米韓の政権交代と安倍政権の動向、日本平和勢力の課題
―朝鮮半島の緊迫に乗じて目的の達成狙う安倍政権―
渡辺 健樹(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)
*本稿では大韓民国は韓国、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮と略称を用います
(1)はじめに 
朝鮮半島をめぐる一触即発の軍事緊張は引き続き続いているが、米・日・韓(代行)政権やマスメディアが喧伝していた「4月戦争危機」が過ぎ、新たな変化の兆しが生まれつつあると思われる。
トランプ米新政権は、「(オバマ前政権の)戦略的忍耐の時代は終わった」としながら軍事攻撃を含む「すべての選択肢はテーブルの上にある」としていた段階から、4月末以降、対朝鮮「4大方針」(①朝鮮を核保有国として認めない、②全ての制裁と圧力を加える、③朝鮮の政権交代を推進しない、④最終的には対話で問題を解決する)、「4つの『しない』原則」(①朝鮮の政権交代、②政権崩壊、③統一の加速化を目標とせず、④38度線を越えて北上する口実を探すこともしない)、「適切な状況下であれば金正恩委員長と会う。そうできれば光栄だ(トランプ)」等々の表明がなされている。これをどう評価し、どう対処していくのか。オバマ政権の「戦略的忍耐」のもとでは米国の朝鮮半島問題に対する政策順位は低かったが、トランプ政権がICBM獲得目前の朝鮮の核・ミサイル問題が「差し迫った安全保障上の脅威、外交の最優先課題」としている今が情勢変革への大きなチャンスとも言えるのではないか。
何よりも韓国民衆がキャンドル行動の巨大なうねりを背景として政権交代を実現したことは、朝鮮半島と東アジアの平和に向けた新たな情勢変革に大きな希望をもたらしている。
この場を借りて、あらためて韓国民衆のこの間の闘いに心からの敬意と連帯の挨拶を送りたい。
(2)朝鮮半島の緊迫に乗じ「戦争国家」の道ひた走る日本・安倍政権
「変化の兆し」の中に日本を入れられないことには忸怩(じくじ)たる思いがあるが、この間の日本・安倍政権の動向について見ていきたい。
①真っ先にトランプ新政権にすり寄り、対朝鮮圧力強化の旗振り
安倍首相は世界各国の首脳に先駆けて大統領当選直後のトランプ氏詣でを行い(2016.11.18)、また大統領就任直後にも真っ先に日米首脳会談を行った(2017.2.10)。
大統領選期間中にトランプ氏が、「撤退」までちらつかせて在日・在韓を含む在外米軍駐留経費の負担増要求を繰り返していたこと、TPP離脱や対日貿易赤字を槍玉に挙げていたこと、韓国のキャンドル革命の進行-などで不安が生じていたためだが、米側が先行してマティス国防長官を初外遊先として韓国・日本(2017.2.2~4)に送るなど、あらためて米日韓軍事同盟の継続・強化を再確認し、対朝鮮圧迫政策でも連携を確認するに至った。
その後、史上最大規模の米韓合同軍事演習を背景に、4月5日の朝鮮による弾道ミサイル発射実験を受けた日米首脳の電話会談(4/6)で、トランプ大統領は、翌7日から予定されていた米中首脳会談をもにらみ、「(軍事攻撃を含む)すべての選択肢はテーブルの上にある」と表明、安倍首相はこれを「力強い発言」と高く評価し、朝鮮への圧迫で連携を強めることを確認した。
翌7日には、「必要とあれば軍事攻撃も辞さず」のデモンストレーション(demonstration)として、米中首脳会談の最中に、敢えて行われた米軍のシリア政府軍へのトマホーク攻撃に対しても、安倍首相は「化学兵器の使用と拡散を許さないとの米国の決意を支持する」といち早く表明した。
また4月13日の参議院外交防衛委員会で安倍首相は、朝鮮が「サリンを弾頭に装着し着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と根拠不明の発言も行っている。
さらに5月26~27日、イタリアのシチリアで行われたG7首脳会合(サミット)では、事前に日米首脳会談を持ち「朝鮮問題が国際的優先事項」だとして、温度差のあるヨーロッパ各国首脳を議論に巻き込み、安倍首相は「今は対話のための条件が整うには程遠い。国際社会は連帯して圧力を加えるべき」だと強調した。
この安倍発言に対しては、同日ロシアで行われていた中ロ外相会談で取り上げられ、中国の王毅外相は、「問題解決にあまり前向きではない」「対話の足をひっぱらないように望む」とクギをさした。ロシアのラブロフ外相も、軍事的な圧力ではなく、政治的解決を目指すべきだと強調した上で、「日本を含むすべての当事国が、これ以外の解決はありえないことを認識してほしい」と指摘した。
