包括的な南北二者間平和合意の署名により、ある意味「わきへ追いやられ」、また廃止されなければならないということであろう。

この遠大な南北合意は、朝鮮半島における平和を擁護するものであり、1953年の停戦協定署名国間における平和協定の署名を伴うものではない。この二者間協約の法的成立は極めて重要である。二者間取り決めは事実上、米国の拒否を飛び越えて取り交わされるであろう。これは外国勢力の干渉のない、言い換えれば、米国政府の指図のない、朝鮮半島における平和の基礎を形成するであろう。同時にこれは韓国からの米軍の撤退と作戦統制権に関する合意の撤回を求めるものである。

米国は朝鮮への新しい兵器の搬入を停止するとした停戦協定13d項の事実上の破棄に関与しているということを忘れてはならない。1956年、米国は韓国への核施設の搬入と配備を実施した。そうすることにより、米国は13d項を破棄しただけではなく、韓国における米軍及び兵器体系の配備を通して停戦協定それ自体を破棄したのである。

また、作戦統制権に関する合意下での新しい軍事基地の展開を含む韓国の軍事化は、主として、朝鮮半島を中国とロシアの双方に脅威を与える軍事的な発射台として用いる意図を示している。作戦統制権下では、「戦争の際」、韓国全軍は中国もしくはロシアを相手に米軍の指揮下で動員される。

THAADミサイルは、中国、ロシア、そして朝鮮に向けて配備されている。米国は、THAADは朝鮮に対するミサイル防御としての意図しかないと述べている。同様に、済州島の軍事基地は主として、中国に対する威嚇である。

また、米国は、究極的には、朝鮮を孤立させるために、南北朝鮮間だけでなく、朝鮮‐中国間においても、東アジアの分断を形成すること意図している。

きわめて皮肉なことに、済州島を含む韓国における米軍施設は、軍事的包囲のプロセスの一部として、中国を威嚇するために用いられている。いうまでもなく、南北二者間合意下で定義されるより広範囲な東アジアと、朝鮮半島における恒久的な平和は、韓国からの米軍の撤退を含む作成統制権と停戦協定の双方を撤廃することを求めるであろう。

文在寅大統領の施政下で、南北間における二者間平和交渉が外部勢力の参加や干渉なしに行われることは重要である。このような議論は対朝鮮経済制裁の解除と米占領軍の撤退に着手するものでなければならない。米軍プレゼンスの排除と28,500名の占領軍の撤退は、南北二者間平和条約にとって必要不可欠な条件となる。

 

韓国の米国との関係

 

米軍による軍政は、第二次世界大戦直後から強いられた。ポツダム会談(194578月)にて米国とソ連は38度線に沿って朝鮮を分断することに合意した。

米軍の進駐により、南朝鮮には「解放」がもたらされなかった。真逆の状態がもたらされた。米軍政は、1945815日に日本が降伏した3週間後の98日、南朝鮮にて打ち立てられた。また、南朝鮮地域に残っていた日本の官僚は米軍政への移行過程において、ホッジ将軍率いる在朝鮮米陸軍司令部軍政庁(USAMG)(1945-48)に力を貸した。南朝鮮の警察官のみならず、ソウルにいた日本の植民地行政官は、新しい植民地支配者たちとごく親密に働いた。

 

米国が支援する軍事独裁

 

1945年から1987年まで韓国に適用された軍事独裁の基礎的モデルは、ラテンアメリカと東南アジアで米国政府によって強いられたそれと、大きく異なるものではない。同時に1980年代まで米国外交政策における大きな転換がもたらされた。米国の介入主義は従順な「民主政府」による軍事政権の交代へと加速したが、それは主権国家の国内事情における米国の干渉を弱めたり破たんさせたりすることはなかったのである。

1980年代、米国が支援する軍事独裁のほとんどは、米国が支援する民主主義によって転覆されている(例えばチリ、アルゼンチン、ブラジル、フィリピン、インドネシア)。その一方で、米国は国民選挙に介入し、政治指導者を昇進させ「体制転換」をけしかけている。