韓国の文在寅新政権に対しては、特使の訪日がなされたが、今のところ様子見の段階だろう。
しかし、安倍首相としてはトランプと連携し国際的な対朝鮮圧力強化の旗を振ることで、対話重視の文在寅新政権に対しても強く牽制する意図を込めていることは明らかだ。
②危機煽りの大衆動員キャンペーン
こうして安倍政権が自ら率先して危機煽りの旗振りを行っている中で、新聞・雑誌はもとよりTVでもワイドショー番組を含めほぼ一日中と言ってよいほどこの問題が取り上げられてきた。
さらに今年3月、政府は秋田県男鹿市で朝鮮のミサイル着弾を想定した住民避難訓練を行っていたが、4月21日、都道府県の危機管理担当者を集めた説明会で、朝鮮の弾道ミサイルの着弾を想定した住民避難訓練を行うよう要請。国民には着弾情報が流れた場合の行動として、(1)頑丈な建物や地下街への避難、(2)適当な建物がない場合、物陰に隠れるか地面に伏せる、(3)屋内ではできるだけ窓から離れるか、窓のない部屋に移る-などを示した。
そして、4月29日には朝鮮の弾道ミサイル発射の報道を受け、東京メトロ(地下鉄)と東武鉄道、JR北陸新幹線などが一時運転を見合わせるなどの事態も起きている。
真っ先に標的となる在日米軍基地はそのままに(沖縄では辺野古新基地建設を強行し)、原発の再稼働を推し進め、「対話より圧力」などと唱える安倍政権に国民の安全のため平和な環境を築こうという意思は見られない。そこには安倍政権の邪(よこしま)な意図が存在している。この間にもTVの生中継等で韓国の人たちが全く普通の生活をしている姿が流され、韓国の人々から「日本の異常な動き」「安倍政権の作為」への強い懐疑の声が伝えられたが、そう感じるのは当然だろう。この滑稽ともいえる動きには日本国内でも多くの批判が挙がっている。
③進む「戦争国家」化政策
【改定日米ACSA、改定日豪ACSA、日英ACSA】こうした朝鮮半島の緊迫に乗じて、4月14日、参議院本会議で改定・日米(軍事)物品役務相互提供協定(ACSA)と改定・日豪ACSA、日英ACSA新規締結が与党などの賛成多数で可決・承認された。
これは、安保法制(戦争法)(2015.9.19強行可決)に基づく集団的自衛権行使を拡大するものであり、それまでは日本が直接攻撃を受けない限り、米軍への弾薬提供等は禁止されていたが、これにより自衛隊は米軍への弾薬提供、発進準備中の戦闘機への給油、水その他軍需物資の提供が可能となる。また米英豪3カ国と日本との間の軍事協力を体制面から一層強化し、自衛隊の世界展開に資するものとなる。協定実施後、海上自衛隊は欧州や米国へ向かう場合、これらの国々と作戦物資の調節を行うことができるようになり、また、NATO加盟国と武器基準を統一することで一層の軍事力強化の機会を得るなど、長期的には日本の自立的展開への野心も込められていると言えよう。
【「米艦防護」・日米合同訓練】これも集団的自衛権行使の拡大の一環として、カールビンソン空母機動部隊が日本海(東海)に展開し対朝鮮軍事圧力を強めている最中の5月1日から、海上自衛隊最大のヘリ搭載艦「いずも」(事実上ヘリ空母)を日本の太平洋側の千葉県房総沖から四国沖まで米軍の補給艦に対する初の「米艦防護」任務に就かせ、既成事実化を図った。戦争法の「(米軍その他の外国軍の)武器等防護」規定に基づくもので、外国軍の艦船・航空機・武器・弾薬などを防護するため自衛隊は武器使用も可能となった。万一、米軍が対朝鮮武力行使を行えば自衛隊も「米艦防護」のために自動的に参戦することになりかねない。
これに先立ち、朝鮮半島に向けて航行中のカールビンソンと自衛艦との合同軍事演習も実施されている。この間、B1、B2戦略爆撃機が朝鮮への威嚇のために飛来するや航空自衛隊機との合同訓練も行われてきた。また日韓「慰安婦」合意や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結などを受け、対潜水艦などの日米韓の三か国合同軍事演習も実施されるようになってきた。
こうした雰囲気を背景に、自民党国防部会が、巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有の早期検討の提言を行うなど、政府・自民党内で「敵基地攻撃」論も活発化し始めている。
【「共謀罪」法案を強行】「戦争のできる国」作りの上で「国民監視社会」作りも深く結びついている。近代刑法は犯罪の実行行為に対して処罰することが原則だが、同法案の本質は、犯罪が起こっていない段階で2人以上が犯罪を「計画」し「準備」したと、すなわち「犯罪を相談しているらしい」と捜査機関がみなせば捜査が開始され、処罰されるという現代版治安維持法というべきものである。5月18日には、国連人権理事会が任命した国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏からも、本法案がプライバシー権や表現の自由に対する過度の制限になると強く懸念する書簡が安倍首相に送られている。すでに衆議院では自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数で強行採決され、5月29日参議院で審議に入っており、当面の最大の焦点となっている。
(3)安倍首相「2020年施行めざし憲法9条の改定」を宣言
さらに安倍首相は、今年5月3日の憲法施行70周年の記念日に、改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、憲法9条第1項、第2項(注)はそのままに第3項を新設し自衛隊を明記する改憲案を自ら提起し、2020年には「改正憲法」を施行するよう呼び掛けた。
(注)日本国憲法第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
これまでの自民党改憲草案では、上記の9条第2項を修正し国防軍を明記することが謳われてきたが、今回の安倍提案はこれとも異なるものである。
この間、改憲に向けた議論や宣伝がさまざま行われ、世論調査でも9条を除く他項目で改憲賛成が増加してきたが、9条に関しては改憲反対が常に多数を占めてきた。だから、本丸である9条はとりあえず横に置き、9条以外の項目の改憲から手を付けようとする試みがなされてきた。
今回の安倍提案は、①朝鮮半島をめぐる緊迫した情勢を最大限利用し、②連立政権を組む公明党が9条改憲に慎重で、また改憲ではなく足りない部分を加える「加憲」を唱えてきたことからこれにすり寄ることで取り込みを図り、またあわよくば民進党内の右派をも取り込み、③2020年の東京五輪、天皇の譲位などの「祝賀ムード」も利用して、最長2021年まで(自民党規約改定で総裁任期を2期から3期まで延長。他方首相に任期の制限はない)の自分の任期内に9条改憲に手を付けようという正面突破の宣言である。
加えて、安倍首相がこの提案を今出してきた理由の一つには、「森友学園」「加計学園」問題という安倍夫妻自身が深く関わり、安倍政権を直撃している一大スキャンダルから国民の目をそらし、政権の求心力を維持・強化しようという思惑もある。
安倍首相は、自民党に年内の改憲案取りまとめを指示し党内の結束を呼びかけた。
ちなみに自衛隊の存在に限れば、世論調査でも「必要」とする意見が多数となるが、それは憲法9条の存在ゆえに本格的な戦争への参戦経験がなく、もっぱら災害救助活動などで「活躍」する姿が大きく投影した結果である。まして、憲法違反の戦争法と集団的自衛権行使にまで踏み込んでいる自衛隊の方に、憲法を合わせるなどということは本末転倒も甚だしい。
憲法9条を素直に読めばそもそも自衛隊は違憲の存在である。これを通常の軍隊ではない自衛権に基づく実力部隊だとして矛盾を糊塗し、その上で解釈改憲を積み重ねてきた。そして究極の解釈改憲が安保法制(戦争法)であり、「専守防衛」をかなぐり捨て、米軍が海外で行う戦争を自衛隊が支援するという役割に道を開いた。
しかし、これでも全面参戦は不可能であり、イギリス軍型をめざすには憲法に自衛隊(あるいは国軍)の存在を明記しなければならない。これが、彼らの9条改憲の真の狙いである。
過去の反省もなく侵略・植民地支配を正当化する歴史修正主義の台頭とも相まって、日本が再び軍事面でもアクターとして登場することは、東アジアの平和にとって新たな危険な要素を加えるものとして強く警鐘を鳴らす必要がある。
(4)朝鮮半島の平和と日本の「戦争国家」化阻止を
①朝鮮半島の平和のために
以上みてきたように安倍政権は、朝鮮に対して「対話ではなく圧力」の旗振り役を自ら買って出ている。トランプ米新政権の対朝鮮政策も、朝鮮側は「最大の圧力と関与」という「名前を変えただけの敵視政策」に過ぎず、「我々に対する全面的な制裁と圧迫騒動に力を入れている条件の下では、我々の核抑止力強化措置も最大の速度で進められるだろう」としている。