多くの国で展開されているのは、民主主義のうわべであり、これは「民主主義独裁」と呼ばれなければならない。

全面的なマクロ経済改革は頻繁に強いられている。民主的に選出された指導者たちは、従順でなければ脅迫にさらされ、多くの場合、国家の指導者は米国に取り込まれている。

先述の内容が示すことは、韓国において選挙によって選ばれた大統領により軍部が交代し、政府が運営され、そして権威主義体制が撤廃されても、それは必ずしも国家の構造転換を意味しないということである。

 

韓国を標的とした金融戦争

 

米国が韓国で民主的に選出された金大中大統領(当時)に対して、1997年のアジア通貨危機の際に行われた韓国ウォンに対する投機的な猛襲[訳注:韓国ウォンの売り浴びせ等]に対して、選挙に先立ち包括的なマクロ経済改革を実施することを単刀直入に指示したことが思い出される。

元政治犯であり反体制派、そして米国が支援する朴正煕及び全斗煥軍事政権に対する強固な反対者であった金大中元大統領ですら、政治的圧力に屈服し、韓国で民主的に選出された大統領として正式に就任する前に、ウォールストリートと米国政府に屈したのである。

1997年のアジア通貨危機は操作されていた。これは金融操作の結果である。韓国は強力な金融制度によって引き起こされた経済不安定化に関する計画的なプロセスの対象であった。しかし、選挙後すぐ、金大中元大統領は米国政府の要求に従わされたのであった。

上述の内容が意味することは、民主的に選出された政府は、それ自体が民主主義と国家主権を保証しないということである。

 

統一、その前途

 

2次世界大戦の前後に見受けられた米国の新植民地主義の慣習は、国民国家の弱体化を狙ったものであった。米国は軍事的及び非軍事的手段を通して、独立国(例えばユーゴスラビア、チェコスロバキア、中央アメリカ、イラク、シリア、スーダン)の分割と破壊を模索している。この破壊と分断に重点を置く外交政策課題はまた、朝鮮にも適用されている。

ひとつの朝鮮民族しかない。米国は、統一した朝鮮民族は東アジアにおける米国の覇権を弱める勢力となるため、統一に反対しているのである。

統一は競争力の高い産業と軍事力、そして先進技術と科学を有した国民国家を作り上げるであろうし、自らの主権を行使し、米国の干渉を排しロシアや中国を含む近隣諸国との貿易関係を確立するであろう。

この点に関して、米国の外交・軍事政策立案者たちが既に、朝鮮半島における米占領軍の維持を念頭に置いた自らの「統一」シナリオを書き終えているということは注意に値する。同様に、米国が思い描いていることは、「外国の投資家」が朝鮮経済に浸透し略奪することのできる枠組みである。

米国の目的は、朝鮮の統一に条件を課すことである。2000年に出版されたネオコンの「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)は「統一後のシナリオ」について、米軍(現在28,500名)は増員されねばならず、また米軍のプレゼンスは朝鮮半島北部にまで及ばねばならないと公言している。米国の意図は非常に明確である。

 

おわりに

 

朝鮮に対する米国主導の戦争は、朝鮮民族全体を巻き込むようになるということを理解しておく必要がある。

米国が支援する戦争状態は南北朝鮮双方に向けられている。これは朝鮮に対する核兵器の使用を含む継続的な軍事的脅威によって特徴づけられている。

19459月以来、米軍の支配下に置かれている韓国に対する脅威でもある。現在28,500名の米軍が韓国に駐屯している。しかし前述した米韓作戦統制権(米韓相互防衛条約)下ですべての韓国軍は米国の指揮下に置かれている。

朝鮮半島の地理的条件を考慮すれば、朝鮮に対する核兵器の使用は不可避的に韓国を巻き込む。米国の軍事立案者たちはこのこと知っており、また理解している。

2の太陽政策に関して強調しなければならないことは、米国と韓国は、米国が朝鮮に対し戦争脅威を与える限り、同盟関係を維持することはできないということである。

「本当の同盟」というものは、外国勢力の干渉と侵略に反対し、対話を通じて南北朝鮮を統一しまた統合するものである。

米国は朝鮮民族全体に対し戦争状態にある。このような状況は、停戦協定を廃止し、二者間における「平和協定」の条件を設定する目的で、韓国と朝鮮の間での二者間会談を開催すること求めている。また次に、この合意は米国の軍事的プレゼンスの排除と28,500名の米軍の撤退のための舞台を用意するであろう。