確かに、先制攻撃や朝鮮指導者への「斬首」作戦などを織り込んだ「作戦計画5015」に基づき史上最大規模の米韓合同軍事演習が行われ、同演習終了後もカールビンソン、ロナルドレーガンの2空母機動部隊が日本海(東海)に配備され、軍事的圧力をかけ続けている状況下では、対話の環境には程遠く、朝鮮側が反発するのも当然だろう。
朝鮮に対する軍事力行使がほとんど不可能であることは、94年の第一次核危機の際に当時のクリントン政権が寧辺(ヨンビョン)への限定空爆直前までいって、これが全面戦争に発展した場合、最初の90日で米兵52,000人、韓国軍490,000人が犠牲となるという自らのシミュレーション結果に驚愕して思いとどまらざるを得なかったことからも明らかだろう。南北の軍民を合わせれば数百万人の犠牲者がでるとまでされている。まして現在の朝鮮は、自ら「自衛措置」とする核と弾道ミサイルを高度化させており、米軍の最大の出撃・兵站拠点となっている在日米軍基地まで照準に入っているのである。
中ロ外相の言を待つまでもなく、「対話より圧力」などと言っている安倍首相の無責任ぶりは明らかだろう。
【米朝「相互停止」を】
結局、朝鮮半島問題の解決のためには対話以外の方法はない。そのための環境を整えるには、米国側は大規模軍事演習や軍事威嚇を停止し、朝鮮側も核・ミサイル開発を停止するという「相互停止」が必要である。この趣旨のことは、すでに朝鮮側も提案したことがある。中国・ロシアも強く反対しているTHAADの韓国配備も撤回されるべきだ。この点では、情報が限られていることを前提として言えば、朴槿恵前政権が独断で配備受入れを行ったことに対して、文在寅新政権が民意を後ろ盾に国会承認案件として切り返していることは一つの政治的知恵だろう。
【対話の実現、停戦協定から平和協定・平和体制構築への国際的包囲網を】
米朝間および多国間での対話はすでに経験済みのことである。しかし、現状では一触即発で対話さえままならない状況となっている。何故そのようになったか振り返る必要がある。
94年の第一次核危機は、カーター米元大統領の訪朝・金日成(キム・イルソン)主席との会談により一転して米朝ジュネーブ枠組み合意へと結実した。朝鮮の黒鉛減速炉の廃止とIAEAの保障措置協定の完全順守、米側と各国による軽水炉提供、エネルギー支援、米朝間の政治的・経済的関係の完全な正常化のための行動-などを規定した同枠組み合意のもとで、99年には前述のシミュレーションに基づき対話路線を定式化したウィリアム・ペリー対朝鮮政策調整官(クリントン政権1期目の国防長官)報告が出され、2000年10月にはマデレーン・オルブライト米国務長官のピョンヤン訪問、趙明禄(チョ・ミョンノク)朝鮮国防委員会第一副委員長のワシントン訪問が相互に行われ、クリントン大統領の訪朝でも合意していた。
この間の2000年6月に金大中(キム・デジュン)韓国大統領の訪朝、金正日(キム・ジョンイル)朝鮮国防委員会委員長との首脳会談が行われ、6・15南北共同宣言が出されたことも大きな作用を果たした。こうした一連の流れの中に、2002年9月の小泉純一郎日本首相の訪朝もあったといえる。
この対話路線を破たんに追い込んだ最大の原因が、ジョージ・W・ブッシュ政権の誕生とイラン・イラク・朝鮮を「悪の枢軸」と規定し、朝鮮に対する対話路線を破棄して再び敵視政策に転じたことにある。さらに2001年9・11同時多発テロへの「報復」を口実としたアフガニスタン軍事侵攻、それに続く「大量破壊兵器」疑惑でっち上げによるイラク進攻が朝鮮側を大きく身構えさせたことは容易に想像がつく。
2003年4月の米朝中三カ国会談の合意を経て、同年8月から六者協議が始まった。
2005年9・19「6者共同声明」は、平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化、朝鮮へのエネルギー・食糧支援、米朝正常化、日朝正常化、朝鮮半島における恒久的平和体制について協議を進める-ことなどが確認された。
しかし、その後も米韓合同演習は継続され、米国によるマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)の朝鮮関連口座の凍結問題で二転三転するなどの過程が続いた。
こうした過程で、2006年10月9日の朝鮮の最初の核実験が行われた。
これを踏まえ、2007年2月に開かれた第5回六者会合は、あらためて以下の合意がなされた。
1.朝鮮が60日以内に寧辺の核関連施設(再処理施設を含む)の停止(shut down)および封印(seal)を行い、IAEAによる監視を受け入れる。(初期段階措置)
2.朝鮮は放棄の対象となる核開発計画(使用済み燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む)の一覧表について、他の五者と協議する。
3.他の五か国は見返りの緊急エネルギー支援として重油5万トンを支援する。朝鮮が施設を無力化(disablement)することで、95万トンの重油に相当する規模を限度とする経済・エネルギー・人道支援を行う。
4.米国と朝鮮は国交正常化のための協議を始めると共に、米国は朝鮮のテロ支援国家指定の解除や対敵通商法の適用終了の作業を進める。
5.日本と朝鮮は国交正常化のための協議を始める。
6.「朝鮮半島の非核化(議長:中国)」「経済・エネルギー支援(議長:韓国)」「日朝関係正常化(議長:日本・朝鮮)」「米朝関係正常化(議長国:米国・朝鮮)」「北東アジアの安保協力(議長国:ロシア)」の5つの作業部会を設置する。
7.初期段階の措置が実施された後、六者による外相級閣僚会議を行う。
その後、米朝実務協議でBDAの凍結資金の返還が合意され、2007年3月19日の第6回六者会合で金桂冠(キム・ゲガン)外務次官からは、六者の信頼醸成が必要とし「言葉対言葉」「行動対行動」の原則が守られるなら、核施設の停止・封印とIAEAの査察を受け入れる用意があると表明されたが、翌20日、BDA凍結資金の返還が確認できないとして会合への出席を拒否、休会となって以降、六者協議は開かれていない。
その後、2009年4月5日に朝鮮は「銀河2号」ロケットを打ち上げた。これに対する国連安保理の議長声明に反発し、4月14日、朝鮮政府は核兵器開発の再開と六者会合からの離脱を表明するに至った。
これらを見てくると、これまでの対話が、朝鮮半島の非核化(とりわけ朝鮮の非核化)ありきで、朝鮮の体制保障や恒久的平和体制への転換問題は付随事項のように見受けられる。
今後の対話は、米朝二国間であれ六者であれ、朝鮮半島の平和体制構築・64年にも及ぶ停戦状態を平和協定に転換する問題を主としながら、その中で朝鮮半島の非核化も追求されるべきだと考える。朝鮮半島が「撃ち方やめ」に過ぎない停戦状態のまま放置され続けていること、絶えず軍事的圧迫にさらされていることが、朝鮮をして核・ミサイル開発に向かわせた。
朝鮮半島問題の解決はこうした歴史的・構造的問題解決に向かうことこそが前提であり、何よりも朝鮮半島非核化の早道でもあると考える。
米日韓軍事同盟の中で、韓国で新政権が誕生したこと、中ロも軍事行動に反対し対話を強調していること。とくに文在寅政権が、民間の南北交流を先行させながら、開城(ケソン)工業団地や金剛山観光再開、やがて本格的な南北対話をめざしていると聞き及んでいるが、どのような手順であれ南北対話が再開されることを支持する。そして、6・15南北共同宣言、10・4宣言が履行されていくことを心から望みたい。
そして、これらを基礎にトランプ政権に対して停戦協定から平和協定への転換・平和体制構築を迫る国際的包囲網構築の道へ、日本でも安倍政権の「戦争国家」化政策と闘いながら呼応していきたい。
②安倍政権の憲法9条改憲、「戦争国家」化政策と全面対決
安倍政権の危険な動きについては前述の通りである。
これに対して日本の平和勢力は、総がかり行動実行委員会を軸として、立憲野党(民進党・共産党・社民党・自由党)とも連携しつつ当面「共謀罪」法案の参議院での可決・成立阻止を焦点としながら、集団的自衛権行使の拡大に反対し、また沖縄現地の抵抗闘争と連携して辺野古への米軍新基地建設阻止の闘いを進めている。
5月3日の憲法施行70周年の改憲反対集会・デモには東京55,000人をはじめ全国各地で数千・数百人規模の行動が取り組まれている。
そして、いよいよ安倍首相が宣言した憲法9条改悪との全面的な闘いが始まる。
この闘いは、日本の民衆の進路にとってだけではなく、東アジアの平和にも大きくかかわる問題である。また安倍政権が朝鮮半島の緊張激化を煽り、それを利用して日本の「戦争国家」化を推し進めていることは、朝鮮半島の平和体制構築をめざす闘いといかに密接な関係にあるかを示している。
その安倍政権は、森友学園・加計学園問題という一大不正疑惑にまみれている。この徹底追求ともあわせ、改憲・「戦争国家」の道をひた走る安倍政権を退陣に追い込みたい。