また、二者間の平和交渉に準拠して、韓国軍を米軍の指揮下に置く、米韓作戦統制権に関する合意は破棄されねばならない。すべての韓国軍はしたがって、韓国の指揮下に置かれなければならない。

二者間協議はまた、南北朝鮮間における経済発展と技術的、文化的、教育的協力関係の促進を目的とし、進められなければならない。

戦争の脅威は、作戦統制権下の黒幕である米国を排除し、対話を通して除去されるであろう。従って最優先課題は作戦統制権の破棄であろう。

 【ソウルシンポ発題】シオン・レイ中国人民大学教授

朝鮮半島平和プロセスの利害事者とトラブルメ

シオンレイ 中国人民大学教授

 朝鮮半島と北東アジアの平和を実現す20170611_6
ためには、プロセス内の重要な利害当事者とトラブルメーカーとを把握して、実際の利害当事者の利益は保障しトラブルメーカーが悶着を起こすような素地は前もって防止する実質的な戦略を樹立することが重要である。

このような点を指摘する理由は、一部の問題解決者が自称利害当事者となって、実際にはこの地域の平和に実質的な関心がないのにもかかわらず多くの発言をしている現実に私たちが直面しているからである。

 

私たちが歴史をのぞき見れば、いわゆる朝鮮半島問題と北の核の問題というのはそれ自体人間が作り出した人為的な問題であることが分かる。 それは朝鮮半島本来の問題ではない。 朝鮮半島問題は、第2次世界大戦以後東アジアでそれぞれ影響力を行使しようとする二つの相互敵対的な強大国により作り出された。 北朝鮮の核の問題は、1990年代に朝鮮半島の平和プロセス過程で真の利害当事者の一つが北朝鮮の安全を保障することに失敗したとき現れた。 この二つの問題は共に、はじめから半島とともに存在したりはしていない。 ただ、この地域に対する利害関係が少なくとも平和にはなかった外部勢力により、創案されただけである。

 

私は朝鮮半島の非核化に同意する。しかし非核化は朝鮮半島平和の手段であって目的ではない。私たちの目的、私たちの目標は地域の平和である。だから私たちは表面的な現象よりは、平和という根本的な目的を土台から崩してしまう真の根本原因をよく見なければならない。 私は北朝鮮が行なった核実験を前にして心地の悪い思いを告白せざるを得ないけれども、とにかく彼らが悶着の根本原因であるとは考えない。 根本原因は、彼らが安定感(安全であるという感じ、sense of security)を奪われたということにある。

 

1週間ほど前、中国の二つの言論媒体が北朝鮮の核実験を批判する一連の論評を出した後、タクシーに乗る機会があったのだが、たまたま運転手がラジオをいつもニュースに合わせてあるのに気が付いた。それで私は彼に北の核問題についてどう思うか尋ねてみた。 彼は理解できると言った。彼らには出口がなかったし、それだけが唯一の道だったからと。 私は彼に、もしかして核の浸透について心配しているか尋ねたが、彼はその段階までは行かないようだと答えた。 彼はまた、北朝鮮の核兵器はアメリカの核兵器とは比べものにならないだろうが、日本みたいなのを脅すにはおそらく十分だろうとも言った。

 

これが普通の中国人が持つ常識の典型なのだが、こんな意見だけが特にメディアではほとんど表現されていない。

 

朝鮮半島問題と北の核問題が内在的な問題でないならば、私たちは朝鮮半島の平和の真の利害当事者が誰なのかを探るために一歩さらに進まなければならない。この地域を不安且つ平和でない地域にした者たちは、真の利害当事者ではない。最高の非-利害当事者は19世紀後半に最初に朝鮮半島で戦争を起こした日本であろう。 その次にはアメリカが真の利害当事者リストから除外されねばならない。 私はロシアもやはり利害当事者とは思わない。かつてソ連が朝鮮半島を二つに分断させることに関与したから、そしてそれによって今日まで幾多の問題が発生しているからだ。

 

歴史が始まって以来、朝鮮半島の平和に本質的な利害関係を持っている真の利害当事者は、南北朝鮮と中国であろう。中国は古代から朝鮮と関わる様々な問題に介入して来たし、歴史的にも地理的にも朝鮮半島と緊密な関係がある。朝鮮半島の平和は中国東北部、ひいては中国全体の安定と直結している。中国は朝鮮に本質的な利害関係を置いていながらも、朝鮮のどの地域に対しても統制しようと試みたりはしなかった。これは中国の人民義勇軍は朝鮮戦争直後に北から全兵力を撤収させたが、米駐屯軍は韓国に今日までも留まっているという事実などから非常に明確に現われる。

 

したがって、朝鮮半島の平和プロセス上の主要な問題はすなわち、このような問題を故意に発生させた一部のトラブルメーカーが、表向きは利害当事者となってこの問題に対して多くの発言権を得ているというところにある。これは正しくない。

 

事実、真の利害当事者としての韓国国民の声と存在感は、1953727日朝鮮戦争を終熄させた休戦協定が署名された当時、不在であった。 問題の不安定な停戦協定はアメリカ、北朝鮮と中国の間で締結された。韓国は戦争で莫大な死傷者を出したにもかかわらず、おそらく当時の韓国の政権が競争相手の観点からだけでなく同盟国の目から見ても操り人形だったために不在だったのだろう。しかも彼らは、韓国国民の大多数を代表することもできなかった。

 

これは韓国国民の意志に反することであった。したがって彼らはアメリカとその操り人形に対抗して抗議とデモ、蜂起を粘り強く繰り返した。しかし軍部独裁者たちは数十年間、自らの国民に逆らった。このような歴史についてよく知らない外部の人たちのためにちょっと説明するならば、韓国の民衆権力はまるで突然噴出したかのように驚くべき速度で19805月の光州抗争を通して初めて姿を現した。蜂起は引き継がれて結局韓国の権威主義統治を終熄させた1987年の6月民主抗争にまで到った。

 

このような歴史のアマチュア観察者として、私はこのような運動の中には、韓国国民の民主主義に対する追求と彼らの平和統一に向けた叫びの間の連携があると思う。 統一について言及すること自体が人を監獄に閉じこめることもできるタブーであった時代、韓国民衆の民主主義に向けた闘いと祖国の平和に対する熱望は互いに分離できないものであった。

 

しかし民衆抗争が韓国の大統領直選制をもたらし国を民主主義で染めたのは事実だが、そして韓国政府が事後的にしろ抗争を再評価して光州抗争で死亡した人々を公式的に追慕し518日を国家記念日にしたのは事実だが、また抗争が生んだすぐれた人物の何人かが-その中には大統領にまで選出された人もいるのも事実だが、平和の訪れはなかった。 韓国が 6者会談のような平和交渉で発言権を得たと言うことはできるが、一部の行政府に属した一部の交渉家は利害当事者の利益を代弁していない可能性もある。

 

過去30年を振り返ると、南北関係がより緊密な接触とともに、より多くの人的交流と経済協力プロジェクトとともに緩和される時期が何回かあったことが分かる。 中でも故キム・デジュン前大統領はピョンヤンまで行って北のリーダーと会ったが、それにより私たちは朝鮮半島の平和に対する一縷の希望を持つことができた。残念なことに彼の太陽政策は支持を受けることができなかったし、北側に対する緩和と朝鮮半島平和のための政策を掲げた二人の最もすぐれた大統領、キム・デジュンとノ・ムヒョンの任期は悲劇的に終わった。 以後、朝鮮半島の緊張は高まり、パク・クネ政権のもとではアメリカが韓国に高高度ミサイル防御体系THAAD (Terminal Alt Higitude Area Defense)を配備する動きを見せるとともに最高潮に達した。過去数十年を通して最も状況を悪化させたと言える。

 

多くの人々が再び朝鮮戦争が切迫したと思ったまさにその時点で、韓国国民はパク・クネを弾劾し投獄することで再度全世界を驚かせた。 ムン・ジェインの選出は、韓国人はサードに反対し戦争に反対するだろうという強力な信号である。

 

韓国の新しい大統領がサードを無くし、今尚続いている戦争の脅威を取り除く能力があるかどうかはまだ定かではない。しかしこの30年間私たちが目撃したところによれば、次のようなことは確かである。すなわち、この国には朝鮮半島に平和が来ることを嫌う、或いは見たくないと思う内部及び外部の勢力が存在するということだ。朝鮮半島に平和が戻ってくる気味が見える度に、これらの勢力は割りこんできてプロセスを中断させ平和を押しやった。 妨害は色々な形態を取った。 経済危機、北朝鮮が挑発したとか非人道的なことをやったとか主張しながら常に新しい非難を浴びせ、または北との関係改善を擁護する政治家たちをスキャンダルを作ってけなした。 それは悪循環のようであって、その悪循環により朝鮮半島の平和問題は会談にのみ局限された。

 

したがってトラブルメーカーがいて、もっと悪くは、利害当事者に偽装したトラブルメーカーがいるのだが、問題はこの後者がしばしば、まるで本当の利害当事者よりも多くの発言権を持つというところにある。

 

少なくとも中国での報道においては、現在中国と北朝鮮との関係が全く疎遠になっていると言えるほどに非常に悪化した状況に置かれていることを中国人が目撃しているという現実を、私は残念ながら認めざるを得ない。 特に中国の学界で優勢な北朝鮮に対する否定的印象は、明らかに報道のせいだと見なければならない。 中国のメディアを通しては北朝鮮に対する肯定的な報道にほとんど接することができず、中国で読むことのできる北朝鮮に関するニュース、特にソーシャルメディアを通してのニュースの大部分は北朝鮮を誹謗し悪魔化する報道だ。そしてそれらはまた韓国に大量に供給されている。 私と少数の友人たちはもちろんそんな報道を信じないけれども、他の多くの中国人も私たちと同じくそれらを事実と受け入れないようにと説得できるだけの資源は私たちにもない。そして北朝鮮を誹謗してトラブルメーカー扱いする報告書を信じはしなかったけれども、私もやはり2013年に終戦60周年を記念する行事に参加するためにこちらに実際に来て見るまでは、韓国内にも朝鮮半島の不安定性をその真の根源と結び付ける声が存在しているという事実を知らなかった。その時の訪問で私は、韓国にアメリカが北朝鮮と平和協定を締結して敵対を終熄させることを要求する人々が少なくないことを見て驚いた。 南側にそういうビジョンと声があるという事実を私はその時初めて知った。しかしこのようなビジョンは中国にいる人々の多くには知られもしないし聞こえもしない。私たちはその日の夕方ソウル市役所の前で10,000人以上の人々と一緒に、アメリカが朝鮮半島から駐屯軍を撤収させて平和のための道を敷くことを要求するデモを行なったが、このような私たちの活動は中国を含め全世界の主流メディアからは簡単に無視された。 私は如何なる中国のメディアでもその日の事件に言及する言葉を目にすることはできなかった。

 

これは非常に残念な事実であり、また私たちが解決しなければならない現実だ。 したがって朝鮮半島における平和の進展について論議をする時には、必ずトラブルメーカー、言い換えればこの地域の平和を望まない勢力を明らかにし暴露して、彼らの嘘を一つ一つ露呈させる事が必要だと考える。その上で、私たちはこの問題に関する限り彼らの発言権を徐々に減らしていって最終的には完全に剥奪するようにすべきであり、反対に真の利害当事者の発言権は拡張させるべきである。最後に私たちは、平和に対する希望を政治家たちだけに合わせてはならず、私たち自らに合わせなければならない。 政治家たちはしばしば、地域的平和の問題を深刻に受け止めるよりは一種のゲームと考える。その地域の不安定性が何よりも自らの利害関係にぴったり合うような時には特にそうだ。ムン・ジェインの勝利は、朝鮮半島での平和のための努力においては他の誰よりも平凡な大衆の力が必須であるという事実を再度見せてくれた。したがってこの人民大衆の声こそ平和プロセスの全段階において決して見失われてはならず、大きく且つ明確に伝えられなければならない。